第2470話 295日目 次に向けて皆が検討を始めました。(より良き戦術を見出す為に。)
第二研究所陣地内の焚き火周り。
「ただいま、戻りましたよ。」
夕食の準備をしている所に武雄とアーリスが戻ってくる。
「あ、所長、おかえりなさい。」
「お疲れ様です。」
皆が武雄とアーリスに声をかける。
「はぁ・・・打ち合わせも大変です。」
武雄が空いている所に座りながら呟く。
「どうでしたか?」
マイヤーがダンディ茶を武雄に渡しながら言う。
「ありがとうございます。
要点は2つ、盾を現状より強化された物を購入する、魔法師の採用を増やす。
この2つが議題になりました。」
「まぁ、そうなるでしょうね。」
マイヤーが頷く。
「今、研究室長のトレーシーさんに作って貰っているのとは別に今の物と同じ価格で防御力が高い物を作る事になると思います。
アンダーセンさん、今回の魔法攻撃の再現は出来そうですか?」
武雄がアンダーセンに聞く。
「盾の試験に組み込めます。
この人数で盾1枚に対しての魔法攻撃ですからね。
3・・4名ぐらいで再現は可能かと思います。
ちょっとやり方は戻ってから考えますが、たぶん出来ます。」
アンダーセンが言う。
「了解しました。
なら、設計と試作、試験は出来そうですね。
・・・うん、戻ったらトレーシーさんに作らせようかな。」
武雄が考えながら言う。
「盾の方は本格的に動きそうですね。」
「今も本気ではありますが、今開発中の盾の位置付けは高防御力性能を売りにしてになりますかね。
もう少し廉価版を作らないといけないという事ですね。
もしくは総合的に安くなるような感じに出来ればと思います。」
「所長としては案はあるのですか?」
アンダーセンが聞いてくる。
「まぁ、あると言えばありますが・・・こんなのがあったら便利そうという程度ですから実際に出来るかはわかりません。」
武雄が苦笑しながら言う。
「例えば・・・なんでしょうか?」
「・・・1つとしては分割式の盾ですね。」
「「「分割式?」」」
試験小隊の面々が首を傾げる。
「今の盾の高さは1.5mあります。
それを上段、中段、下段の50cmずつ分割できるようにして、組み立てられるように出来たら面白いかなぁと。
オーガ戦や魔法師戦で凹んだ箇所のみを交換すれば、全体的に見たら安く上がるのではないかと思ったのです。
それに分割した方を移動時の小型盾と使えると用途が広がるのではないかともね。」
武雄が説明する。
「「「ん~・・・」」」
試験小隊の面々が首を捻る。
「ですが、上段、中段、下段の繋ぎ目の防御力が無くなるので、そこの補強をどうするのかを考えないといけないんですけどね。」
「「「ですね。」」」
「他だと・・・合板を使って、入れ替えられる盾にするという手もありそうですよね。
合板は繊維を交差させる事により強度が出せますし、最初から厚さを調整して作れます。
なので、均一な品質の板を作りやすく、大きさもある程度指定できるという事もありますよね。」
「「「ん~・・・合板?」」」
「まぁ・・・色々と作って、皆さんに試験して貰います。
アンダーセンさん、その際はよろしくお願いしますね。」
「はい、わかりました。
ですが、些かトレーシーが所長の提案に付いて行けるかが心配ではありますね。」
「そこは・・・何とかして貰いますよ。」
武雄が笑顔で言うのだが、皆が一応に「何とかってなんだ?」と思うのだった。
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魔王国 パーニ伯爵領の関にある大きいテント。
ヴァレーリとアンナローロは一緒に来た王軍の幹部と会議をしていた。
「ということは、あの魔法はベッリの所の独自魔法という事なのか。」
ヴァレーリが腕を組んで今まで説明していた第5軍の兵士に向かって言う。
「はい、王軍第5軍であの魔法を撃てる者は居ないと考えられます。
複数人を使えば、再現自体は出来ます。
ですが、先ほども説明しましたが、あの魔法は個人で放っています、そして発動させた量も異常です。
第5軍の者として陛下にお伝えするのは恥ずかしいのですが・・・ベッリ男爵領軍は技量が違うと感じました。」
第5軍の兵士が少し俯きながら言う。
「下を向くな。
お前らが日頃の鍛錬に手を抜いていないのは我も知っている。
部隊の練度の維持と向上をしているんだ、下を向く必要はない!」
「はっ!ありがとうございます。
報告は以上です。」
第5軍の兵士が席に座る。
「とは言う物のあの魔法は是非とも王軍に欲しいな。
『くれ』と言って教えてくれるような物でもなさそうだ・・・が、種族がリッチの部隊とは言え魔力量には限度があるはずだ。
皆が皆、無尽蔵にある訳ではない。」
「そうですね。
ですが、あの魔法の行使後も魔力切れを起こした者は見受けられませんでした。
何かしらの魔法具を使っているのでしょうか。」
アンナローロがヴァレーリの言葉に答える。
「魔法師のベッリとドワーフのボナは領地が隣同士だから何かしら共同で作っている可能性があるな。
一時的に魔力量を増やす魔法具か、酒の樽のように魔力を溜めて置ける魔法具を作ったのかもしれないな。」
「そんな事出来るのでしょうか?」
「出来る出来ないではなく、個人の魔力量はバラツキがあるはずなのに、約1000名の魔法師が無尽蔵に魔法を発動させるという、あり得ない行動を取ったという事の説明には先の2つが説明が楽だという事だ。
まぁ、それは交渉で聞き出すか、調査するしかないんだが。
今は、第5軍で同様な戦闘が出来るかの検討を始めた方が良さそうだな。
まったく同じではないにしても、あのぐらいの威力を絶え間なく当てられるのであれば、対城門戦で使える気がする。」
「そうですね。
第5軍には今回の戦闘のような戦闘方法の検討をお願いします。」
「はっ!了解しました。」
ヴァレーリ達は会議を進めるのだった。
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