第2733話 その頃のボールド男爵はというと。(同期と議長は仲間です。)
王立学院の学院長室。
「・・・」
学院長の執務机でズーンと気落ちさせながらボールドが頭に手を当てて伏せっている。
「まぁ・・・それは仕方ないだろう。」
「しちゃったんでしょ?」
「どうしようもないでしょう。」
貴族会議の同期3人がソファに座りながら言う。
「ははは、これは大変だ。」
クラーク議長が笑いながら言う。
「・・・議長、笑い事ではありません。
まさかうちの愚息がグレース殿下と・・・どうしてだぁ。」
ボールドが呟く。
「同い年で寄宿舎という事も相まって意気投合したという事でしょう。
むしろ良かったのではないかな?
これでボールド殿も学院長として堂々としていられる。」
クラーク議長が言う。
「嫁の力で堂々としてどうするんですか・・・どうすれば・・・」
ボールドがボソッと言う。
「本人達の意志は固いのでしょう?」
「グレース殿下の意向を無下にするのは・・・」
「まぁ、しょうがないでしょう。」
同期3人が言う。
「まぁ、陛下や総監局から何も通達や報告がない時点でまだ内々で話している段階だろう。
皆もわかっているだろうが、漏れてご破算にでもなったら自身だけでなく身内がどうなる事やら・・・
正式な発表があるまで心苦しいだろうが、口をつぐんで生活をしような。」
クラーク議長が若手4人に言う。
「「「はい、心得ています。」」」
「・・・うちの家の者が心配ですが、何とか箝口令を敷きます。」
若手4人が言う。
「うむ、それが良いだろう。
それにしても・・・ボールド殿は御子息に手をあげなかったのか?」
「・・・手はあげておりません。」
ボールドがクラーク議長に言う。
「うむ、昨今、手をあげてしまう事が多いからな。
一昔前は相手の家に行って挨拶したら殴られるなんて当たり前だったが、昨今は色々とマズい風潮だ。」
「剣技の稽古を付けましたが。
ぶっ倒れるまで。」
「ううむ・・・ギリギリのギリだな。
御子息は息災か?」
「グレース殿下がポーションを持って来ているのはわかっておりましたので、立てなくなるまで稽古を付けました。
最後は握力が無くなって木剣を握れなくなっていましたけど。」
「うむ・・・騎士団長だからなぁ。
やり方が騎士団っぽいと感じさせる、で?」
「最後まで何か吠えていましたが・・・まぁ、あのぐらいの気概がなければ王族と結婚なんて出来ないでしょう。
何も背景が無ければ普通にありがたいとは思いますが。」
「王家の意向はなんとなくわかるが、口に出す事はしない方が良いだろう。
それに他の貴族からのやっかみは激しいだろうな。
まぁ、御子息達が良いと言うなら親は何とかしてやらんといけないか。」
「はぁ・・・そうですね。
私の我が儘で王立学院に入れましたからね、自分の意志で妻を娶れるというのは良い事でしょうが・・・
本人も大変ですが、私も大変そうです。」
「まぁ、そこはここの皆でフォローするしかないな。
差し当って、アズパール大公に挨拶には?」
「昨日、行って来ましたが、大公から『グレースが無理を言ったようで申し訳ない』と謝罪から始まりました。
もう、お互いに謝罪をしていた感じです。」
「ふむ・・・その感じなら問題はなさそうか。」
クラーク議長が考えながら言う。
「ええ、ですが、私にクラーク議長の後釜とまではいわないが、相応の発言力とまとめ力を付けて欲しいという要望が出ています。
どうしたものか。」
ボールドが呆れながら言う。
「ふっ・・・要望というより強制だろうな。
私の次の議長候補は2名、共に古くからの貴族会議の者だ。
新貴族のボールド殿が2人を押さえてとなると・・・王立学院の学院長という肩書だけでは少し弱いな。」
「何かの実績が必要と?」
ボールドが聞く。
「貴族会議で実績というのは中々あがらないものだ。
それこそ代と爵位の年数で決めてしまう事もあるのは実績が出し辛いからでもある。
・・・そういえば、人事局と総監局でどうも王立学院と魔法師専門学院の統合教育の研究がされていると聞いているが。
ボールド殿はどう思う?」
クラーク議長が聞く。
「・・・小耳には。
今の王立学院や魔法師専門学院は特殊な人員しか入れません。
そこを地方の一般兵士にも門戸を開き、王国全体の兵力の底上げと文官、武官の相互理解を促進し、ついでに王都と地方の意識を近づけさせるという、言うのは簡単でやるのは難しそうな研究ですね。」
「うむ、それをボールド殿達で素案をまとめて成果としてみるのはどうだ?」
クラークが言う。
「それは・・・教育改革を成し遂げろと?」
「いや、実施するかどうかではなく、良い事と悪い事を書き出し、どうすれば良い人材を集め、育ませる事が出来るかという論点で企画を書いて貴族会議と総監局に提出してみてはどうだろう。
そうすれば王国の将来をしっかり考えられる者で実施一歩手前までの設計図が出せる行動力もあるとグレース殿下が嫁ぐ先として皆が認め、行動力があるのならと議長へ推す声も増えるかもしれない。
すぐにではなくともいつかの為に実績を今から作るのも良いだろう。」
「「「「なるほど。」」」」
クラーク議長が4人に言うのだった。
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