第316話 23日目 起床と朝食。
1時課の鐘が鳴る少し前。
まだ薄暗い中、武雄はベッドを抜け出し着替え始める。
アリスはスヤスヤ寝ている。
「主?」
ミアが起きたようで声をかけてくる。
「ミア、起こしてしまいましたか?」
「おはようございます、主。
で、どこかに行かれるので?」
「はい、おはよう。
厨房に呼ばれています。
昨日もそうでしたが料理人達が目をキラキラさせながら『毒見ですので』と言って大量に食べていましたから・・・朝も多めに作らないといけないので早めに行ってきます。
それにキャラメルも昨日仕込んだものを小分けにしないといけませんからね。
アリスお嬢様はまだ寝ているでしょうが・・・
朝食と一緒に私は戻って来るのでアリスお嬢様が起きたら伝えてください。」
「わかりました。」
「では、まだしばらく寝ていて良いですからね。
行ってきます。」
武雄は部屋を出ていき、ミアは毛布を掛け直すのだった。
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王家の食卓にはタマゴサンドにハムと葉物野菜とマヨネーズのサンドイッチとスープが配膳されていた。
「むぅ・・・」
レイラは配膳された物を見ながら唸っている。
「・・・レイラ、また?」
ローナが聞いてくる。
「・・・違いますよ。
何でタマゴサンドが2切ずつ別の皿に・・・
明らかにタケオさんの関与がわかってしまうので思案しています。」
「あぁ・・・昨日の夕飯に続きタケオが料理をしたな。
であろう?料理長。」
「はは、流石でございます。
昨日夕飯を作っている際にキタミザト殿から『エイミー殿下よりレイラ殿下達がタマゴサンドの味が違うという評価が出たと聞きましたが?』と言われましたので、なら明日の朝にもう一度作ってみようとなりました。」
「・・・で、何か違ったか?」
「皆様が食べたのちに説明いたします。
あ、ちなみに卵スープもキタミザト殿が教えてくれた蟹の出汁を使いました。」
「あぁ・・・タケオ・・・こっちが何もしていないのに・・・」
アズパール王がガックリとする。
「あの・・・お爺さま、食べたいのですけど。」
エイミーが聞いてくる。
「あぁ、そうだな。では食べようか。」
王家一同が一斉に食べ始めるのだった。
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武雄達の部屋にて朝食中。
「へぇ・・・この王城のタマゴサンドも美味しいですね。」
アリスはモグモグしながら感想を言う。
「ですね。
ミア、クゥ、どうですか?」
「美味しいです!主。」
「きゅ!」
2人とも満足そうにモグモグしている。
「タケオ様、何が違うのですか?」
「マヨネーズを作る時に使ったレモンの違いですね。
さっきの王城のマヨネーズは風味が強いレモンを使っています。
対して私が使ったのは街で普通に出回っているレモンです。
料理長と2種類作って食べ比べをしたのですけど、どちらも良いですね。
料理によって使い分けしてみようとなりました。」
「なるほど。
うちの料理長達に教えてあげないといけないですね。」
「そういえば王城の料理長がうちの料理長に手紙を送ると言っていましたね。
『今回のレシピを送ります。』とニヤリと笑っていたので何か追記するのでしょうね。」
「多分見返りに何かレシピをくれとか何とか言われそうですけど。
タケオ様、どうします?」
アリスが苦笑する。
「この国での料理のレシピの価値がいまいちわかりませんね。
少なくとも王都には私が伝えたタマゴサンド、マヨネーズ、プリンにバターサンドと出汁がありますね。
となると、今までエルヴィス邸で作ってきた料理のほとんどはわかっているのでしょう。
さらにレイラさん達はラザニアとカルボナーラ、ショートケーキも食べましたよね。
・・・アリスお嬢様的にはどう思いますか?」
武雄がアリスの判断を聞く。
「そうですね・・・
普通に考えて料理も情報の一部です。
秘匿するお菓子か料理が2種類か3種類は欲しいですね。
そうすることで『エルヴィス家に行くと美味しい物が食べられる』となって、他所の情報を持ってうちに遊びに来てくれる方もいるかもしれません。
なので、全部の料理を教えるのは私はあまり良いとは思いません。」
「なるほど。
では、今挙げた物を応用しても作れなさそうなお菓子か料理を作りますか。」
「えーっと・・・タケオ様、そんな料理があるのですか?」
「ええ、あるにはあるのですけど・・・
私はそのお菓子を作ったことがないんです。
1つは昔祖父が年に1回作っていたのですけど・・・詳しくは覚えていないのですよね。
あとは昔テレ・・・作り方を一回見たことのあるお菓子があるのです。」
「2つも!?」
アリスは驚く。
「それにパンも何種類か作りたいですよね。」
「あ、それは前に言っていましたね。
帰ってから作りますか。」
「そうですね。
それにエルヴィス家の料理長達には宿題を残しているので今頃、試作が終わった頃でしょうね。」
「何を宿題に残したのですか?」
「『パンを2種類とお菓子を1個作ってみたら?』と作り方を置いてきました。
たぶんそこまで難しくはないので作れているはずなんですけど・・・」
「あぁ・・・料理人達が頭を悩ませているのが目に浮かびます。」
アリスが苦笑するのだった。
朝食後のティータイムを武雄達はマッタリと過ごしていると。
執事がやって来て、武雄に手紙を渡すのだった。
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