第2855話 出刃包丁か三徳包丁か。(ダニエラ、起床。)
市場を後にした武雄達は朝からやっている紹介して貰った鍛冶屋に来ていた。
「・・・刃が薄いですね・・・もう少し厚手のはないですか?」
武雄が包丁を見ながら言う。
「厚手か・・・これなんかどうだ?」
鍛冶職人が包丁を武雄に渡す。
「・・・ふむ・・・もう少し刃渡りが短い方が良さそうですが・・・」
武雄は出刃包丁を探していたが、出されたのは三徳包丁のような形状をしていた。
「もう少しか・・・これはどうだ?」
職人が新たな包丁を出す。
「・・・これにします。」
武雄が最後に出された包丁を選ぶ。
「わかった。
布に包もう。」
鍛冶職人が引き渡し用意を始める。
「所長、求めているのはありましたか?」
ブレアが聞いてくる。
「キタミザト様、ああいった包丁が良いのか?」
ノットが聞いてくる。
「魚用には刃渡りは短めで厚手の包丁が良いと思っていますよ。
ここにはあまりないようですが。」
「魚用と言えば、細く長めの包丁というのが一般的だと思うが・・・」
ノットが考えながら言う。
「ノットさん、いろんな包丁や道具を作ってみてくださいね。
今の考えとは違う形状も案外良いかもしれませんからね。」
「ふむ・・・この歳で今までの概念を捨てろとは、キタミザト様も酷な事を言う。
が、まぁ、それも良いのかもな。」
「色々考えていきましょう。
常に発展を、常に便利さをですよ。
調理包丁以外から新作の切っ掛けがあるかもしれませんし、逆もあるでしょうからね。」
「キタミザト様の下なら色々作れそうだと思ったが、常に新しいのをというのは楽しくもあり、苦しくもありだな。」
「世の中、そんなものですよ。
領民の生活向上は予想外の発想が出来てこそですよ。」
「そして、それを領内の常識にすると。」
「いっぱい作っていっぱい売り込みましょうね。
そうすればノットさんの給料も上がるし、私の懐も潤えて、更なる技術に資金投入が出来ますから。」
「・・・うむ、恐ろしい方に仕えたのかもな。」
ノットが諦めながら言うのだった。
「おー、用意出来たぞ。」
鍛冶職人が戻ってくる。
「あ、砥石あります?」
「流石にすぐ錆びたり、欠ける事は無いぞ?」
「いや、旅の最中に必要かもしれないですから。
安いので良いので。」
「安いのはない、そこそこのはある。割引するからそれを買ってくれ。」
「はーい。
じゃ、支払いします。」
「待ってろ、砥石持ってくるからな。」
鍛冶職人が再び奥に行く。
「キタミザト様、店の買取の際に砥石があったが?」
「鍛冶職人が使う砥石を買って損はないですよ。
それに何を使っているのかわかれば、国元に帰った際に協力工房に見せれば・・・もしかしたら輸入品目になる可能性があるでしょう?」
「次の事を良く考えている事で。」
「常に考えておいて損はないですよ。
大した手間でもないですし。」
武雄が言うのだった。
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港町の宿屋にて。
「んんっ・・・んー・・・」
ヴァレーリが起床し、伸びをして体を起こしていた。
「ダニエラ様、おはようございます。」
隣のベッドで寝ていたアンナローロが目を覚ます。
「ああ、おはよう・・・マズい、キタミザト殿が動いている気がする。」
ヴァレーリが窓の外を見ながら言う。
「もう日が出ていますね。
魚屋に行っているのではないですか?
昨日、買い付けを頼んだと言っていましたし。」
「立ち会えなかったな。」
「買い付けですから立ち会う必要もないと思います。
ま、キタミザト殿なら量が少し多いかもしれませんが、たかがしれていますよ。」
「・・・まぁ、そこまで変な事をしないか。」
「ですよ。
それより今日は出立ですからね。」
「まずはブリアーニ王国だな。
第2軍が付くからのんびりと帰れそうだ。」
「そうですね。
予定では今日が8日ですから到着は12日ですね。」
「で、本国の王城には17日だったな。
意外とかかる物だ。」
「そういう物ですよ。
19日に全貴族と各王軍指揮官出席の会議です。
今回の戦争の総括と領地異動の発表、次期王の発表が予定されています。」
「やっと国王の任期が終えられるか。」
「・・・引継ぎがありますがね。」
「次が決まれば引継ぎも楽しい物だろう。
さーって、国王退任の特典である、『退任時に持って行って良い宝物庫のリスト』から持って行くのを検討するかな。」
「気が早い事で。」
「アンナローロの指揮官補佐退任の特典はあるのか?」
「私は指揮官や大隊長ではないので金銭のみで退職金がそれなりにです。
ダニエラ様にくっ付いて旅をするのに支障はないですよ。」
「フレッディが許すかな?」
「ははは、殺し文句は考えています。」
「ほぉ。」
「『ダニエラ様を野放しにするのですか!?』これです!」
「お前らは我を何だと思っているんだ?」
ヴァレーリがアンナローロの言葉に呆れる。
「え?聞きたいですか?」
「ごめん、言わないでくれ。」
ヴァレーリが頭を下げるのだった。
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