第3話 気がついたおじいさん。
「ふわっ」
眠い。
あれから小1時間・・・暇だわ・・・
「ん・・・んん・・・」
ビクッ!!!
気を抜いていたので驚いてしまったが、どうやらおじいさんが起きたようだ。
足音を立てないよう、静かにおじいさんから2mくらいの距離まで移動する。
剣は逆手に持ち、腰の後ろへ。おじいさんから見えないように構える。
「空?・・・ん?」
起きるというより、ゴロッと横になって寝がえりをしたおじいさんと私の目が合う。
「・・・お主は誰じゃ?」
それ、私のセリフでもありますよ?
それに、そんなに見つめないでほしいんですが・・・
下手したら殺されるか?剣を握る手の汗が凄いことになっています。
「はぁ・・・私は北見里 武雄と言います。」
「ほぉ、変な名前じゃな・・・
わしは、エリオット・ヘンリー・エルヴィスという。」
おじいさんが名前を言った時、一瞬目が鋭くなったような?とはいえ、わからない事だらけの今は、気にしても仕方がないですね。
「えっと、エルヴィスさんと呼べばよろしいですか?」
「ふむ・・・まぁそれでいいじゃろ。
ちなみにわしは、なんでここで落ち葉に包まれておるのだ?」
「記憶はどこまでありますか?」
「・・・確か、林道を馬で移動していたら急に馬が跳ねて、振り落とされた先が斜面で・・・」
その後の記憶はなさそうですね。おじいさんも微妙な表情をしていますし。
ってことは、茂みから出てきた時はほぼ無意識!?危なっ!!
「なるほど。私はここで立っていたのですが、エルヴィスさんが急にその茂みから出てきて、そのまま倒れましたよ。」
出てきた場所を視線で示すと、エルヴィスさんもそちらを見る。
「で、この落ち葉はお主が?」
「ええ、寒くはないですが、風が若干冷たいので。体温を下げるのを少しは和らげられると思って。」
「なるほど、実際にこれは温かいのぉ。」
ゴソゴソと温もりを楽しんでいる。
なにやっているんですかね、このおじいさんは。傍から見たらでっかいミノムシですよ?
10分くらい落ち葉布団の温もりを楽しんだ変態爺さんはおもむろに言い放った。
「さて、温もりを楽しみたいのだが、家に帰るかの。
たぶん家の者が心配しておるのでな。」
「では、お預かりしていた剣をお返しします。」
後ろに持っていた剣を柄の方を向けて返す。
「うむ。苦労をかけたな。・・・・んぅあ!」
おじいさんが起き上がろうとしてから苦しみだす。
なんて言うのでしょう、四つん這いになってプルプルしていますが。
おじいさんがそんな仕草をしても可愛くないですよ。
「どうやら足を捻ったようじゃ、立てん・・・」
涙目でこっちを見ないでください。
だから、それも可愛くないですよ。
「誰か、家まで肩を貸してくれんかのぉ。」
誰かそんな親切な人が見つかるといいですねぇ。
露骨なアピールをされても可愛くないですよ。
ちなみに武雄は片膝立ちに柄を持ったままの姿勢で真顔で聞いている。
「はぁ・・・わかりました。家までお送りします。」
ここまで読んで下さりありがとうございます。