第3409話 武雄は宿に戻って要旨の確認をしています。(マイヤーとアンダーセンの雑談。)
エルヴィス伯爵領側の王都の壁の街の宿。
武雄達は合同庁舎を後にし、夕食の食材を買って、部屋に戻ってきていた。
夕食の軽い下処理をし終えた武雄は借りた最終防衛拠点構築計画を読み、マイヤーとアンダーセンは話をしていた。
「それは支部長殿は、怖かったでしょうね。」
アンダーセンがマイヤーから合同庁舎の話を聞いて感想を言う。
「訓練を実施した理由は王都の壁の動きの確認だからな。
それも陛下発案という面倒さがある、なので王城からの指示も支部長の行動も何か責任を問われる事はない。
だが、前線に出ていたエルヴィス伯爵殿やゴドウィン伯爵殿、テンプル伯爵殿には、この内容を聞かせられないだろう。
・・・所長の言は、現場に居た者からの苦情だな。」
マイヤーが言う。
「そうでしょうね。
特に、テンプル伯爵軍には戦死者が出ていますから・・・今の話は聞かせられませんね。」
アンダーセンが言う。
「あぁ、更に・・・今回の戦争で最大討伐数を誇るのが、第二研究所なんだよなぁ。
だからこそ、所長の言葉は相当重いと感じるだろうな。」
マイヤーが呆れながら言う。
「オーガだけなら1回目で第二研究所は15体、テンプル伯爵・ゴドウィン伯爵が10体。
2回目は第二研究所とエルヴィス伯爵が37体、テンプル伯爵・ゴドウィン伯爵が28体。
・・・第二研究所は実際は37体の内30体くらい倒していますがね。」
「集められた90体の内、半数の45体を・・・だからなぁ。
所長の報告上では第二研究所は30体か。」
「それでも1/3は倒しましたか。
10名弱で。」
「あー・・・王都守備隊総長が何と言うか・・・」
「笑顔で出迎えてくれますよ。
内心、焦っているでしょうが。」
マイヤーの言葉にアンダーセンが言う。
「だよなぁ。
王国最上位部隊だからなぁ。
・・・もしかしたら一つの戦闘としては、初代総長の記録に迫る戦果だと思うんだが・・・」
マイヤーが言う。
「あー・・・総長を労わらないといけないですかね。」
アンダーセンが言う。
「・・・んー・・それが本当ならアリスかスミス坊ちゃんに指揮をさせておけば良かったですね。」
武雄が最終防衛拠点構築計画から顔を上げて2人に言う。
「子孫だから出来たと?」
「ええ、王都の皆さんにそう思わせておけば、エルヴィス家は安泰度が増すかなぁと。
今は実施した者達にも意識は行きますが、数年、十数年経てば、指揮官のみの業績として語られるのが常ですよ。」
武雄が言う。
「それはそうですね。
実際に過去の戦闘報告とか読んでも指揮官等の動きを追ってしまいますから。」
マイヤーが言う。
「ま、実際に1人でなんでもかんでも出来る人は、ほとんどいないですよ。
どんな事でも誰かが補佐してくれて、部下が動いてくれないと出来ない物です。
上に立つ者は、その事を忘れてはならないと思います。
私は、感謝を示す為に報奨金を出しているようなものです。」
「「ありがとうございます。」」
マイヤーとアンダーセンが軽く頭を下げる。
「皆さん頑張っているからね。
昨年末は払い終えました。
来年も同水準で皆さんに報奨金を出してあげたいというのは私の本音です。」
「ありがとうございます。
うちの妻も驚いていましたよ。」
マイヤーが言う。
「うちもです。
凄い事してるって驚いていました。」
アンダーセンが言う。
「ご家族の皆さんが喜んでくれて何よりです。」
武雄が言う。
「で、所長、最終防衛拠点構築計画の要旨は読み終えたのですか?」
「うん、まぁ、半分くらいは。」
武雄が言う。
「どうでしたか?」
「最終防衛拠点構築計画の概要は『魔王国側の領地が奪われる可能性が高い為、ここを最前線にするよ』
『敵が来る前に防御陣地の設置をしてね』
『皆で守って、他方の貴族からの応援が来るまで持ち堪えてね』
これです。」
「まぁ、そうですね。
何かありますか?」
「特にありませんね。
言っている事はまともです。
ですが、敵数の想定が少ないのを前提にしているので、あまり効果があるようには思えませんし、敵数の想定が多くともやる事は変わらないだろうと思いますのでね。
内容は今回私の魔王国への出張の報告を見て、再検討になるでしょうね。」
武雄が言う。
「所長は関与するのですか?」
「出来ればしたくないですね。
王都の人達で考えれば良い事です。
最終防衛拠点構築計画が本格発動する時は、私達は前線に居て関係ないですから。」
「それはそうですね。
なら、所長がするのは?」
「エルヴィス伯爵領と魔王国の・・違った、ブリアーニ王国との関の強化案を考える事ですかね。
それはマイヤーさん達にも見せたでしょう?」
「はい、クロスボウの事を伏せた件ですね。
今回、その辺の話が軍務局で決まれば、エルヴィス家側で検討ですね。」
マイヤーが言う。
「そうなりますが・・・各局に顔を出す順番も考えないといけないでしょうか・・・」
武雄が考えながら言うのだった。
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