第3386話 432日目 エルヴィス伯爵領 西町に到着。(武雄は局長と話し合い。)
エルヴィス伯爵領西町の庁舎。
「キタミザト様、お待たせいたしました。局長からお通しするよう申し付けられました。」
と、受付の女性が局長執務室から戻って来て話しかけてくる。
「はい、わかりました。」
武雄は席を立ち、受付の女性の後に付いて行く。
・・
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局長執務室と書かれている部屋の前で止まり、受付の女性が扉をノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。
西町局長が起立して待っていた。
「局長、キタミザト様をお連れいたしました。」
「はい、ご苦労様です。
キタミザト様、ようこそお出で下さいました。」
「西町局長、突然来てすみません。」
「いえいえ。
さ、立ち話もなんですので、お座りになってください。
あ、君。お茶をお願いできますかね?」
「はい、畏まりました。」
受付の女性が退出して行く。
武雄は局長が勧めたソファに座ると局長も座るのだった。
「さて、キタミザト様、この度は侯爵への陞爵、誠におめでとうございます。」
西町局長が頭を深々と下げる。
「はい、ありがとうございます。
早すぎる出世ですが、取りに来いと言われたので貰ってきます。」
武雄が苦笑しながら言う。
「局長的には、私よりもスミス坊ちゃんの方が気になりますよね?」
「あはは、そうですね。
エイミー殿下は前に来られた際に少し話をさせていただきましたが、しっかりされた方だという印象でした。」
「その通りの方でしょうね。
アン殿下の方は何かわかっていますか?」
「第1皇子一家から来られるのと年齢しかわかりません。
伯爵様が王都に行かれた際に会われて、問題ないと結論付けたとは聞いています。」
局長が言う。
「ええ、問題ないと思いますが・・・可愛らしい子ですよ。
料理が好きで色々と作っているとは聞いています。」
「料理を・・・ですか。
その・・・言葉が選べないのですが、王家の姫君が料理を?」
「ええ、生まれながらの王族なのに料理に興味を持っていますね。
親達も認めていますし、エルヴィスさんも認めています。
なので、こっちに来てからも料理をしていくでしょう。」
武雄が言う。
「そうですか・・・いつか来られますかね?」
「たぶん、近いうちに来ますよ?
近々は王都で引っ越し等がありますから、それが落ち着いたらスミス坊ちゃんが連れて来るのではないですか?
その際は、ここを通ります。」
「料理の話が出来るようにしておきます。」
西町局長が頷く。
「料理と言えば特産品祭りの出店はどうするのですか?
今年は『卵を使った食べ物』でしたよね?」
「・・・・・・試作はしているのですが・・・・・・」
西町局長が目線を逸らす。
「上手く行っていないと。」
「去年は南町の『野菜を練り込んだパスタ』が1番でしたので、今年は我が街に持って来たいのですが・・上手く出来ません。」
「卵料理なら色々と出来ると思いますが。」
「うーん・・・決定打に欠けます。
野菜と卵を使って何かできないかと思っているのです。」
「なるほど・・・西町は今年はウスターソース関係の野菜の栽培の拡充でしたよね?
だから、野菜と絡めたいと。」
「ええ、そうすれば、この町や管轄の村々で出せると思うのです。」
「・・・ふむ・・・奇抜な物でなく、サンドイッチで良いと思うのですが?
ゆで卵の輪切りとレタス、トマト、ハムをパンに挟んで、それに合うソースで良いのでは?」
「・・・勝てますかね?」
「ソースがどんなのかによるとは思いますが、意外とシンプルな構成の方が万人受けするのでは?
中身はシンプルでソースが独特の方が良いかもしれないなあ。」
武雄が考えながら言う。
「ふむ・・・ソースの開発ですか。」
西町局長も考えながら言う。
「他だとスクランブルエッグと葉物野菜を一緒にバターで炒めるのも美味しいですし、野菜スープに溶き卵を入れて卵スープにするのも良いですよね。
大量に出すのなら、野菜炒めに卵か、野菜スープに卵、あとはゆで卵を何かに挟むかという風に方法は限られてくると思うのですよね。」
「それは確かに・・・うーん、悩みます。」
「確か前回は局長会議で試作品を持ち寄ったのですよね?」
「はい、出店料理が被らないようにと。
今回もキタミザト様が王都に行っている間にされる予定です。」
「なのに決まっていないのですよね?」
「んー・・・決めなくてはいけないのですが・・・
うん、今のキタミザト様のご意見を皆で検討して、試作品を局長会議に持って行きます。」
西町局長が言う。
「どんなものが出るのか楽しみですね。」
「努力はしますが、キタミザト様の口に合うかの保証は出来かねます。」
「私の口は、そこまで舌が肥えている訳ではありませんよ。
帰宅時の楽しみに取っておきます。」
「特産品祭りよりもキタミザト様に出すという方が重圧なように感じますね。」
西町局長が苦笑するのだった。
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