第3428話 アズパール王との会談7。(カトランダ帝国との慣例の話をしよう。)
「私の方からは、今の所、ここまでですかね。」
武雄が言う。
「ふむ・・・ジーナ、今、何時だ?」
「夜中の2時です。
一度、お茶を淹れ直しましょう。
ポットの水を捨ててきますので、ご主人様、お湯をください。」
「はい、わかりました。」
武雄が頷く。
ジーナが一旦、退出する。
「タケオも色々と頑張ってくれたな。
改めて、ご苦労だった。」
「魔王国への出張から戻った後の方が、検討と決断が多かった様に感じます。
まぁ、エルヴィスさんと一緒に対処し、時間があるものは陛下に報告と相談をして、取れる手段を取ったら割と良い結果を得られました。」
「まぁ、そうだな。
それと、タケオがの魔王国出張中にやり取りした、ウィリプ連合国へ王都守備隊員を潜入させる件は有効に機能し始めている。
タケオ達には及ばないが、今までより早く情報が入って来る様になった。
最近、デムーロ国の奴隷価格が高騰しているそうだが・・・何とも言えんな・・・。」
「魔王国としては、デムーロ国に侵攻して港を押さえる事で、海路の奴隷の輸出に大きな打撃を与えたら、ウィリプ連合国の奴隷価格が高騰した。
その影響で、魔王国諜報部隊が奴隷として潜入させた諜報員の身柄をウィリプ連合国で買い戻すという人員補充の潜入方法が破綻した。
そこで、魔王国諜報部隊は奴隷以外で怪しまれず潜入出来る身分として冒険者を検討した。
冒険者を装って潜入するなら、陸路でアズパール王国を経由した方が低コストで低リスクだと考えた。
アズパール王国の貴族には顔見知りも出来たし、相談してみよう。
なんと、エルヴィス伯爵が領内の通過を快諾してくれた。
よし、ウィリプ連合国への潜入はこのルートを使おう。
ブリアーニ王国から空白地帯の相談が来た、潰すか。
仲良くしておきたいから、一応、エルヴィス伯爵とキタミザト子爵には事前に話を通しておこう。
えっ、エルヴィス伯爵に話したら、逆に提案をされた。
予定変更、こちらにも良い面があるので提案を了承しよう。
よし、ドワーフ王国には、2月1日付でアズパール王国とブリアーニ王国から同時通告しておいてくれ。
という流れで、今ここです。」
武雄が言う。
「そんな簡単な話であれば嬉しいのだがな。
実際は、魔王国でも会議が紛糾したんではないのか?」
アズパール王が首を傾げる。
「まぁ、今回の空白地帯の件だけは、そう思っておいても良いのでは?
そのぐらい気軽に決まった案件だと思っておけば、気が楽ですよ。
実際に空白地帯の共同管理となれば、面倒な実務にはエルヴィスさんがあたりますから。
新たな関の建設と、常駐の警備兵ですね。」
「ドワーフ王国と空白地帯は雪山だったな。
やるとすれば、半年交代での常駐だろうな・・・上手く対応してくれとしか言えんな。」
アズパール王が言う。
「戻りました。
ご主人様、熱めのお湯をお願いします。」
ジーナが入って来て、武雄にお願いしてくる。
「はいはい。
こっちに持ってきてくださいね。」
武雄がそう言い、ジーナからポットを受け取ると中にお湯を入れて返す。
「ありがとうございます。」
ジーナが言う。
「タケオ、魔王国ではタコ以外にも珍しい食材は手に入ったのか?」
アズパール王が聞いてくる。
「ええ、その為に行ってきたようなものですから。」
「いや、観戦が目的だぞ?」
「大国の戦争を見せられても・・・凄いなぁ程度の感想しかないですよ。
兵士の数も質も違うのです。
ま、詳しい事は同行した元王都守備隊の部下からの報告を見てください。
私は好き勝手やっていましたが、軍務的な物は私の所感よりも的確な記述でまとめている筈です。」
武雄が言う。
「まぁ、タケオはタケオで色々思う所があったのだろう。
報告書を読ませてもらおう。」
「ええ、そうしてください。
基本、私は本部テントで見聞きしてただけで、大した事していませんから。」
「それであの金額の謝礼金が出るわけないがな。」
「偶々意見を求められて答えたら、偶々向こうでの評価が良かっただけですよ。」
呆れて言うアズパール王に武雄は苦笑して答える。
「陛下、ご主人様、何を話されていたのですか?」
新しく淹れたお茶を給仕しながら、ジーナが質問する。
「魔王国側の最新動向と折衝の経過について、概略を話していただけですよ。
あとで教えます。」
「はい、お願いします。」
ジーナが頷く。
「ま、タケオの方からの報告は、これで終わりという事だから、こっちの話だな。
カトランダ帝国に毛布を依頼した際に、両国間で慣例の戦争を行いたい旨の提案をして、了承されている。
ちなみに、我が方の理想としては手痛い引分け、最悪でも惜敗が望みだ。」
アズパール王が言う。
「・・・何とも、危うい事を。」
武雄が呆れながら言う。
「危ういのは承知している。
だが、今のまま何の対策もせずにウィリプ連合国と事を構える訳にはいかんのだ。
本番前の準備としてカトランダ帝国と慣例の戦争を行った場合の被害よりも、何もしないままウィリプ連合国と戦争に突入する方が被害は甚大になるだろう?」
アズパール王が言う。
「ふむ・・・西側貴族は、戦争に慣れていないんでしたね。」
「あぁ、魔王国側の貴族は、不定期に慣例の戦争をしているせいで兵達も戦闘慣れしている。
だから、先の戦争でも迅速かつ的確に動けただろう?
タケオ、3伯爵の軍が国家としての普通と思ってはいかんぞ。先の訓練で王都の壁が見せた練度は酷いものだった。おそらく、西側貴族も大差ないじゃろう。」
アズパール王が言う。
「陛下がそれを言ってはいけないと思いますが?」
「言いたくなる状況だと理解してくれ。
西側は・・・動きが割と遅い。
慣例の戦争をしても戦闘をしているようには・・・どうも危機意識がなぁというのが報告書を読んでの我の感想だ。
なので、ここで一度、刺激を与えねばとな。
今の情勢ならば、西側の貴族達も我こそはとやる気を出すだろう。」
アズパール王が言う。
「ふむ・・・私達、結果を出し過ぎてしまいましたかね?」
武雄が考えながら言うのだった。
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