第2474話 積極的な防御。(エルヴィス家の兵士はちょっと特別です。)
「また、3伯爵方およびご主人様の打ち合わせ時にゴドウィン伯爵より『基本的には相手が魔法師部隊を出してきても反撃をするよりも盾で防御しながら支える兵士達への回復を魔法師達にさせる事を主眼に置く』という方針が起案され、残る2伯爵も了承をしたとの事です。
ご主人様からは『対魔王国での戦争、戦闘においては防御を主体とし、こちらから仕掛ける事は余程の余裕がない限り出来ないのが現状』との事です。」
ジーナがメモを読む。
「ふむ・・・軍務局長、魔王国側の4人は消極的だ・・・とは断じれないな。」
アズパール王が腕を組みながら軍務局長に聞く。
「言えませんね・・・これで消極的だという言葉が出るのは、自ら何も見えていないと言っているような物です。
攻撃をしているのが積極的、防御をしているのが消極的と言う輩もおりますが、そう見るのは本当の戦闘をしていないのではないかと思われますね。」
「兵士数で倍以上の戦力、魔法師の数に至っては少なくとも4倍の差はあるのです・・・留まって侵攻を防ぐ方法が防御戦術しかないと判断するのは妥当ですし、3伯爵領軍の兵士達は良く踏みとどまっていると言って良いでしょう。
伯爵達の手腕が良いと言えると思います。」
軍務局長と王都守備隊総長が言う。
「うむ・・・ここに居る面々は大丈夫そうだな。
はぁ・・・うん?ジーナ、続きがあるのか?」
アズパール王が地図の横で紙を持った状態のジーナを不思議がる。
「はい、3伯爵がその後話していて、後日正式に依頼が行くだろうとご主人様が記載した雑談が書いてあります。
この場でお聞きになりますか?」
ジーナが聞いてくる。
「ふむ・・・それは聞かなくても良いかもしれないという事だな?」
「はい、私では、この場で言う事が良いのか、後ほど陛下が見れば良いだけの事なのかの判断が付きません。
内容は先ほど、話した伯爵方とご主人様との戦闘後の打ち合わせ時の雑談です。
紙に書いてありますので、陛下はどちらにしても確認頂けると考えます。」
「ジーナがこの場で迷うと言う事はあまりここに居る面子に対して良くなさそうな印象を与える事だからだな?」
「・・・はい、伯爵方の雑談です。
内容的には先の魔王国の魔法師の威圧攻撃後の現場での魔法師部隊員の状況が書かれています。
それと魔法師専門学院への要望も。
こちらは言っても良いとは思いますが・・・」
ジーナが言い淀む。
「ふむ・・・聞こう、両方共だ。
どちらにしてもゴドウィンから報告は上がって来るだろうしな。
ここに居る面子ぐらいは本音を知っておいた方が良いだろう。
皆もあまり、カリカリせずに聞くようにな。」
アズパール王の言葉に皆が声に出さないが苦笑しながら頷く。
「畏まりました。
続けます。
ゴドウィン伯爵領軍とテンプル伯爵領軍の魔法師は人数に対しての威力が高く、エリート意識が芽生えていたようで、魔王国軍の魔法師の練度、威力、人数を見て、自信喪失とまでは行かないが、顔色をかなり悪くされているようです。
あの威圧攻撃に対抗しなくてはいけない事を認識しての自身の能力との乖離を思わされたようです。」
ジーナが言う。
「・・・だそうだ。
軍務局長。」
アズパール王が軍務局長を見る。
「エリート意識は・・・あるでしょうね。
事実、我が国で適性を持つのは半分、その中で魔力量をある程度持っている事が条件で入学してくる者達です。
選抜されたという意識はあるでしょう。
特に地方では現地採用の兵士と肩を並べます・・・致し方ないと考えております。
ま、そこで研鑽を積む事が出来れば上位である、王都の騎士団や王都守備隊への道が開かれるのでしょうけども。
・・・うん?ジーナ殿、今の話はゴドウィン伯爵とテンプル伯爵ですよね?」
「はい、そう書かれています。」
「エルヴィス伯爵は何と?」
「参加されていません。
たぶんですが・・・エルヴィス伯爵領軍の兵士は魔法師の有無に関係なく、アリス様とご主人様相手に数回にわたり、ボコボコにされていますからエリート意識は少ないはずです。
それとエルヴィス家の兵士長様は回復戦法を実践させています。
魔法師部隊を攻撃力だけとしてではなく、前線兵士の補助をするという、万能部隊として位置付けており、エリートだから動かないではなく、エリートだから何でもすると思わせているかもしれません。
それに・・・エルヴィス家の兵士はアリス様で恐怖を叩き込まれますから、この程度では。」
「うん、ジーナ、最後に本音が出ているな。」
ジーナの説明にアズパール王が呆れながら言う。
「そうでしたか。
余談ですが、エルヴィス家から来た者達が第1騎士団に配属になっていますが、成績が良いと報告を受けています。
どんな訓練でも焦らずに確実に対処していくと、焦らせようとしてもあまり動じないともありました。
早々に小隊長に上がる者が出ると思います。」
軍務局長が言う。
「それは良い事ですね。
スミス様にはその部分はお知らせします。」
ジーナが笑顔で言うのだった。
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