第2481話 ジェシー戦闘準備開始。(出産は戦だ。)
エルヴィス伯爵邸の客間。
「ひゅぎゅ!!!」
ジェシーが変な叫び声を上げる。
「「!?」」
アリスとエリカが咄嗟にジェシーを見るとジェシーがソファに蹲っている。
「お姉様!?」
「ジェシーさん!?」
アリスとエリカが駆け寄る。
「痛たたたた・・痛い痛い痛い痛いって・・・・」
呟くようにジェシーが声に出している。
「パンニューキス、ジェシーにマッサージ、それと呼吸を整えさせて。
ジェシー、失礼するわよ。」
「はい、コノハ。」
コノハとパンニューキスが人間大で実体化し、コノハは蹲っているジェシーのスカートの中に潜り込み、パンニューキスはジェシーの腰を揉み始める。
「ジェシー、息を止めないで、深呼吸です、ゆっくりで良いの、ゆっくりで~」
パンニューキスがジェシーに声をかけ始める。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・はぁ・・・痛かった。」
ジェシーが少し呆けながら言う。
「うん、破水はなさそうね。
大丈夫、大丈夫。」
コノハがジェシーのスカートから顔を出す。
「コノハ・・・まさか。」
アリスが恐る恐る聞く。
「うん?昨日から少し痛かったみたいだけど、これは本気の陣痛だと思うわ。
もうすぐ産まれるわよ。」
「「ああ♪」」
アリスとエリカが笑みを浮かべる。
「ジェシー、戦闘開始ね。」
コノハがジェシーに言う。
「事前知識は貰っていますけど・・・これの間隔が短くなるとか・・・本当戦闘よね。
コノハ殿、産む部屋に移動するの?」
疲れた顔をさせたジェシーが言う。
「まだ平気よ。
これは始めだから・・・10分毎に来る程度だろうしね、もう少し短くならないと向こうに行っても疲れちゃうだけよ。
ここでリラックスしていれば良いわ。
パンニューキス、腰や背中のマッサージとケアをよろしくね。」
「はい。」
コノハの問いかけにパンニューキスが頷く。
「・・・うん、今この地にいる全精霊に呼びかけたから、その内来るわね。
アリス、メイドさん達を集めて、段取りをしましょう。
エリカ、料理長に言って少し甘めのジャガイモスープを作って貰ってくれる?
ジェシーの陣痛が激しくなると吐くかもしれないしね。
その時に少しでも体力を回復させたいからスープが良いだろうしね。」
「わかりました。」
「はい、用意して貰えるように言ってきます。」
アリスとエリカが退出する。
「ジェシー、今は昼すぎだから・・・出産は深夜か朝になると思うわ。
大変だけど、陣痛の合間に軽く寝てね。
ま、寝るというより疲れて寝落ちする感じだろうけどね。
気にしないでリラックスしてその時を待っていてね。」
「もう、その言葉からして怖いですよ。」
「ちゃんと産ませてあげるから。
私のご利益は凄いのよ?」
コノハが笑いながら言うのだった。
「そこに不安はないですよ。」
ジェシーが微笑する。
「よし!メイドさん達が来たら出産の段取りとゴドウィン家への連絡をする兵士に連絡を入れて置かないとね。
あ・・・それはフレデリックが来てからで良いか。
メイドさん達に声かけて煮沸消毒させた綺麗なタオルと・・・あ、ジェシー、産む為の軽い服装に着替えようか。」
「ええ、そうね。
何があっても良いように言われた軽いのに着替えるわ。」
ジェシーが頷くと。
客間をノックされ、ジェシーが返事をすると。
「失礼します。
ジェシーお嬢様の陣痛が始まったとの事でダンディ茶を温めで、それと汗拭き用の濡れタオルをお持ちしました。」
エルヴィス家のメイドより、ちょっと年齢が高そうなメイド2名が入ってくる。
「あら?貴女達は・・・お久しぶりね。」
「お久しぶりです、ジェシーお嬢様。
結婚を機に退職いたしましたが、この度、ジェシーお嬢様がご出産をご実家でと伺って居ても立っても居られなく、参ってしまいました。」
「お久しぶりです、ジェシーお嬢様。
私はアリスお嬢様がご懐妊されたとの事で若手の指導にと声をかけられ準備しておりましたが、ジェシーお嬢様が戻られていると知って、何か出来るのではと昔の仲間達に声をかけてしまいました。
フレデリック様からもご了承を頂いて頑張っております。
実は・・・4日前から居たのですが、現役のメイド達の邪魔はせず、アドバイスだけでと思っていたのですが、ジェシーお嬢様のうめき声を聞いて、私達2人で飲み物の準備をしてお持ちしたのです。
陣痛時に変な汗かきますものね。」
2人のメイドがにこやかに挨拶をする。
「2人も結婚して子をなしたのは聞いているわ。
出産経験者が居てくれてなによりよ。
・・・はぁ、顔を拭くと気持ち良いわ。
それに・・・うん、丁度良い温度ね。」
ジェシーが濡れタオルで顔を拭き、ダンディ茶を一気に飲んで一息つく。
「はい、落ち着かれたようですね。
この度の出産は全部コノハ殿が指揮を取っています。
アリスお嬢様の精霊で妊婦を見守ってくれているという精霊とお聞きしていますし、聞いた限りでは、私達が産んだ頃よりもかなり手厚くなっておりました。
それにダンディ茶や麦茶という妊婦用のお茶も開発されていたとは・・・時代は変わる物ですね。」
「それを見つけたのはタケオさんよ。
アリスの旦那様は女性を重視してくれる稀な貴族よ。
大事にしましょうね。」
「そうでしたか、キタミザト様は私達領民に色々と美味しい物や仕事を紹介してくれています。
領民一同、感謝しております。
その上で女性に理解があるとは・・・アリスお嬢様の見る目は正しかったのですね。」
「ええ、アリスは凄い人を旦那に迎えたのよ。
と・・・そろそろアリス達が来そうね。」
ジェシーが言う。
「はい、では、私達はこれで。
今の現役の子達より目立つわけにはいきませんので。」
「次にお会いするのはお子様を産む部屋ででしょうか。
ま、ジェシーお嬢様はそれどころではないので部屋に誰が居たかとか気にする余裕はないでしょうけど。
では、失礼いたします。」
妙齢のメイド2人が濡れタオルを回収して退出していく。
「・・・コノハ殿、余裕ないかしら?」
ジェシーがコノハに聞く。
「何とも言えないなぁ、余裕があれば手を振れば良いんじゃない?」
「そうね。
そうしましょう。」
ジェシーが頷くと同時に客間の扉がノックされるのだった。
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