第2457話 雨で皆はマッタリです。(相手が動かないのは気味が悪い。)
第二研究所陣地内の焚き火周り。
「雨だねー。」
「雨ですねぇ。」
「ぎゅー。」
ビエラと武雄、リーザは大き目の天幕が張られた焚き火の所で外を眺めながらボーっとしていた。
アズパール王国では雨天時のみ焚き火の所に天幕を張るようで、今日は雨なので張られていた。
「皆は?」
「皆さんは打ち合わせ室で今日までの反省と今後の動きや訓練内容の確認をしていますよ。
マイヤーさんと初雪は上のテントの所で監視をしています。」
「ふーん・・・私、寝る。
タケオ、シート、取って。」
「はいはい。」
タケオからシートを貰ったビエラがその場に敷いてゴロンと横になる。
「ぎゅ?・・・ぎゅ。」
リーザもビエラの所に行って一緒に寝る。
「雨には当たらないですけど・・・
部屋に行って寝て良いんですよ?」
「あっち、本気で寝ちゃう、ここで良い。」
「ぎゅ。」
武雄の問いかけにビエラとリーザが言う。
「お腹に何か掛けておきなさい。
・・・ベストで良いか。」
武雄がビエラとリーザに被るように防刃ベストをかける。
「重い。」
「ナイフとか付いているしね。
今度関の方に行った際にごろ寝用のタオルを買って来ましょうか。」
「だねー。」
「ぎゅー♪」
「リーザ、クッションが良い、柔らかいの。」
「わかりました。
今度買いに行きましょう。」
武雄達がのほほんとしていると。
「所長、定時観察終わりました。」
マイヤーと初雪が焚き火の所にやって来る。
「あー、マイヤー。」
「ぎゅー。」
ビエラとリーザはごろ寝しながら手を振っている。
「おや、ビエラ殿とリーザ殿はお昼寝ですか。
まぁ、今日は雨ですので、何もありませんでしょう。」
マイヤーがそう言いながら武雄の隣に座り、初雪は武雄を挟んでマイヤーの逆側に座る。
「・・・え?なに?」
挟まれた武雄が左右を見る。
「報告として魔王国の兵士に移動等の動きは今の所、ありません。」
「オーガ戦から2日、オーガを追加するぐらいこちらを敵視している領主にしては・・・動きが無い事が逆に怖いですね。」
「ええ、オーガのみとはいえ、対アズパール王国ではそれなりに被害が出せる戦力でした。
それをいとも簡単に所長が打ち破ったのですが。」
「元王都守備隊員がほとんどなんですからそのぐらい普通でしょ。」
「いや、私らの古巣でももう少し人員と時間はかかりますがね。
まぁ、アズパール王国の事は良いとして、どう客観的に見ても惨敗だったわけです。」
「堪え性のない領主だと思いましたが、意外と堪えていますね。」
「そうなんですよね・・・オーガを出す日程が早く、意味のない追加をする領主が惨敗して何も動かないというのが・・・何かあったのでしょうか?」
「非公式とはいえ、彼らからしてみれば歴代最強の国王が視察に来ているんですよね?
ダニエラさんは良い治政をしていますが、本質は武官です。
戦闘や作戦行動においての評価を間違えないと考えるのが良いと思います。
それに来ている5000名の内、新人は多くて3000名、あとの2000名は各軍の幹部か精鋭でしょう。」
「まぁ、王が来るのならどこかの精鋭部隊は付けるでしょうね。
国王とその周りの精鋭部隊が見ている前で惨敗ですか。
いやはや・・・可哀想ですね。」
「私達に置き換えれば、陛下と王都守備隊、第1騎士団が見守る中、ある程度の戦果を上げられると豪語していたにもかかわらず、戦闘で相手の負傷者なしという結果ですね。」
「それは・・・泣きたくなりますね。
で、あれば、なおの事、この2日何もないのが違和感がありますね。
即日か翌日にはオーガの数を増して攻撃してきても良さそうですが。」
「ダニエラさん達が何か言うとは思いませんが、相当の重荷があると思いますよ。
それにしても今日も動きなし・・・こっちの伯爵領軍の兵士の士気が下がりそうですね。」
「戦死者は出ましたが、完勝に近い内容でしたからね。
兵士達が浮ついている感は否めません。
・・・エルヴィス伯爵領軍はしっかりしていますね。
昨日の小競り合いでも死者なしで堅実に向こうと戦闘をしていますし。」
「・・・マイヤーさん的に緩んでいるのは?」
「テンプル伯爵領軍でしょう。
身内から戦死者が出たので躍起になっているとも捉えられますが・・・些か前に出て行こうとしているように思えます。
ゴドウィン伯爵領軍の兵士が崩れないように支えているように感じます。」
「意外と・・・とは言えないでしょうね。
仲間がやられたんです・・・多少攻勢に出るくらいなら止められないでしょう。
目に余るようなら私の方から伯爵達に注意をするしかないですかね。」
「嫌な役回りですね。」
「王立の部署を任されている時点で領地持ちとは別系統の指揮命令権ですからね。
陛下から辺境伯にも意見できる権限を渡されています。
まぁ、助言ですけどね。
・・・皆が皆、同じ方向を見れば良いという物ではないでしょう。
一部隊、一伯爵領軍の行いから全体が崩壊したら意味はありません。」
「そうですね。
少し、他の伯爵領軍の様子は気にした方が良さそうですね。
そういえば・・・所長、監視で気になった事があるのですが。」
「うん?マイヤーさんが気になるのであれば聞きますよ。」
武雄が尋ねるのだった。
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