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第3434話 437日目 陛下は寝ずに報告書を読んでいたようです。(オルコットに概要を説明しよう。)

朝のアズパール王の執務室。


「失礼します。」

オルコットが入ってくる。

「うん?オルコット?

 もう、そんな時間か?」

アズパール王が報告書から顔を上げ、懐中時計を確認しながらオルコットに言う。

「陛下、おはようございます。

 その様子ですと、キタミザト殿との会談後に寝ておられないのですか?」

「あぁ、タケオ達との話が終わったのは4時くらいだったんだが、その後、魔王国の出張の報告を読みだしてな。

 気が付いたら今だ。」

アズパール王が武雄が持ってきた報告書を持ち上げて言う。

「・・・寝るタイミングを逃してしまったのですね。」

「あぁ、そうなるな。

 オルコットは、昨日は孫と夕食だったか?

 楽しんだか?」

「ええ、楽しく過ごさせてもらいました。

 で、キタミザト殿の報告は何と?」

「そうだなぁ・・・何というか・・・やりすぎだ。」

「いつも通りですね。」

オルコットが頷く。

「これだけの事をすれば、あの金額の謝礼も納得だ。」

「いくら出たと?」

「金貨8500枚だそうだ。」

「それは・・・余程大きな成果を出されたようですね。」

「侵攻先の町相手に投降させる方法の助言、占領政策に非協力的な住民を排除する為に移動させる方法の助言、奴隷として拉致されている同胞救出の作戦補助、ウィリプ連合国からの諜報員への尋問に協力等、まぁ楽しんで来たみたいだ。」

アズパール王が言う。

「観戦武官として出張すると聞いていましたが、まぁ、その、色々と楽しまれて来た訳ですね。

 それにしても、ウィリプ連合国から諜報員が潜入していたのですか?」

「みたいだな、少々厄介な事になったようだ。

 その辺、詳しく書いてないが・・・以前、我が城の宝物庫に入ろうとした賊が居たろ?」

「居ましたね。」

「あの時の賊が、その諜報員だったそうだ。

 何処にでも徘徊しているな。」

「相手からしたら、何処に行ってもキタミザト殿に出くわすのでしょう。」

「確かにな。

 そいつが黙秘していたのを、ウィリプ連合国の人間だとタケオが素性をバラしたらしい。」

「ほぉ。」

「そこで、タケオは諜報員に欺瞞情報を持たせて解放させたようだな。」

「相変わらず、キタミザト殿は一級の外交官ですね。」

「魔王国としては、タケオのおかげで素性が明らかになった事と、元々デムーロ国への潜入だったので魔王国に直接の被害が無かったという事で、身包みを剥いで国外追放にしたそうだ。

 ついでに、先般の王城侵入の罪で手配されているからアズパール王国に入るなと、タケオが忠告したそうだ。

 タケオとしては、『帰国のルートはドワーフ王国を走り抜けたんじゃないか?』と書いてあるが、まぁ、魔王国の追手付きの走り通しだったろう。」

「その者は毎回走り通しで帰国しているのですね。」

「ドワーフ王国、カトランダ帝国でウィリプ連合国か。

 で、このルートを潰すとさ。」

アズパール王が呆れながら言う。

「はい?」

オルコットが首を傾げる。

「後ろに魔王国が控えているブリアーニ王国が、我が国東北部にある空白地帯を自国に併合するという話をエルヴィスとタケオに持ってきたそうだ。

 タケオが魔王国から戻って、すぐだろうな。

 たぶん、戦争中タケオに同行していた者・・・おそらくは幹部だろう者が持ってきた話しだろう。」

「・・・なるほど、領地異動にかこつけて・・・いえ、良い名目ですね。

 ブリアーニ王国が主体ならば、異動したてで地域の慣例はわからないですから。

 空白地帯で悪さをされる前に併合してしまおう、という話になったのでしょう。」

オルコットが頷く。

「あぁ、そうだな。

 そこで、観戦武官として先日まで戦場で顔を合わせていたタケオと、国境を挟んで隣接する領主のエルヴィスに断りを入れてきたようだな。

 少なくとも魔王国は我が国とは事を構える気はないと。」

「ふむ、慣例の戦争におけるキタミザト殿やエルヴィス殿方の成果でもありますね。

 良い抑止になっているようで。」

「うん、それでだ。

 タケオとエルヴィスは知恵を絞って対案を提示した。その案を、ブリアーニ王国と魔王国が承諾した。」

「・・・ふむ・・・続きが気になると同時に怖いですね。

 陛下、続きを。」

「空白地帯を我が国が領有し、当該エリアにある鉱山の採掘権をブリアーニ王国に譲渡する。

 また、エルヴィス伯爵領に税収という形で採掘量の1割分を納める事。

 代わりにブリアーニ王国から鋼材を輸入する際は1割増しの価格で買う事。

 この条件で双方納得した。」

アズパール王が言う。

「ふむ・・・鉱山の採掘権をですか・・・少々もったいないとは思いますが・・・

 いや、元々は併合をすると言っているのでしたね。

 ここで欲を出せば、全てが手に入らなくなる可能性もありますか。

 土地の所有権と、少しの収入で良しとしないといけないでしょうね。

 それに、ブリアーニ王国から鋼材の輸入が出来るというのは良い情報ですね。」

「うん、タケオとエルヴィスはブリアーニ王国と魔王国の本音を知っているから、ここまで要求を飲ませたのだろう。」

「本音ですか?」

「あぁ、ブリアーニ王国と魔王国は、奴隷として拉致された自国民を保護する為、空白地帯を併合して越境の監視を強化したいと考えているとの事だ。

 その為の輸送経路を潰す為にというのが最大の目的で、次に鉱山の採掘で、最後に土地となり、土地の所有権はあまり重要視していないようだというのがタケオとエルヴィスの見立てで、それを踏まえた提案が当たった事でのこの成果だ。」

「ふむ・・・なるほど。

 ですが、どうやって奴隷商の越境を監視するのでしょう?

 エルヴィス家が国境を封鎖するのですか?」

オルコットが聞く。

「そう思うよな?

 で、タケオの考えを聞いてくれ。」

アズパール王が説明を始めるのだった。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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キタミザト家食客ドラゴン雑技団+αによる演舞 「グルゥ」「きゅ」「ぎゅー」…「グルッ」 んん?リツもき…おおぅ なんかブラックドラゴンも来て…グローリアさんまで? とかなりそう …あー…そういえばグロ…
> 「そう思うよな? >  で、タケオの考えを聞いてくれ。」 > アズパール王が説明を始めるのだった。   目に思い浮かぶ様は、    徹夜で眠いはずなのに、嬉々として、元気イッパイに    説明を…
さすがは一国のトップ、説明するための説得力あるストーリー作りが上手だなあ。
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