第2480話 300日目 エイミーとキティの研修終了。(ヒルダが作ります。)
昼過ぎのエルヴィス伯爵邸がある街の庁舎前。
「「終わったー!」」
エイミーとキティが両手を空に突き上げて喜びを爆発させていた。
「エイミー殿下、キティ殿、喜びが爆発してますね。」
ドネリーがすまし顔で言ってくる。
「ドネリー、貴女、私の後ろに居たでしょう。
私のここ最近の会議を見ていましたよね?」
「はい、エルヴィス家の重鎮方と会議でしたね。
皆さんにはわからない程度にエイミー殿下が焦っているのを見ていて楽しかったですよ。」
「・・・おまえは・・・はぁ、まぁ良いわ。
その会議が疲れるのよ。」
「疲れない会議なんて会議ではありません。」
「まぁ・・・そうね。
決めるというのは疲れるのよ。
そんなわけで研修が終わって喜んでいるの。」
「さようですか。
で、キティ殿も研修が終わったのですね。」
「はい!もうこれでもかと課題しました!試験しました!実体験しました!頑張りました!」
キティが喜びながら言う。
「それは良かったです。
で、エイミー殿下、今日の午後から自由なのですね?」
「ええ、そうです。
一度、エルヴィス伯爵邸に戻ってエリカ殿と一緒に街中の散策です。」
「わかりました。
ですが、予定より少し早いので王都守備隊の方が来るまで研究所の1階の喫茶店で待っていましょうか。」
「あそこ毎日行きましたけど、昼食しかないのでは?」
ドネリーの言葉にキティが言ってくる。
「いえ、あそこは昼の忙しい時間帯が過ぎればお茶も出してくれますよ。」
ドネリーが言う。
「良く知っているわね。」
「・・・ええ、まぁ。
さ、窓際の席が空いているでしょうから、私が外を見ていますので、お二人は気兼ねなく待っていましょう。」
エイミー達が喫茶店に向かうのだった。
・・
・
「アップルパイ、美味しぃ~。」
エイミーが出されたアップルパイを食べながら満面の笑みを作る。
「たまたま有って良かったですね。」
ドネリーが言う。
「美味しいぃ!エイミー殿下、美味しいです!」
キティは幸せそうな顔させて食べている。
「はは、喜んでくれて何よりです。
作って良かったです。」
配膳をしたヒルダが言う。
「「「え?」」」
3人が止まる。
「あのぉ、これ、貴女が作ったのですか?」
キティが聞く。
「はい、私が作りました。
フレデリック様が朝に来られて、研修最終日だから殿下方がこっちに寄るから焼き立てを食べさせてくれと。
材料も用意してくださって、焼く前の状態で待っていました。
実は文官の方々が皆さまの様子をこちらにも教えてくれていたので窯の火も来られる時がちょうど良いように調整していたんですけどね。
時間ピッタリで安心しました。」
ヒルダが苦笑しながら言う。
「・・・へぇ〜・・・」
エイミーが正面に座って、すまし顔を貫いているドネリーをジト目で見ながら頷く。
「それにしてもお若いですね。
私よりも下でしょうか・・・店員さんはおいくつですか?」
キティが聞く。
「12歳です。」
「若い!で、こんなに美味しい物を・・・凄い。」
キティが食べかけのアップルパイとヒルダを交互に見ながら言う。
「あ・・・ひょっとして店員さんはヒルダさんですか?」
エイミーが何かに気が付いて聞く。
「はい、ヒルダ・グレンヴィルです。
あれ?殿下方とは昼に私が配膳した事はありましたが、名乗っていませんでしたよね?」
「ええ、タケオさん・・・キタミザト子爵と話をしていて知っています。
まさか、本当にこんなに若いとは。」
「あ、キタミザト様ですね。
いつもキタミザト様にご助力して頂いているんです。
このアップルパイも相談したらその日のうちに作ってくださって。」
ヒルダがにこやかに言う。
「あー、それはキタミザト子爵らしいわ。
王城でえーっと・・・ラザニアも食べさせて貰いました。」
「あー、あれも食べられたんですね。
お口に合いましたでしょうか。」
「ええ、とっても美味しかったです。
これからも美味しい物を作ってください。」
「はは、ありがとうございます。
でも、相談したらキタミザト様が作ってくれるので、私が言う事ではないんですけど。
殿下の励ましに感謝し、勉強をしていきます。
では、ごゆっくりおくつろぎください。」
ヒルダが一礼をして去っていく。
「エイミー殿下、あの店員さんを知っているんですか?」
キティが聞いてくる。
「知っているわよ。
ある意味、王城に居る王家で一番名が通っているエルヴィス伯爵領の領民かもしれないわ。」
「え?・・それは陛下もですか?」
「お爺さまも知っているし、第3皇子一家にも名を知らしめているわね。」
「凄い店員さんなんですね。」
「ええ、『天才ヒルダ』だからね。」
「凄そうな肩書ですね。」
「あの子の許可が無いと作れない料理が2つあるのよ。
このアップルパイもその1つ。
タケオさんが見出した料理の才能を持つ子よ。」
「あんなに若いのに・・・もう才能が見出されているんですか。」
「これから先、多くの見知らぬ料理を作っていくんでしょうね。」
「はぁ・・・それは・・・ん?なんでそんな子がここで配膳なんてしているですか?」
「しらない。
でも、まぁ・・・本人が楽しそうだから良いんじゃない?」
エイミーが苦笑しながら言うのだった。
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