第2479話 297日目 のんびりしていましょう。(相乗りはしたいよね。)
夕食前のエルヴィス伯爵邸の客間。
アリスと夕霧はリバーシを、ジェシーとエリカがのんびりと将棋をしていた。
「んー・・・エリカさん、どこに攻めようか迷うわ。
どこを攻めても取られそうだし。」
「私としてはあまり攻め込まないで、自分の所の防御を優先的にしていますからね。」
「それに・・・その右にある駒がどうもこっちを狙っている風に感じるわ。」
「ええ、攻め込んできたら一気にこちらからも攻めれるように狙ってはいます。
一応、このやり方で陛下にも勝てています。」
「どのくらい勝っているの?」
「そうですね、5回に2回は。」
「結構、勝てているわね。」
「ですが、レイラ殿下にはこのやり方では勝てません。」
「あら、レイラには通用しないのね。」
「レイラ殿下は常に前進してくるんですよ。
こちらが防戦になって、このやり方を用意する暇をくれません。」
「あの子らしいわ。
でもレイラもそんな戦い方だとあまり勝てそうにないわね。」
「勢いに乗ればかなり早く終わらせますね。
ですが、防戦もしくは駒の取り合いだと・・・負ける事がほとんどなんです。」
「レイラとやる時はその辺を注意した方が良さそうね。
で・・・どこに置こうかしら。」
ジェシーが盤面をみて悩む。
「ジェシー、右下の金を斜め左前に進めるのがお勧めです。」
アリスとリバーシをしている夕霧がボソッと言う。
「「うん?」」
ジェシーとエリカが夕霧に顔を向ける。
「夕霧ちゃんはそう思うの?」
アリスが聞いてくる。
「ん、その金を動かせば、この後のジェシーの行動の意図がエリカに見え、それを押さえに動くと思います。
ちなみに伯爵はこの手を使ってきます。」
夕霧が目線をリバーシに向けながら言う。
「エリカさん、試しに動かすわね。」
「はい。」
ジェシーとエリカが夕霧に言われた駒を動かす。
「「んん~・・・」」
2人が唸る。
「確かに夕霧殿の言う通り、ジェシーさんが上げた金の横から来そうな気配がします。」
「うん、そうね、これならエリカさんに『これから攻めます』という意思表示になりそうな感じがするわ。
・・・どうしようかなぁ、ここで良いかなぁ?もっと違う所に置こうかなぁ・・・ん~・・・」
ジェシーが駒を元に位置に戻して悩む。
「あら?ジェシーお姉様は結局悩んでいますね。」
「ん、それが将棋。
ちなみにそこに伯爵がそうやって金を置く時は攻める気満々。
丁寧に防御をしていくと攻めてくる伯爵の駒を大方取れます。」
「そしてお爺さまの負けになるのね?」
「ん、伯爵は基本守る、終わり頃に急に攻めてくるのが好き。
防ぎきれば私の勝ち、でも極稀に不覚にも私が負ける時がある。
たぶん、エリカの言うレイラの勢いというやつ。
伯爵、なぜか最後に一気に攻めてくる。」
「へぇ、お爺さまもやりますね。
私なんか夕霧ちゃんに勝てませんよ。」
「アリスは右か左の端から攻めてくるのが好き。
なので、アリスとやる時は攻めて来た反対側に駒を集めて防御をしている。」
「え?そう?」
「ん、そう。」
「・・・今度、違う事をしてみようかな?」
アリスが考えながら言う。
「・・・どうしよう、夕霧ちゃんの案以上に良さそうな動きが無い・・・」
ジェシーが苦悩しているのだった。
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ハワース商会の倉庫では。
「よし!王城向けの梱包終わった!
後は送れば終わりだね。」
モニカが手の空いた職人達と物を入れた木箱を積みあげて満足げな顔をさせる。
「おー、モニカ、こっち終わったか。」
「うん、終わったよ、お父さん。
何かあった?」
「あぁ、魔王国向けの出荷はいつだったか?」
「えーっと、待って・・・・・・梱包が4日後だね。
出荷は6日後を予定しているよ。」
モニカが近くに置いていた書類を確認しながら言う。
「そうか、わかった。」
モニカの父親が頷いて、立ち去ろうとする。
「え?何?」
「うん?イーリーのお使いが来てな。
魔王国向けの出荷を聞いてきているんだ。
ローさんの所でワインを樽で注文を受けたとか言ってて、どうせなら一緒の日にキタミザト家に納入した方が良いだろうとな。」
「あー、なら梱包出来次第送れるから、5日後の朝には出来ていると言っておいて。」
モニカが言う。
「おぅ、わかった。」
モニカの父親が返事をして去っていく。
「・・・樽で輸出?
キタミザト様関係なんだろうけど、大口のお客さんが付いたのかな?」
モニカが首を傾げる。
「輸送と言えばラルフさんの所、王都宛に送る物ありそうだし、一緒に送れるか聞いてみようかな?
こういう時、仲間内が居ると便利だよね。
折半出来るかなぁ。
・・・皆、休憩しようか。」
モニカが職人達と休憩する為にその場を後にするのだった。
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