第2482話 効率的なオーガを使って攻める方法とは。(何も起きないので雑談をしましょう。)
第二研究所陣地内の焚き火周り。
「・・・今日も動きが無いんですけど。」
武雄が戦場の方を見ながら言う。
「「「「ははは。」」」」
「小競り合いはしていますよ。」
午前の訓練を終えた試験小隊の面々が苦笑している。
「小競り合いはありますけど、こちらの数を減らそうという感じではないので、あれは動きが無いという評価にします。」
武雄が言う。
「何もない事は良い事ですよ。
と、普通なら言うのですけど・・・打ち合わせに出てくる、ファロン子爵の人物像では仕掛けて来ない事が不安感に繋がっていますね。
何を考えているのやら。」
アンダーセンが言う。
「それにオーガを温存させているというのも不安材料ですね。
所長の想定の通りにいくのか、もしくは残り全部を一気に投入するのか・・・どう動くかわかりません。」
マイヤーが言う。
「所長、何で所長はオーガを2回に分けて投入しようと前に考えたのですか?
残り全部一気に投入しても良いんですよね?」
パメラが聞いてくる。
「そうですね。
ですが、あの時の問いは『私が敵に向かってやるのならば』という問いだったので2回に分けて攻撃をしようと考えただけですよ。」
「・・・何か意図があるのですか?」
「意図?・・・意図かぁ。
あるにはありますけど・・・まぁ良いか。
私はですね、基本的に人は力の調整をする物だと考えています。」
「力の調整ですか?」
パメラが聞いてくる。
「ええ、そうですね・・・例えば、アンダーセンさんに腕立てを50回しなさいと言われたら、コーエンさんは普通に出来ますよね?」
「普通に・・・普通に出来ます!」
パメラが言う。
「うん、では、腕立てを20回しろと言われて15回を過ぎた時に追加で30回と言われたらどう思いますか?」
「・・・嫌な気持ちになります。」
「まぁ、そのとおり、『ふざけるな』という気持ちになりますよね。」
「そうは言っていません!嫌な気持ちになるんです!」
パメラが慌てて訂正をかける。
「で、結果を見れば50回するんですよ。
では、最初から50回と言われたのと、途中から追加をされて50回したのでは疲れ具合はどうでしょうか?
皆さん、想像をしてください。」
武雄が皆に言う。
「結果だけを見れば前と後、両方とも連続50回の腕立てとなりますよね。
本来なら両方とも同じ疲れになるはずですが・・・」
「んー・・・私としては追加の方が疲れるかもしれませんね。」
「精神的に疲れるのかもなぁ。
追加の方が辛い気がしますね。」
ベテラン達が言う。
「うん、皆、後者のようですね。
所長の考えは?」
アンダーセンが皆を見てから武雄に聞く。
「私も後者の方が疲れると思います、理由としては無意識に力の配分をするからと考えますね。」
「配分・・ですか。」
マイヤーが考えながら言う。
「ええ、人は目標があれば頑張れるというのはいつの時代もその通り、ですが、逆に言えば、『目標をクリアすれば終われる』という認識をするという事になります。
つまり、目標を達成するための力の配分をしてしまうのです。
先の例で言えば、20回と言われたら20回すれば終われると思い、無意識に力を20回分に分けてしまうのです、そこで残り5回で追加の30回が足されると、本来50回分で配分しなくてはいけないのに足らなくなるという事ですね。
なので、いつも50回するよりも余計に力を使ってしまうという事になるのです。」
「ほぉ・・・実体験を通して考えればその通りかと思いますね。」
マイヤーの言葉に他の面々も頷く。
「で、今回の戦争の主旨です。
基本的には魔王国側はこちらの壊滅は望んでないが、疲弊をさせたい。
つまりは『いつもより疲れさせたい』と簡単に言う事が出来ます。
一気に残りを投入すれば被害は出せるでしょうし、疲れるでしょう。
ですが、2つに分け、最初のオーガだけ倒せば終われると思わせておいて、終盤で追加のオーガを投入する事で、疲弊度が増すという事になります。
これはアズパール王国側に魔王国と戦闘をすると相当疲れると思わせる事で、近々での戦争勃発を避けようという考えなのかもしれませんが・・・どういう意図があるにしてもいつもより疲れさせる事には成功します、もしかしたら壊滅しない程度で被害を出す事が出来るかもしれません。
なので、私がオーガを使うのなら2回に分けて相手を疲弊させる方法を取るという事です。」
「なるほど、わかりました。」
パメラが頷く。
「所長、さっきの回数を無意識に意識してしまうという話ですが、それは指導をする方としてはどのように使うのですか?」
アーリスが聞いてくる。
「兵士方の教育に置いて『常に全力で行う』というのは普遍的な考えです。
この考えは常に全力を出し、疲れさせ、回復をさせる事で限界値を大きく育てるという意図があります。
この教育法を間違いという事は言えません、実際に常に全力であれば先の腕立てではないですが、何回も何回も動けなくなるまですると、少しずつですが回数が増えていく事は皆さんの実体験でわかっているでしょう。
私が言っているのは体が無意識に力を制御するので、それを今後意識して行きましょうということぐらいですね。
指導の方法は色々試しながら確認して行くしかないですよ。」
武雄が言うのだった。
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