第2466話 調査中です。(アンナローロの精霊が登場。)
武雄達はブリザドの着弾している範囲の端に到着していた。
前の盾を右にずらし、シールドで前を見えるようにしていた。
着弾地点が1mもない所まで近寄ったので、着弾音とそれに伴う地響き、そして泥と氷の破片が吹き飛んでいる。
「「「「・・・」」」」
流石に元王都守備隊のベテラン達は恐慌にもならず、震えもせず、声を荒げず、黙って集中して盾を維持している。
「よし!・・・盾の端を用意して・・・真ん中の下から相手の方に向けてやりますか・・・」
誰も返事をしない中、武雄が黙々と用意して、ベッリ男爵領軍の魔法攻撃力の測定を開始するのだった。
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第二研究所陣地内打ち合わせ室の特殊コンテナ搭載馬車の上のテントにて。
「あー、タケオ、頑張ってる。」
「そうですね。」
「ぎゅ♪」
「・・・」
スコープを覗いているビエラとマイヤー、お菓子を頬張っているリーザとボーッとしながら戦場を見ている初雪が集まっていた。
「怪我、なさそう。」
「ええ、無事に戻って来て頂ければと思います。
ベイノン達も精神的に辛いでしょうからね。
戻って来たら労わないといけません。」
「皆、頑張ってる!」
ビエラが言う。
「ぎゅ?」
「あー?マイヤー、あの魔法、強い?」
「ええ、私達人間種からしたらかなりのものでしょう。
ビエラ殿は出来ますか?」
「んー・・・もっと大きい氷降らすの出来る、よ。
でも・・・爆発はしない。
あれはタケオのと同じ。
当たって爆発してる。」
ビエラが指さしながら言う。
「・・・正確には爆発ではないようですね。
所長の小銃改は凝縮した氷を飛ばしていますが、その中に割れた瞬間に爆発する魔法が入っています。
なので、所長の小銃改は氷の弾丸が当たると氷が割れて火が上がります。
あそこの魔法は氷は割れても火が上がっていません。
所長の考えとは少し違う考えで作られた魔法でしょう、見た感じ四散していますから・・・風の魔法が入っていそうですね。」
「風?」
「ぎゅ?」
ビエラとリーザが首を傾げる。
「割れた氷に内側から風を暴発させて撒く感じでしょうか。
私の想像では所長の爆発を入れた方が威力は高そうではありますが、あのやり方だと、建物に引火せずに使用できる・・・建物攻撃用にも使えそうです。」
「なるほろね~。」
「ぎゅ~。」
ビエラとリーザが頷く。
「さて・・・所長達はっと・・・あ、所長が後ろに合図を送っていますね。
後退するようですよ。
まずは一安心ですね。」
「タケオ、皆、無事!」
「ぎゅ!」
「エルヴィス伯爵領軍の所まで無事に戻ってきてくださいよ。」
「・・・タケオ達後退を開始っと。」
マイヤー達が見守るのだった。
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魔王国 パーニ伯爵領の関にある櫓の上。
「・・・突っ込まずに近付いて、戻って行っているが?」
「何しに来たんですかね?」
望遠鏡を見ているヴァレーリが呟き、アンナローロが呆れていた。
「度胸付けというわけでもあるまい。
キタミザト殿はそういった意味のない事はしないだろう。」
「意味のある接近という事ですね?」
「魔法相手に近寄っただけでわかる物なのか?」
「さぁ・・・聞いてみますか?」
「うん?アンナローロの所の執事か?」
「はい、今は人目もありませんし。
ガミジン。」
アンナローロが言うと。
馬頭の老執事が実体化する。
「お呼びにより実体化致しました。
ダニエラ様、お久しぶりでございます。」
「ああ、久しいな。
たまには散歩しないと歩けなくなるぞ?
それと、うちのタローマティを鍛えてくれ。」
「いえいえ、私のような老執事はお役目もありませんのでね、部屋に籠って読書が丁度良いのですよ。
それにタローマティも随分とメイド姿が似合っております、仕事はしっかりとやられておるように見受けられますから、私の指導は必要ないでしょう。
それで、アンナローロ様、お呼びで参りましたが何用で・・・というよりもあのキタミザト様の奇行でございますね?」
「奇行というと怒られそうですけどね。
近寄ったら魔法の事がわかるなんてあるのでしょうか?」
「ふむ・・・余程の経験者であれば可能でしょうな。
ですが、キタミザト様はそういった方ではないでしょう。
となると、近づいて何かしらあの魔法に試験をしたと考えるのがよろしいでしょう。」
ガミジンが言う。
「なるほど、威力を知る為に近寄って、何か試験をして、成果があったから後方に下がり始めたという事か。」
「はい、この老執事はそう思います。」
「どういう基準かはわからないですが、何か試験をしたんでしょうね。
ガミジン、ありがとう。」
「はい、下がらせて頂きます。
そろそろロバに餌を与えないといけないので。
では、失礼します。」
ガミジンが姿を消す。
「・・・アンナローロの精霊も変わっているよな。」
ヴァレーリがガミジンが居た場所を見ながら言う。
「ダニエラ様程ぶっ飛んではいませんけどね。
うちのは引退した老執事という設定であまり働かない事が条件でしたし。」
「良く分からん契約だな。」
「本人曰く、のんびりしたいんだそうです。
まぁ、それはそれとしてキタミザト殿はどんな試験をしたんでしょうかね?」
「さてな・・・今度来た時に聞いてみるか。」
「そうですね。」
ヴァレーリとアンナローロが頷くのだった。
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