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第300話 割と本気。

エイミーとパットの罵り合いは終息に向かっている。

2人とも声を出し過ぎ「ゼェハァ」と肩で息をしているのだ。

「タケオ様、そろそろです。」

アリスが武雄に声をかけると武雄は目を開けスッと立ち上がる。

「どうですか?行けますか?」

「アリスお嬢様、大丈夫です。

 心は穏やかですよ。」

武雄はアリスに微笑むとアリスも微笑む。

と、アリスは武雄を抱きしめる。

武雄もアリスの背に手を回す。

すぐに2人は離れると笑顔で頷きあう。

「行ってらっしゃい。」

「すぐに戻ります。」

「はい。」

「ミア、クゥ、大人しくしているんですよ?」

「わかりました、主。」

「きゅ。」

武雄は小銃改1とクゥをアリスに渡し前に進むのだった。


------------------------

武雄が前に行ったのでエイミーが皆の所に戻って来る。

「はぁはぁ・・・

 ・・・あの⚫カはとんでもないことを・・・

 ・・・さて、第一近衛分隊長、第三魔法分隊長。」

エイミーが隊長2人に声をかける。

「「は!」」

「どう見ます?」

「キタミザト殿の秒殺でしょう。」

マイヤーが答える。

「ですね。」

アンダーセンも頷く。

「そうなの?

 あの2人は優勝者と準優勝者なのでしょう?

 アリス様と匹敵するとか言っていましたが。」

「エイミー殿下、そもそもですね。

 アリス殿に匹敵する武力とは、先ほども言いましたが、我ら王都守備隊全隊を相手取っても引けを取らないくらいでないといけません。」

「さっきのは冗談だったのではないのですか?」

「本気です。」

「・・・私はそこまでではないですよ?」

アリスがジト目で抗議するが、マイヤーは気にしない。

「ご冗談を。

 で、キタミザト殿は、そんなアリス殿と戦って引き分けた方ですよ?」

「え!?」

エイミーが驚きアリスを見る。

「ええ、本当ですよ。

 私は木剣でタケオ様は刃引きしたナイフでしたけどね。

 結果引き分けですが、実質は私の負けでしょうね。

 タケオ様は『もう対戦はしませんよ~』と言っていましたけどね。」

アリスは苦笑する。

「私が知る中でアリス殿に個人で匹敵するのはキタミザト殿だけです。

 そしてアリス殿は攻撃特化、キタミザト殿は防御特化とこの2人組は国内最強なんです。

 こんなことを言っては王都の兵士として失格かもしれませんが、あの程度の兵士ごとき2名がキタミザト殿に対して戦っても傷も負わせられないでしょう。」

マイヤーの説明にアンダーセンも頷く。

「・・・私、『タケオさん』と呼んでいるのですけど・・・

 そんなに凄い方だったの?」

「タケオ様もエイミー殿下に『さん』付けです。

 はぁ・・・陛下やウィリアム殿下、エイミー殿下の正体がわかった時のタケオ様が心配です。」

「タイミングを見て話すしかないでしょうね・・・」

マイヤーが苦笑する。


「・・・それにしても第一近衛分隊長殿。

 あの2人・・・第2騎士団でしたよね。」

アンダーセンが目を細めながら言う。

「ああ、そうだな。」

「第一近衛分隊長殿は護衛の任務中でしたので知らないかもしれませんが、

 この間のゴブリンとオーガとの戦闘報告書と戦闘経過を真っ先に疑ったのが第2騎士団です。

 その後も疑い続けているという話です。」

「・・・ふむ、この戦闘は、もしかしたらパット殿下が言い出したのではないのかもな。」

「あとで総長と第一情報分隊長殿に相談してみます。」

「わかった。」


王都守備隊の隊長2人が仕事の話をしている横で。

「あの・・・エイミー殿下。」

「なんでしょうか?アリス様。」

「あの言い合っていた男の子は・・・どなたなので?」

「あぁ、アレは不肖にも私の従兄です。」

「い・・・従兄!?」

「第1皇子クリフ伯父上の息子です。」

「あぁ・・・タケオ様・・・」

アリスはうな垂れるのだった。


------------------------

お互いの距離が15mの所まで武雄は近づく。

「ふはは!!ようやく来たか!!

 さぁ!命乞いするのならその命助けてやら」

「はいはい、何でも良いからさっさとかかってきなさい。」

武雄はパットの言葉を遮り、小太刀を鞘から抜き、右手で逆手で持つ。

「な!!我に対し何たる無礼!

 やれ!かかれ!」

パットの号令で兵士2人が武雄に向かって走り出す。

武雄から向かって左が右手に片手剣を右が両手剣を持って走って来る。

武雄は「シールド×15 5m先高さ50cm 発動」と右側の兵士前にシールドを展開すると・・・転んだ。

その隙に左の兵士が剣を振りかぶるが、武雄は冷静に左手に「シールド×15」を作り、剣を受け止め右手の小太刀を下から上に斬りつけ、相手の右腕の内側に深手を負わせる。

「ぐぁっ!」

兵士はそのまま崩れ落ちる。

と、転んでいた兵士が今倒れた兵士の左側から横殴りで斬り込んでくるが、右腕の下から剣を受け止めるように左手をだし、「シールド×15」を作りだして受け止め、相手の右腕の外側を返す小太刀で斬りつけ、深手を負わせる。

「ぐぅっ!」

兵士は思わず片膝をついてしまう。

さらに武雄は間を置かずに左手で「エクス×35」を二人に浴びせる。

ボボボボボボボッ!!!!!!

斬りつけられて追撃のエクスを受け2人とも気絶している。

・・

勝負は、ほんの数秒で終わる。

誰も言葉を発せない。パットは口を開けたまま放心している。

武雄は兵士が動かない事を確認してアリス達の場所に戻って行く。


------------------------

「ただいま戻りました。」

「タケオ様、おかえりなさい。」

「魔法分隊の隊長さん、すみませんが。」

「はい、救護してきます。

 行くぞ!」

「「「は!」」」

アンダーセンは、いつの間にか周りに来ていた部下と共に倒れている2人に駆け寄っていく。

「キタミザト殿、ご苦労様でした。」

「・・・マイヤーさん、本当にあの2人はアリスお嬢様に匹敵すると言われているのですか?」

「らしいですが・・・キタミザト殿的には、どのくらいでしたか?」

「そうですね・・・

 剣の速度はゴブリンより上。威力はオーガより下。

 ・・・アリスお嬢様の足元にもおよびません。」

「はぁ・・・アリス殿と引き分けた方に言われると納得しますね。」

マイヤーはため息をつく。

「と、エイミーさん。」

「はい!」

エイミーは御前仕合や寄宿舎内の競技会を見たことはあったがここまで差のある戦いは初めてだった。

エイミーは武雄の秒殺を目にして武雄=アリス様の婚約者から武雄=凄い人に変わっていた。

「ん?何を緊張しているので?

 ・・・まぁ良いです。それより露払いは済みましたよ。」

「え?・・・あ!

 ありがとうございます。

 私は所用で少し遅れますが、この門の先に王城があります。

 城に入ると受付があるのでそこでお待ちください。

 すぐに!追いつきますから!

 では、失礼します!」

と、エイミーが走り出す。

・・

「パットぉぉぉ!!!!」とエイミーがパットの顔面に右ストレートを見舞っていた。


「・・・はは、さっきの兵士より威力がありそうですね。」

武雄がエイミーの攻撃を見ながら苦笑する。

「さて、私も少し所用がありますので、ここでお別れです。

 エイミー殿が言ったように門を抜け王城に向かってください。」

「マイヤーさん、ありがとうございました。」

武雄の言葉にアリスも軽く礼をする。

「いえいえ、私も楽しかったのでこちらこそありがとうございました。

 まぁ、またそのうち会うと思いますけど。

 とりあえず、これで。」

マイヤーはアンダーセンの所に向かう。

「じゃあ、行きましょうか。」

「はい、タケオ様。

 あ、預かっていた小銃を返します。」

武雄はアリスから小銃改1を受け取り背負うと王城の門を潜るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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