第3437話 年末の報奨金は今年も出したい。(皆、仕事をするように。)
第八兵舎の食堂。
武雄達は朝食を終え、のんびりお茶をしていた。
精霊達も人間大になり、お茶を飲んでいる。
「所長はこれから会議ですね?」
「ええ、王家専属魔法師と一研とで会議をして、その後は・・・ジーナが予定表を見ているので付いていきます。」
武雄が言う。
「お任せください。」
ジーナが頷く。
「マイヤーさん達はどうするのですか?」
「とりあえず、昼までは王都守備隊の訓練に参加ですね。
午後は、今後の為の王城内の資料等の検索ですね。」
マイヤーが武雄に言う。
「?・・・今後?」
「正確には私達のやらなければいけない事である『武具の標準化』です。
過去の携帯武器の事とかわかる資料を探したり、現地調査として王都内の武具屋に行って聞き取りしたりですね。」
「なるほど、遅れに遅れている仕事に着手すると。」
「ええ、どうせ、研究所に戻れば、何かしら新しい仕事が入ってきますからね。
王都に居る時が一番、落ち着いて作業が出来ると考えての事です。」
「・・・まぁ、当面の目ぼしい仕事は空白地帯くらいですよ。」
武雄がにこやかに言う。
「それは、でっかい仕事ですね。
まぁ、去年に比べれば落ち着くとは思いますが・・・
それと、せっかくの王都出張ですから、現隊員との顔合わせを兼ねた交流で今年着任する新隊員達の性格を見ておきたいというのもあります。」
マイヤーが言う。
「所長に会わせる前に把握しておこうと。
書類上と面接では問題ないので、たぶん・・・平気ですが。
実際に体を動かしてみての性格把握も必要かと。」
アンダーセンが言う。
「その辺は任せます。
大人達はどうとでもなるでしょうが、子供達へ過度の負担がないように監視と仕事をしてください。」
「「はい。」」
マイヤーとアンダーセンが言う。
「うん、あ、ジーナ、明日時間があったら軍務局に行きたいです。」
「どうされましたか?」
ジーナが聞いてくる。
「試験小隊の慣例の戦争への出張とベイノンさんとブレアさんの魔王国出張の経費精算をしないと。
今、研究所からの立て替えなんです。」
「・・・ご主人様、立て替えているのですか?」
ジーナが呆れながら言ってくる。
「年末の報奨金に出張費用も加えて渡したので・・・私の貯蓄からでは賄えなかったのです。」
「はぁ・・・早急に軍務局に持っていきましょう。」
ジーナがため息をついていう。
ちなみに試験小隊の面々は「あ、だから今回多かったんだ」と思っていたりする。
「あ、そうだ。
ジーナ、パラス、ペイトー。
遅くなりましたが、年末の報奨金です。」
武雄が3人の前に革袋を置く。
「「え?」」
「私もですか?」
3人が驚く。
「ええ、ヴィクターと一緒に査定しましたよ。
さ、どうぞ。」
「「「はぁ・・・」」」
3人が受け取り、中を見る。
「・・・受け取って、すぐ見るのは止めて貰えませんか?
私の心の平穏が保てません。」
武雄が苦笑する。
「・・・ご主人様、ちょっと良いですか?」
ジーナが革袋の中を見ながら言う。
「はい、何ですか?」
「去年も思ったのですが、多いと思います。」
「なんで、うちの部下は多く入れると文句を言うのかな?」
武雄が苦笑する。
「それは、ご主人様が無理をしていそうだからですが?」
「無理はしていますよ?
私の人気取りの為ですから。
でも、実際、皆さん、頑張っているのは知っていますし。
私の我が儘で、あっちこっち連れ回すでしょう?
その辺の溜飲を下げておかないと、ご家族から恨まれそうでしょう?」
「んー・・・他所では、こういった報奨金を支給しているとは聞いたことないのですけど。」
ジーナが首を傾げる。
「所長、金額の多寡はともかく、報奨金が出るだけでもありがたいですから。」
マイヤーが言ってくる。
「そうは言っても・・・まぁ、今年は10名追加なのですよね。
まずは盾の販売をしたいなぁ。
それと剣の基準を作って、王都で発表したいなぁ。」
武雄がマイヤーに向かって言う。
「わかりました。
今年中になにかしら報告が出来るように予定を組みますし、研究室とも話し合って、物を用意させます。」
マイヤーが言う。
「はい、お願いしますね。」
武雄が頷く。
「ご主人様、10名増えるのは・・・大丈夫なのですか?」
「年末にどうなっているか、わからないですけどね。
今の所の私の予定では、何とかして年末の報奨金は用意しようかと。
金額については、なんとも言えませんけどね。」
武雄が言う。
「はぁ・・・エルヴィス伯爵領に戻ったら、その辺も確認します。」
ジーナが言う。
試験小隊の面々は「今年の年末も出るのかな?」と興味津々で聞いている。
「ま、年末を期待して、皆さんは仕事に精を出してください。
まずは大まかな予定を作って、熟す事ですよ。
マイヤーさん、アンダーセンさん、よろしく。」
「「はい。」」
マイヤーとアンダーセンが頷くのだった。




