第3427話 アズパール王との会談6。(寄木細工をお土産で持ってきました。)
「よし、空白地帯の事は、そのまま進めてくれ。
各局と貴族会議の方は、先に言った通りの手法で追認させる。
ドワーフ王国には、国境が曖昧であった彼の地を2月1日付で我が国の領土としてエルヴィス伯爵家に帰属させる事と、ブリアーニ王国に鉱山の採掘権を譲渡する事を通告する。」
アズパール王が言う。
「ありがとうございます。
明日以降、専売局と打ち合わせがあった際に、ブリアーニ王国からの鋼材の希望輸入量を聞きたいと思います。
その量を基にブリアーニ王国と折衝します。」
「うん、そうだな。
ここに来て、鋼材の輸入先を増やせるのはありがたい事でもある。
メリットを強調して皆の承認を取り付けるが・・・外交局と専売局、財政局にはこの事を、明日の朝一で通達しておく。」
「わかりました。
それと、以前から調整をしてきましたが、廃棄する剣等の鉄製製品も魔王国から輸出して頂ける事になりました。これを鋳潰して再資源化する方向でそちらも対応していきます。」
「うん、頼む。
報告は・・・、これで終わりか?」
「陛下には、このぐらいですかね。
あとの細かい話は各局長達に報告します。」
「そうしてくれ、存分にこき使ってくれて構わんぞ。」
アズパール王が言う。
ジーナは「でも、詳細な報告と決裁は、最終的に陛下に回って来るのですから先延ばしになっただけでは?」と思っていたりする。
「ちなみに・・・なんですが、エルヴィスさんは条件付きとは言え、アズパール王国の領土を増やしましたよね?
これは、立派な功績ですよね?」
武雄が言う。
「うん?・・・少なくとも我が戴冠して以降、領土を拡大させた者はおらんから、初めてだな。
明日、もう少し過去に遡って調べておくが・・・そうだな、領土を増やした功績に報いなければならんな。
タケオは何が欲しい? 侯爵の上に『大』でも付けるか?
それとも、美味い物を食べ放題とか?」
アズパール王がニヤ付きながら問いかける。
「私は、今回の陞爵ですら付随する義務や責任で過食気味です。胃を労る為、これ以上の爵位はご遠慮します。
なので、領土拡大の恩賞は、全部エルヴィスさんに渡してください。
1人留守番をしていて、つまらないでしょうしね。」
武雄が苦笑しながら言う。
「ふむ・・・エルヴィスへの恩賞は、あらためて考えよう。
タケオはいらないんだな?」
「爵位は要りません。くれるのなら金貨でお願いします。
やりたい事が多くてお金が足りません。あればあっただけ助かりますから。」
「・・・考えておこう。」
アズパール王が頷く。
「あ、忘れてたっ!
陛下にお土産を持ってきていたんです。」
武雄がアズパール王に言う。
「もう報告はいらんぞー。」
アズパール王がぶっきら棒に言う。
「ご主人様、私も報告は食傷気味でして・・・食休みを頂きたいのですが・・・」
ジーナが弱々しく言う。
「本当にお土産ですよ。
はい、これ。」
武雄はリュックから取り出すと、ハワース商会の寄木細工が施された小物入れを机の上に置いた。
「うん?・・・小箱か?」
「柄が・・・」
アズパール王とジーナがマジマジと見る。
「この柄を寄木細工と言います。」
「ほぉ、独特だな。他所で見た事が無い柄だ。」
アズパール王が小箱を手に取って言う。
「このような柄を施した小物入れや家具を、エルヴィス伯爵領の土産物や特産品として売り出そうかと考えています。」
「ほぉ・・・ほぉ?んー・・・これが土産物か。」
アズパール王が、手にしていた寄木細工の小物入れをジーナに渡す。
「失礼します・・・これは細かい木を組んでいるというわけではないのですよね?」
ジーナが箱の外側や内側を見ながら言う。
「ええ、発案は私ですが、製作を主導しているのはハワース商会です。」
「ハワース商会・・・以前、エルヴィス領で酒を飲んだ面子の中に居なかったよな?」
「陛下がエルヴィス領にいらしたのは、私の初陣の時でしたか。
あの酒席に居たのは、ラルフさんとテイラーさん、ベッドフォードさんにローさんですね。
ハワース商会は、将棋やリバーシ、黒板や鉛筆も作っていますね。
本業は家具工房です。」
「ほぉ、なるほど。
だから、この意匠を家具にか。
描くのが大変そうだ。」
「ご主人様、この意匠は手描きなのですか?とても難しそうですが。」
アズパール王とジーナが言う。
「・・・ふむ、なるほど、そう見えるんですね。
まぁ、製作方法は秘密ですが、
これから、徐々に売り出していきます。」
「その言い方だと、描くわけではないのだな。
製作方法の想像がつかないが・・・この意匠がエルヴィス伯爵領のみでの販売なら、エルヴィス領を訪れた者が買うかもしれないな。」
アズパール王が頷く。
「これをクリフ殿下、ニール殿下、ウィリアム殿下、オルコット宰相、専売局長や財政局長等にも配ろうかと思っています。
お土産を最初に貰った陛下には、宣伝のお手伝いをお願いします。」
武雄が言う。
「宣伝とな・・・作り方が秘密では何も説明出来んぞ。」
「陛下が使ってくれるだけで良いんですよ。
品物の素性を聞かれたら『エルヴィス伯爵領の土産で貰った』と答えてくれるだけで構いません。」
武雄が言う。
「ふむ、わかった。
聞かれたら、その様に答えよう。」
「ええ、それで十分です。」
アズパール王の言葉に武雄が頷く。
「ふむ。」
ジーナが「エルヴィス伯爵領に戻ったら、エイミー殿下達に贈ろうかな?」と思っていたりするのだった。
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