第3435話 オルコットに相談しよう。(まずは外交局長に伝えてみるか。)
「・・・つまりは・・・山肌にあるであろう街道を破壊。使用不可能かつ復旧不可能な状態にする事で、採掘権・・つまりは坑道内の所有権を持つブリアーニ王国を通過させる事が目的である。
そして魔王国からドワーフ王国へ抜けるには、我が国と合わせて関を4つ通らないといけない状況を作り出し、奴隷の輸送を厳しく監視すると。」
オルコットが頷きながら要点を繰り返す。
「・・・これ、絶対、タケオが提案していると思うがな。」
アズパール王が呆れながら言う。
「でしょうね。
街道を潰すなんて言い出す貴族は、普通居ません。
むしろ、既存の街道をどう広げるかとか、どう繋げるかの検討をすると思っています。
はぁ・・・で、キタミザト殿の事です。
嬉々として話していたのではないですか?」
「そのとおりだ。
で、タケオの話だと。
エルヴィス家は、土地の所有権という名目上の領地拡大と、採掘権譲渡の見返りで鉱山採掘収入が少し。
キタミザト家は、ブリアーニ王国との貿易で、採掘された鉄をアズパール王国に仲介して手数料収入が少々。
アズパール王国は、新たな鋼材の輸入先の確保。
ブリアーニ王国は、採掘権の保有によって鉱山収入という新たな歳入を確保。
魔王国は、ブリアーニ王国へ鉱山の技術者や鉱夫の斡旋の収益と、鋼材精製などの関連事業による収益が発生。
関係者一同が利益が分配されている状態と言っていた。
たぶん、これはブリアーニ王国と魔王国にも同じ説明をして納得させたのだろう。」
「全てを独占するのではなく、皆で分配をということですね。
ふむ・・・皆で分かち合うから共同監視をして、厚みを持たせた方が利益になると説いた・・・という事にしますか。
決して、こちらには製鉄用大高炉のノウハウも鉱山の採掘技術も足りないので採掘権に固執する価値は低く、今から技術開発してもウィリプ連合国との戦争には間に合わないという事実は伏せないといけません。」
オルコットが考えながら言う。
「うん、そうだな。
エルヴィスはそのことを分かっていて、この提案をしたのだろう。
我としては、タケオとエルヴィスの交渉結果を追認する。
それと・・・オルコット、すまんが、ここ最近で国土を増やした貴族が居たか調べてくれ。
少なくとも、我が戴冠して以降は知らん。」
「私も知りません。
キタミザト殿とエルヴィス殿に褒美を?」
「タケオは辞退して、くれるなら小遣いでくれと言っていたか。
今回の領土拡大の功績はエルヴィスにと。」
「・・・すぐに確認します。」
オルコットが言う。
「うむ。
それと、外交局長を呼んでくれ。
タケオがやらかしてきた事を説明して、対処させる。」
「人事局長や軍務局長は呼ばないので?」
「残念だが・・・タケオの報告書を全員に見せるか、我はまだ判断出来ない。」
アズパール王が言う。
「ふむ・・・外交局長にとりあえずという事ですね?」
「あぁ、外交局長は知らないと拙いだろう。
色々とタケオが蒔いてきた物を使わないといけないからな。」
「わかりました。
では、まずは外交局長を呼び出します。」
オルコットが頷く。
「さぁ、我は朝食を取るとするか。
仕事はその後だ。」
「わかりました。
メイド達に伝えてきましょう。
では、失礼します。」
オルコットが執務室を出ていく。
「ふむ・・・ま、あとは外交局で上手く対処するしかないだろう。」
アズパール王は、タケオの報告書を机に置きながら言う。
「う、うん・・・夜通し読んだのは久しぶりだが、気分自体は悪くないか。」
アズパール王が席を立ち、背伸びをしながら呟く。
「まぁ・・・この内容は徹夜でないと読めない内容だったが・・・
さて・・・厄介事は外交局に任せるか。」
「失礼します。」
「うん、入れ。」
メイド達が朝食を持って入ってくる。
「朝食をお持ちしました。
夜通しだったようですね。」
「あぁ、タケオの報告書だからな。
召集された貴族達は大人しくしていたか?」
「えぇ、少なくとも今のところは・・・
今日はゴドウィン伯爵様とテンプル伯爵様が昼過ぎの到着予定です。」
「ふむ・・・貴族達のタケオへの接触は?」
「あるような・・・ないような?
とりあえず、こちらで対処済みです。
キタミザト様、エルヴィス様に接触させないように努めています。」
メイドが首を傾げて言う。
「強くは言ってきていないという事か。」
「はい、『出来れば』と言ってこられたので、『陛下との予定がある為、お会いできないでしょう』と断りを入れています。
今後は王城内の会議で詰まっているのでと断るつもりです。」
「うむ、それで良い。
タケオは今回の陞爵で召集しているが、王城内の各局との会議を優先させる。
他の貴族達とは、タケオが望まない限りは接触させるな。」
「はい、畏まりました。
あ、そうでした。
王都守備隊の第二情報分隊のラック隊長より、授与式後にキタミザト殿以下同期の貴族方が集まって飲むようで。
内々に調整して欲しいと総監局と軍務局、財政局に朝一で申し込まれております。
各貴族のご予定を調整してよろしいでしょうか?」
メイドが言う。
「ふむ・・・我も行きたいが。」
「それはオルコット宰相様のご許可を文書で頂かないと私どもでは判断出来ません。」
「・・・文書が必要になったのか?」
「はい、以前、陛下が城を抜け出してキタミザト様と飲み、オルコット宰相様が迎えに行きましたが、その教訓で。
私達は直接陛下にご協力出来ないようになりました。
あしからず。」
「・・・タケオ達の同期飲みは楽しそうだなぁ。」
「報告を楽しみに待たれてください。」
メイドが言うのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




