第3408話 さ、最終防衛拠点構築計画の文官側からの視点で考えよう。(武雄は小言を残します。)
エルヴィス伯爵領側の王都の壁 合同庁舎内総務局。
武雄達は局内の応接室に通されており、座って待っていた。
第1騎士団の小隊長は案内のみで、退出している。
通されてしばらくして総務局 支部長と経済局 支部長が合流していた。
ちなみに合同庁舎の各局には支部長が最高位として在籍していた。
「部下が気が付かず、申し訳ありませんでした!
再教育をしていきます!」
経済局 支部長が頭を下げていた。
「いえいえ、前触れも出していませんし、受付で身分も言いませんでしたので、こっちも悪いですし。
気になさらないでください。」
武雄がにこやかに言う。
「ありがとうございます!
各貴族方のお名前を周知するよう徹底いたします!」
経済局 支部長が顔を上げる。
「さて、こちらにキタミザト様の最終防衛拠点構築計画の控えをお持ちしました。」
総務局 支部長が武雄の前にちょっと厚めの冊子が置かれる。
「・・・うーん・・・厚めですね。
要旨で構わないのですが。」
武雄が冊子を見ながら言う。
「はは、これでも要旨なんです。
この地に派遣される貴族の屋敷等にはもっと分厚いのがあります。」
総務局 支部長が言う。
「うーん・・・これを借りても?」
「ええ、そう言われると思ったので、持ち出し許可を持ってきました。
王都からの帰路時に持ってきていただければ構いません。」
「わかりました。
お借りします。」
武雄がそう言って、最終防衛拠点構築計画をリュックにしまう。
「ちなみにキタミザト殿、なぜ最終防衛拠点構築計画を?」
総務局 支部長が聞いてくる。
「今回の慣例の戦争において実施されましたからね。
王都に着く前に要旨だけでも知っておこうと思いまして。
・・・支部長、今回、結果として担当する貴族が降爵します。
何が原因だと思いますか?」
「軍務なので、私には・・・」
総務局 支部長が言い渋る。
「外から見ることでわかる事もあります。
それに王城の総務局に客観的な事を報告しているのではないのですか?
・・・次同じ事になったら違う原因が求められるのでは?」
武雄が総務局 支部長に「文官が何かしたからと言われかねないよ?」と言う。
「・・・はい、今回の最終防衛拠点構築計画について、実施面の評価として第1騎士団、軍務局が監査していました。
私達は王都の本体の指示により、我らへの要請内容とその時系列の提出。
私個人としての客観的行動観察を提出しています。」
総務局 支部長が言う。
「ふむ・・・で?支部長の意見は?」
「全体的な緩慢な動きだったのではないかと。
要旨の内容を理解しているというか、わかってはいても実際に動いてみると、無駄な動きが多く、予定の工程を完了するまでに日数がかかっていました。
また、今回の降爵の理由の1つに旧貴族の責任転嫁があります。
内容は・・・言えませんが、あまりよろしくない内容でした。
そのように王都の本体には報告しています。」
総務局 支部長が言う。
「・・・ふむ・・・・・・支部長、王都の本体からの指示は、静観して報告せよと言われたのですね?
『積極的に関われ』とは言われなかった。」
「はい、あくまで要請してきた事に応え、記録を残す事が指示されました。」
「なるほどね・・・・・・まったく、困ったものです。」
武雄が眉間に皺を寄せて、呆れたように呟く。
「キタミザト殿、何か?」
「いえ・・・前線に居る者として、後ろでゴタゴタは困ると思っただけです。
そして今回の件を次回に反映させなければ、実施した意味がありません。」
「はい、その通りです。」
総務局 支部長が頷く。
「はぁ・・・王都の総務局と話し合うか・・・」
「と申されますと?」
「端的に言って、今回は文官の積極姿勢が見れなかったから工程が遅れたと捉えられる内容だという事です。」
「いえ!我々は要請があり次第、各局を動かし、用立てています!」
「ですが、工程が遅れると分かったのに対処しなかったのでしょう?」
武雄が眉間に皺を寄せたまま目を据えて支部長に言う。
「そ、それは・・・」
「まぁ、王都の本体からの指示なのです。
上からの指示を曲げるのは組織上よろしくありませんし、何もなかったのでね。
結果として、正しかったのでしょう。
ですが・・・我々、前線に立つ者からすれば、どんな体制であろうと最終防衛拠点構築計画をちゃんと実施できるようになっていないと困るんですよ。
手順じゃないんです、結果だけ欲しいんです。
王都がどう思っていようが構いませんが、最終防衛拠点構築計画が発動するという事は、『ここが最前線になる』という事だと私達は思っているのです。
それなのに、『要請だけに応える』・・・前線の犠牲を無駄にする気だったのですか?
・・・まぁ、支部長に言う事でもありませんので、王都からの指示について、王都で話し合わないといけないでしょうね。」
武雄が言う。
武雄もマイヤーも最終防衛拠点構築計画が実施された裏の理由を知っているので、マイヤーからしたら武雄の言葉が「文官方にも緩みがあった」という指摘をしたいというのがわかるのだが、言われている本人は心にささっているだろうなぁと思って聞いている。
「・・・はい。」
総務局 支部長が重く頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




