第3406話 武雄は散策中。(人はまだ拾っていません。)
王都の寄宿舎では。
試験小隊内定者達がジーナの部屋からヴィートの部屋に家具を移動していた。
「「「「せーの!」」」」
「扉に注意して運び出せ!」
「右!隙間大丈夫です!」
「左は・・ちょいキツイです!ゆっくり!」
皆がベッドを持ち運んでいる。
「あとは、大きい机と引き出しやクローゼットのこまごまとしたものですね。」
この引っ越しを指揮する試験小隊員がジーナに言う。
「お手伝いありがとうございます。」
「いえいえ、大丈夫です。
玄関に置いてある木箱は後程、総監局の馬車が引き取り、エルヴィス伯爵邸に輸送されます。」
「はい、お願いします。
・・・家具を出すと部屋が広く感じますね。」
ジーナが頷き、ふと室内を見ながら呟く。
「ま、そういうものでしょう。
何年も住んでいたらもっと色々と思うかと。」
「皆様も引っ越し準備が始まりましたか?」
「はは、我々はもう少し先になりますから、まだ何もしていません。
今回か次回に部屋決めになるでしょう。
エルヴィス家の文官方が選定していただいていると聞いています。」
「良い部屋が選べるとよろしいのですが。
確か、前回は入りたい部屋が被ったら、抽選をしていたそうですね。
私は精霊魔法師になったばかりでアリス様達と居ましたので、詳しくはわからないのですが、盛り上がったと聞いています。」
「そうでしょうね。
前回の事もあり、我々にもどういう感じの部屋が用意されるのかは聞いています。
あとは間取りが・・・こればかりは私だけでは決められませんので、家族会議です。」
「なるほど。
楽しみではありますが、希望の物件が被った際には抽選でしょう。
ご家族からの期待が重いかもしれませんね。」
「はは、その時は胃を痛めながら参加します。」
「今度は私も立ち会って雰囲気を楽しめたら良いのですが。」
ジーナが苦笑しながら言うのだった。
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エルヴィス伯爵領側の王都の壁の街中。
「うーん、所長がまだ声をかけませんね。」
マイヤーが悩みながら言う。
「私が四六時中、誰かに声をかけている風な言い方は困りますが・・・
行く当てがない人が居ませんね。」
「朝食時の話ですか。」
「ま、結果としてそうですからね。
それに引き抜くのに、どこにも所属してないというのは楽ですしね。
勤めていたのなら勤め先に伺わないといけないでしょう?
もしくは退職して貰わないといけない。
日数がかかりますし、相手の所と良い関係を築く事は出来ないでしょう。」
「まぁ、人材を抜くのですから、良い印象にはならないでしょう。」
マイヤーが頷く。
「街を歩いていて、行く当てのない人、絶望しているような人、困っている人が居ないのは統治が上手く行っている証拠です。
ま、王都のすぐ隣でそんな住民が居たら、その国家は危ういと思いますけどね。」
武雄が苦笑しながら言う。
「確かに。
で、所長はどこに向かっているのですか?」
マイヤーが聞く。
「庁舎。」
「何かありますか?
王都からの派遣文官が領地運営をしているはずですが。」
「最終防衛拠点構築計画を見てみようかと。
言葉は知ったのですが、中身を知りませんからね。」
「計画書に今回の行動報告書も付随されているでしょうから・・・見て楽しい物ではないと思いますが。」
「読んで楽しい報告書は私の行動報告ぐらいですよ。」
「いや、所長の報告書は一部の人が大変苦労される内容なのですが・・・
まぁ、読み物としては面白いです。」
「でしょ?
動いている私も楽しかったですからね。
とはいえ、今後も何かあれば発動する最終防衛拠点構築計画です。
内容を知らないと何かあった際に備蓄しておかないといけない物がわかりませんからね。」
「ふむ・・・足りない物ですか・・・」
マイヤーが考える。
「現地では小麦や干し肉等の食糧、武具とかも足らなそうですが、今回はなかったとはいえ、物流が止められる可能性はあります。
最終防衛拠点構築計画において、どのくらいの期間物流を止めるのか、もしくは、猶予的なものがあり、どんな種類なら物流は止められないかとか。
それを知っておかないと、何をどれだけ備蓄しないといけないのかわかりませんよ。
ついでに足らない物があるのなら万が一の際は売れるわけです。」
「まぁ、確かに。
ですが、物流が止まったとしたら全ての種類が足らなくなると思いますが。
特に何か一部突出して不足するという事はないと思います。」
マイヤーが言う。
「ふむ・・・そう言われると確かに特に用意する物というよりも食料を始めとした全ての種類が足らなくなるというのはわかりますね。
とはいえ、全部が足らなくなるにしても減り方はまちまちでしょうから。
どんな物資を他領に依存しているのかを知らないといけないですね。」
武雄が言うのだった。
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