第3397話 エリカとアズパール王との打ち合わせ。(頑張りすぎると悪目立ちするかも。)
アズパール王の執務室。
アズパール王が書類が山積みされている執務机を挟んで座っているエリカと話をしていた。
「うーん・・・何度見てもブリアーニ王国からの正式な領地異動の通達だな。
祝辞と祝品を贈るよう手配しよう。」
アズパール王が頷く。
「これでアズパール王国は4か国と接する事になりました。」
エリカが言う。
「そうだな。
出来れば当面、魔王国とブリアーニ王国とはのんびりとした関係でいたい物だ。
それにしても・・・なーんか、この書簡は『これだけ?』という感じで、肩透かし感があるんだよな。
静か過ぎると言うか・・・」
アズパール王が腕を組んで首を傾げる。
「・・・静かな事は良い事だと思いますが?」
エリカが真面目な顔をして言う。
「あぁ、そうなんだがな・・・タケオとエルヴィスが対応しているからなのか、静か過ぎるのが不安と言うか・・・
領地替えや領主交代、国王交代といったのは、色々と制度や組織変更がやりやすい物でもある。
エルヴィスの理由はどうあれ、エルヴィス家は、この機に軍の組織を変える。
事情を知らない者から見たらブリアーニ王国が来たから変える必要があったとも見られるだろう。
で、魔王国がこれを逃すとは思えないんだが・・・」
「そこまで陛下が思っているとなると。
ある意味、全幅の信頼ですね。」
「魔王国はまともな国家で我が国より格上だ。
認める所は認めないと国政を誤る事になる。」
「ウィリプ連合国のようにですか?」
「国政を誤っているかどうかよりも、まずはまともな国家かから議論をしなくてはならんな。
・・・少なくとも同格以下でしかないとは思っている。
カトランダ帝国では、こう言った手法は取られないか?」
「しませんでしたね。
兄達が亡くなっても組織が変わる事はありませんでした。
習った限りでは父上が継いだ際に組織変更はしなかったかと。
したのは幹部人事で保留と入れ替えぐらいだったはずです。」
「ふむ、トップが変わろうとも組織は揺るがないという事だろう。
上の幹部達によって政策の柔軟性が変わる程度だな。
端的に言えば、変化しなくても良い国という事だな。」
アズパール王が頷く。
「小麦の収穫が少ないのが問題なのですが。」
「そこは組織体制を変更させるような変化をしてまで対処することではないだろう。
残念だが農政事業が上手くいっていないという事でしかない。」
「ふむ・・・」
エリカが考える。
「我が国でもエルヴィスの所は頑張っているが、なかなか収穫高が上がらん。
これは人事や組織の問題ではなく、ただただ農政事業が上手く行かないだけだ。
気候や地域性、小麦の品種の問題なのだろうな。
農業、酪農関係は努力したから成果が出る物ではないからな。
その土地土地であった作物を作り、良く売れるようにすれば、自身の所で収穫が少ない作物が買えるだろう。
そういう地域差を作るのが一番だ。
あとは頑張れとしか言えんよ。」
アズパール王が言う。
「・・・なんとも地方に丸投げ感がある言い方ですね。」
エリカが苦笑する。
「全体を見る我の立場では、このぐらいしか言えんさ。
むろん、各領地で何を作っているのか、作物の取れ高とかは集計し、報告を受けている。
エリカもエルヴィス伯爵領を見学しに行ったろう?
頑張っていただろう?」
「狂気の沙汰感がある政策ばかりでしたがね。」
「え?そうなの?
我に来た報告では、変わらない物は変えずに、毎年新しい事を試し、良い結果が出たなら、次の年もするという農業政策をしていると報告を見たんだが。」
アズパール王が聞いてくる。
「ええ、陛下の今言った事が狂気の沙汰なのですけど・・・少し向こうの文官と話したのですが、作付け品目の拡充と肥料の開発、収穫した作物を加工する売れる品の開発。
ここが重要だと考えているようです。」
「ふむ・・・エルヴィス家のみでなく、他の領主達にとっても同じ内容が重要だろう。」
エリカの言葉にアズパール王が頷く。
「特に3つ目の加工品の開発ですが、これはタケオさんがエルヴィス家に加入した事により急拡大しているようです。」
「まぁ・・・ウスターソースがその1つだろうな。」
「あと、ピザとかのエルヴィス家からのレシピ公表があります。」
「あー・・・確かにな。
うーん・・・エルヴィス伯爵領の発展は喜ばしいが、少々、他の貴族達と成長速度が違いすぎるのが、問題になるかもしれないな。
一応、各貴族には年に1回程度は、王国全体の報告書が送付される。」
「政策が上手くいっただけという説明で終わらせられませんか?」
「王都はそれで納得するだろうし、魔王国方面の2貴族も大丈夫だろう。
西側がな・・・まぁ、あいつらはエルヴィス伯爵領とは、やり取りがないだろうから・・・
その為のカトランダ帝国との輸入拡大政策があるのだが・・・ウィリプ連合国方面がなぁ。」
アズパール王が考えながら呟く。
「・・・まぁ、報告書には簡潔に書いておくしかないかもしれませんね。」
「具体的な数値は書かないで作るか・・・」
アズパール王が呟くのだった。
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