第2454話 エルヴィス家の者達は異才な者達の集まりなのか?(スミスは順調に施政者になっていくようです。)
バッセル男爵邸の客間。
スミスとジーナは報告を終え、帰宅していったのだが、残されたバッセルとボールドの間には少し重い空気が流れていた。
「・・・騎士団から死者1名か・・・」
バッセルがソファに座り天井を見上げながら呟く。
「スミス殿もキタミザト殿からの簡易報告のみという事で誰がとは知らされていないようですね。
それに本来は陛下に報告すれば良いのに、わざわざ知らせに来てくれたんです。
いきなりバッセル殿が陛下に言われて動揺しないようにと思っての事でしょう。」
ボールドがバッセルの向かいに座り、落ち着いた態度で言う。
「・・・本来は終わってから知らされるであろう事柄を・・・ですからね。
当面は私もボールド殿もこの件では知らぬ存ぜぬを決めておくしかないでしょう。
・・・騎士団長で戦場に居た時と今も気持ちは変わっていないと思っていましたが、数か月でも離れると感じる事があるものです。」
バッセルがぶっきらぼうに言う。
「このような事態は常に頭には入れて、覚悟をして職務を遂行していましたけどね。
人間とは弱い物ですね。
戦場から離れて仕事をしているというのが居た堪れなくなります。」
「ああ・・・歯がゆい物です・・・」
バッセルとボールドがため息を付く。
「・・・それにしても我らが同期の出世頭は凄い事をまたしてくれていますね。」
ボールドが気分を変える為に話題を変えてくる。
「出来過ぎですよ。
この戦果を出すのが子爵なんですかね?
周りを見ても同じ子爵で出来そうなのは居ませんけど。」
「それは同感ですね。
伯爵になっている方々はさぞや凄い事が出来るのでしょう。」
バッセルとボールドが言う。
「おっと、これは私達の元雇い主に悪いですかね?」
「私達の元主達も施政者として立派ではありますが・・・些か、我らが同期が異才過ぎますかね。
あれもこれもとやっていて、ほとんどの事で成果を出しているんですよね。
今の伯爵達では成果が違い過ぎて、発言力は子爵のキタミザト殿の方があるでしょう。
もし領地持ちだったらどうなっていた事やら。」
「いや、領地持ちでないからここまでの成果なのではないですかね?
むしろ褒められるべきは我らが同期が自由に動けるように手配しているエルヴィス伯爵殿でしょう。」
「確かに・・・それをあのスミス殿が引き継ぐのか。」
「振り回されそうではありますね。
ま、キタミザト殿の周りも秀才が揃っていますし、スミス殿の周りにも秀才が集まって来るでしょうね。」
「そこはどうなんでしょうかね・・・
エルヴィス伯爵領が発展すれば自ずと人材が集まるでしょうけども・・・優秀な人材のみが来るわけではありませんからね。」
「優秀か、凡才かの見極めが出来なければいけないという事でしょうか。」
「ええ、それは武官も文官も同じです。
採用を担当する者が見極められるかという事なんですけどね。」
「まずは、そこに優秀な者が配置できないといけないという事ですか。」
「どうなることやら・・・」
バッセルとボールドが雑談を始めるのだった。
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寄宿舎への帰り道。
「・・・元部下が・・・というのは辛いものだよね?」
「つい数か月前までは一緒に仕事をしていましたから。
思う事も多いと思います。」
スミスの問いかけにジーナが答える。
「そうだろうね・・・でも、騎士団長まで登った方達だからなぁ。
戦闘で部下が亡くなる事も想定はしているはずだよね。
普通の兵士達に比べれば、冷静なのかな?」
「そうですね・・・指揮をする、判断をする者は部下の死に対して動揺はあまりされないでしょうが・・・
私も知り合いが死ぬような戦闘を経験した事がありませんので、何とも言えません。
スミス様は例のアリス様の名が轟いた戦闘では、何か思われましたか?」
「僕は留守番だったからなぁ。
アリスお姉様は行く時と帰って来た時が違い過ぎてね。
武官も何名も亡くなったけど・・・何も感じなかったかなぁ。
『死んだのかぁ』って・・・僕は薄情なのかな?」
「そうではないでしょう。
日常で会われていない方が死んだ場合、哀しい気持ちにはなっても、悲しむ事はありません。
どこか他人事のように聞こえるのではないでしょうか。
特に身内のアリス様は元気に帰ってきましたから、余計に戦死者に感情が向かなかったのだと思います。
むしろ、アリス様の方が色々と考えるのではないでしょうか。
日常的に会わなくとも顔を合わせ一緒に戦った方々ですから。」
ジーナが即答する。
「・・・そうですね。
アリスお姉様は僕が不安にならないようにしてくれていたのかも知れませんね。
ちなみに僕としては、すぐにお爺さまが戻って来たり、ジェシーお姉様とレイラお姉様がすぐに帰省して来た事の方が驚いたんですけどね?」
「お爺さまとアリスお姉様が2人に手紙を送ったらどちらも予想より早く帰って来たんですよ。
『ただいま~』って楽しそうに帰って来るんです。」
「あー・・・容易に想像できます。」
「今にして思えば、あの日程はおかしいんですよ・・・うちの姉達は行動力が違うんです。
もし王都に全貴族集合となった時、姉達はどの貴族より早く集合するだろうと思います。」
「そうですね・・・ついでにご主人様もその横に居そうですね。」
「あー・・・確かに。
行くと言ったら1時間後には出立しそうだね。」
スミスが呆れながら頷くのだった。
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