第3430話 アズパール王との会談9。(一研のアルダーソンを使いたい。)
「カトランダ帝国との慣例の戦争はニールに総指揮官を任せるが、タケオが王都に居る間に、ニールとアルダーソンと話し合ってくれんか?」
アズパール王が言う。
「どうせ、予定されている会議のどれかが、その話し合いなんでしょう?」
「まぁ・・・タケオに参加して貰う会議を、幾つか予定しているがな。
出来れば・・・次の慣例の戦争で、アルダーソンにはタケオの様な役回りで作戦を立案し、比肩する戦果を上げて欲しい。」
「それは、アルダーソン殿の作戦参謀としての能力と、周囲の領地持ち貴族との関係性次第ではないですか?
私は、テンプルさんもゴドウィンさんも事前に顔合わせをして、雑談等を通じて互いの為人を知っていたから、全く話が通じない状況ではありませんでした。
義祖父のエルヴィスさんが一緒に居たのも大きかったでしょうね。
ですが、アルダーソン殿だと・・・うーん・・・むしろニール殿下がどう立ち回るかによって、アルダーソン殿の発言が周囲の賛同を得られるか変わるのではないでしょうか?
・・・出来れば、古参の領主の誰かがアルダーソン殿の味方になってくれれば、話が進めやすいかもしれませんが。」
武雄が言う。
「ふむ、アルダーソンの発言を援護する存在か。
ニールは・・・総指揮官だから露骨に味方は出来ないか。」
「そうでなくても、カトランダ帝国側の貴族達は初めてニール殿下の指揮下に入るんですよね?
自分達の治める地方の戦争で、自分達の意見が通らなければ、不満を募らせるのではないでしょうか?」
「不満感か・・・タケオならどうする?」
アズパール王が聞く。
「そうですね・・・私がニール殿下の立場なら、わかり易くカトランダ帝国側貴族の意見を幾つか採用します。」
「ふむ・・・わかり易く・・・幾つか・・・とな。
重要な件を避け、小さな部分で彼らの意見を汲む姿勢を見せておけば、軽んじられたとの不満を抑制出来るという事か。」
「もちろん、現地に着く前にウィリプ連合国側で今までニール殿下の指揮下にいた貴族達に言い含めておかないといけないでしょうけど。」
「ふむ・・・根回しか。
『全体を統率する為に、カトランダ帝国側の貴族を意図的に重用するが誤解するな』と言い含めて、気心のしれたウィリプ連合国側の貴族達に対しても不満を持たせぬ配慮が必要か。」
「そのぐらいの事までしないと・・・たとえ相手が殿下であってもカトランダ帝国側の貴族達は『何もこの地を知らないくせに』と侮り、言葉が荒くなるでしょうね。」
武雄が言う。
「ふむ・・・そうか・・・わかった。
アルダーソンの方は?」
「もっと過酷ではないですか?
アルダーソン殿は、ウィリプ連合国側の領地出身でしたよね?」
「あぁ、そうだ。」
「本来なら、主家が援護するという雰囲気なのでしょうが・・・。
ふむ・・・アシュトン子爵は、今回代替わりは?」
「いや、そう言った話は来ていない。
現当主が来るだろうな。
アルダーソンに挨拶させるか?」
「・・・いえ、接触させないでください。
アシュトン子爵への根回しは、クリフ殿下が妥当と考えます。」
「うん?クリフか?」
「アシュトン子爵は義父にあたるのですから、クリフ殿下が会うのは不自然ではありませんよ。
事前に、クリフ殿下がアシュトン子爵に会い『こういう話が上層部で出たらしい』という噂話の体裁で、己の利害は別にしてアルダーソン殿の戦術に理があるのなら賛同するように依頼してください。
作戦を実施するか否かはなく。
単純に、戦術的な良し悪しの評価をさせてください。」
「・・・?・・・タケオ、それは一緒じゃないのか?」
「戦術の良し悪しと、実施の可否は別物ですよ。」
武雄が苦笑しながら言う。
「ふむ・・・実施の可否ではないというのは良いのか?
というより、タケオはアシュトンと面識が有ったか?」
アズパール王が聞いてくる。
「ええ、去年のカトランダ帝国から戻ってきた際に、アリスへの舐めた評価を聞かされたのですけどね?
私、その時、婚約中だったんですよね。
本人ではなく、クリフ殿下が後で私に謝りに来ましたよ。
それと、アシュトン子爵の息子に『この成り上がり者め』という目で睨みつけられました。
あ、今回の陞爵で私の方が爵位が上になったから、同じ目で睨みつけてきたら、こっちから何かして良いのですかね?」
「・・・」
武雄の恨み節にジーナは何も言わないが、ちょっと眉間に皺がよっている。
「あー・・・止めてくれるかな?
奴がそんな目を向けてきたら、我らが対処する。
穏便に!穏便に!してくれ!
タケオの言いたい事も後で聞いてやるから!な?」
アズパール王が、少し冷や汗を流しながら言う。
「ふむ、まぁ、今回の王城での滞在中の件は留意します。
と、アシュトン子爵の娘はクリフ殿下の側室ですので、あのアシュトン子爵でもそれなりにいう事を聞くでしょう。」
「・・・タケオのアシュトンへの態度が辛辣・・・」
アズパール王が若干項垂れる。
「まぁ、私の去年の印象ですが、アシュトン子爵は腹芸なんて出来ないでしょう?
なので、『利害を考えずにアルダーソン殿の戦術が良いと思うなら頷け』という依頼だけなら遂行出来るでしょう。
実施する、しないは別にしてと言えば、武門の家系なのでしょう?
そこの評価は出来るでしょう。」
武雄が言う。
「ふむ・・・確かにそうだが。
アルダーソンが、納得させられるだけの戦術が起案出来るかだな。」
「そこは本人の資質と努力と経験でしょう。」
武雄が言うのだった。
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