第3410話 ジーナは確認中。(悪巧みかどうかは話している段階では、何にも出来ません。)
王都守備隊 第八兵舎内。
「えーっと、ご主人様とエリカ様のご滞在の用意は出来た。
ベッドの確認とシーツ等の仕上げはした。
お茶の用意も出来ている。
全ての引出しや開き扉は開けっ放しにした。」
ジーナが武雄とエリカに用意された部屋内を確認しながら呟く。
「失礼する。
ジーナ殿、どうですかな?」
王都守備隊総長が入ってきてジーナに声をかける。
「総長殿、この度はご面倒を引き受けて頂きありがとうございます。」
ジーナが礼をする。
「いえいえ、構いませんよ。
で、どうでしょうかね?この部屋は。」
「兵舎内にこういった貴賓室があるのですね。」
「王城内の貴賓室のような装飾はしておりませんがね。
高位の方をお泊め出来る部屋は用意しています。
これは第1騎士団も第2騎士団の兵舎でもです。」
「そうなのですね。
壁は?」
「大丈夫です、音はほぼ漏れない仕様になっています。
今日の夜からは兵舎内の巡回はしますが、この部屋周辺の部屋だと、隣はジーナ殿の部屋。
この部屋を挟んで反対側は物置になっています。
マイヤー達の部屋は、さらにその隣や対面にしています。
1部屋や廊下を置くことでジーナ殿以外の部下達には声が届かないでしょう。」
「ふむ・・・なるほど。」
ジーナが頷く。
「そもそもキタミザト殿にエリカ殿、ジーナ殿は精霊魔法師ですからね。
周辺の部屋は試験小隊、入口側は王都守備隊員の部屋・・・余程の事がない限り、抜かれないと思います。
巡回もすると言っておきながら、今も巡回についての議論は幹部達にさせて、常に経路や時間帯を変更していきます。」
「硬直化させないというのは流石ですね。
隊員方の負担も大きいでしょうに、ありがとうございます。」
「なーに、陛下の外出先での宿舎やご来賓の高位の方の宿舎警備の良い訓練です。」
総長が笑いながら言う。
「ありがとうございます。」
「それでジーナ殿、過不足はありませんかね?」
「シーツや小棚、引き出し等開けれるものは全部開き、中が空であると分かるようにしておきました。
ご主人様が来たら確認して元の位置に戻します。」
「流石の防犯意識ですね。」
総長がうんうんと頷く。
「いえ、『我々を信用していないのか』と怒られるかと思ったのですが・・・」
「・・・まぁ、意図はわかりますからね。
1人で用意をするのならそれが一番わかりやすいでしょう。
先ほどの陛下等の最高位の方を入れる場合は、数日前から常に室内に隊員を配備し、2重の監視をして侵入者を排除するでしょうね。
今回、私達は部屋の貸し出しと兵舎内外の巡回を請け負いましたので、その部分では協力はしますが、室内警護はキタミザト家が受け持つ事となっています。
まぁ、キタミザト殿があれですから、室内の会話は我々も聞かない方が良いでしょうしね。」
「いえ、お部屋と巡回をお受け頂きありがたく。
室内については我々自身で警護いたします。」
ジーナが頷く。
「はい、わかりました。」
総長も頷く。
「総長殿、王城内はどんな事になっておりますか?」
ジーナが聞く。
「まぁ・・・陛下への挨拶や到着した貴族方同士の交流等をしているようですね。」
「・・・まぁ、陛下にご挨拶は当然ですが、貴族方でお茶会ですか。
東側以外の貴族方にあまり良い印象はないのですが・・・
その、大丈夫なのでしょうか。」
ジーナが微妙な顔をさせて言う。
「キタミザト殿やアリス殿、陛下の話を聞くとあまり良い印象はないでしょうね。」
「はい、特に陛下が西側を高く評価していないように思います。」
「まぁ、陛下は全体の報告を聞いていますからね。
経済的な発展で数年に渡って良い方向に行くと予想しているエルヴィス家は陛下に取っては気分の良い話ですが、西側は発展している話はなく、前年並みがずっと続いていますので興味が薄くなってしまうのでしょう。」
「・・・薄いのですか。」
「浮き沈みがない地方の経済には共感が持てないのではないでしょうか。
まぁ、陛下のお気持ちは実際にはわかりませんが。」
「・・・ふむ、総長の言われることも納得はします。
ですが、その興味が薄い方々がお茶会をしているというのは・・・その、何か企てているのではないでしょうか?」
「・・・悪巧みですか・・・企み自体は人が集まればされるのは仕方ない事でもあります。
そこに国家の利益になるか、ならないかの違いがありますね。
今回の人達が国家の為になる良い企みをしているかもしれません。
なので、しているというだけで規制は出来ないでしょう。」
総長が言う。
「そうですね。
・・・ご主人様に害が及ばなければ良いのですが・・・警戒はしないといけないでしょうね。」
「・・・警戒をするに越したことはないのは確かでしょう。」
ジーナの言葉に総長が頷くのだった。
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