第2464話 鼓笛隊が居る?(始まります。)
タンッタンッタンッタンッタンッタンッ
ベッリ男爵領軍から一定の間隔でドラムを叩く音が聞こえる。
武雄達は先ほどと同じ位置で待っているのだが、構成として、武雄の前左右に2名、後ろ左右に2名で前の2人が盾を前に構え、後ろ2名が盾を持ち上げて皆の屋根役をしていた。
「・・・所長、なーんか音が聞こえます。
これって何ですか?」
盾を構えるオールストンが聞いてくる
「あ、私の幻聴じゃないんですね。
ドラムか太鼓でも叩いているんでしょうね。」
「銅鑼とは違う感じですね。」
「筒のような物に皮を張って叩いて音を出す楽器ですね。
どこでもある楽器ではありますが・・・音が遠くまで聞こえるという事は皮の張る力が結構かかっているのと筒自体が硬く、音が響きやすい材質なんでしょうね。」
「楽器・・・は、後ほどで良いですけど。
この一定に鳴らしている意味は何でしょうか?」
「前進する際のタイミングを合わせる方法ですね。
掛け声を音にしたという所でしょうか。
1000名の歩調を合わすのに音を利用するというのは合理的です。」
「なるほど。」
オールストンが頷く。
「・・・これ魔法師に取ってはやりやすいかもしれませんね。」
アーリスが言ってくる。
「うん?説明をお願いします。」
武雄が聞き返す。
「皆の魔法を放つタイミングを合わせるのに楽そうです。
魔法師部隊ではそもそも人数が少ないというのはありますが、最初に放つ時は数を数えて・・・3、2、1のように合わせて放った後は皆の感覚で連続で放ちます。
もしくは指揮を執る者が毎回、号令をして放つのが一般的です。
それを音を鳴らして置けば、それに合わせて放てるという事が出来ると思います。」
アーリスが言う。
「省力訓練方法を考え付いたアーリスらしい。
で、合わせるなんて出来るのか?」
ベイノンが聞いてくる。
「ベイノンさん、それは出来ますよ。
少なくとも一定のリズム音で行進する事を向こうはしています。
これを魔法を放つのに使えば良いのです。
人は一定のリズムに無意識に合わせてしまう物です。
・・・例えば1秒間に2回手を叩き、その叩く音に合わせて歩いていたとします。
しばらくしたら、手を叩くのを止め、歩く方は2回の時の歩調で歩いて貰います、そして叩くのを1秒間に3回に変えて途中から鳴らす。
余程の強い意志がなければ3回に合わせて歩いてしまうでしょう。
人は、無意識に周りの音に合わせて動いていると言えます。」
武雄が言う。
「今後、何か文章にしてみます。」
アーリスが言う。
「所長、距離が350になりました。
スコープでの監視を終えます。」
スコープでベッリ男爵領軍を見ていたブレアが言う。
「了解。
ん?・・・音が止んだ。
総員警戒開始。」
「「「「はっ!」」」」
武雄の言葉にベテラン4人がすぐに魔法を展開し、盾の強化を始める。
「パナ、全員にケアを。」
「わかりました。」
チビパナが各々にケアをかけて行く。
「盾の表面に私がシールドで縦3横2列の2枚重ねでおいておきます。
あまり硬くはないですが、ある程度威力を低減出来ると思います。」
「「「「ありがとうございます!」」」」
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ
ベッリ男爵領軍から小刻みな音が聞こえてくる。
「・・・数数えてくださいね。
1、2、3、4、5・・・1秒間に?」
「約3回ですね。」
「はぁ・・・この間隔で魔法がね・・・
1秒間に3発の魔法を飛ばしてくるというのは珍しいんですよね?」
「流石に・・・これは王都守備隊でも。」
「はぁ・・・王都への出張面倒そうだなぁ。」
武雄が呆れながら言う。
「はは、説明大変そうですね。
王都守備隊と軍務局に良い報告が出来そうです。」
「読む相手が青ざめるのが良い報告書というのなら、私は毎回陛下に上げていますけどね。」
武雄が苦笑しながら言う。
「良い部下と言う事ですね!」
「ええ、嘘偽りのない、ちょっと報告する内容を渋って・・・精査した内容を見せているだけですから。」
「所長のやっている事を全部、陛下に言ったら寝込んじゃいそうですしね。」
「あらあら、違いますよ。
まだ準備段階の事が多いから報告していないだけで、今は調整中というだけです。
私が意図して見せていないわけではありません。
まぁ、調整期間は未定ですがね。」
「「「ははは、そうですね。」」」
「所長、敵魔法師達が魔法を展開し始めました。
来ます!」
ブレアが言う。
と225名の横から1秒間に3発の魔法が連続的に真上に発動される。
「・・・あー・・・これに似たのを前に城門前で体感しましたっけ。」
武雄が隙間から打ち上げられるのを見てそんな事を呟く。
「はいはい、所長、隙間埋めるので盾を重ねますからね。」
後ろの2人が盾を前の盾の上に置いて隙間を無くす行動を取る。
「シールド、発動。」
武雄が左手を盾にかざしながら呟くのだった。
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