第2450話 292日目 魔王国として侮れられないように。(一旦、通常に戻そう。)
「陛下?」
ヴァレーリがテントの様子を見ていると道の奥から別の集団がやって来て声をかけてくる。
アンナローロ以下、護衛達が声の方に頭を下げる。
「ベッリか。」
「はっ!・・・なぜこのような場所に?」
「うん?・・・怒号が向こうから聞こえるのでな。
入るタイミングを見ている。」
ヴァレーリが顎でテントを示すとベッリ男爵が顔をテントに向ける。
「あー・・・惨敗でしたね。」
「ベッリもそう見るか。」
「あの戦闘を見て惜敗だなんて言えませんよ。
手痛くやられたと評価するしかないと思いますが。」
「だな、あの2人の溜飲を下げるのに魔王国が強い事を示さなければならん。
それにはベッリの協力が必要だが・・・我としてはアズパール王国に多くの被害を出させたくはないんだよなぁ。
多くの被害が出れば泥沼の戦闘に発展するかもしれん。あの攻撃が陣地内に炸裂すれば、流石に王軍が出なくてはならんだろう。
その事態は避けたい。
ベッリ、アズパール王国軍に被害を出さずに戦勝気分・・・向こうの士気だけを下げられないか?」
「陛下、難しい注文をされますね・・・まぁ、出来なくはないでしょう。」
ベッリが言う。
「やりようはあるという事か。」
「ええ、要は実力差を見せつければ良いのですよね?」
「まぁ、そうなるな。
ベッリの所は魔法師1000名か・・・圧倒的な魔法攻撃を敵陣地手前に放つか?」
「はい、中級で威力もある物を敵前面に撒くと萎縮すると思います。
確か、アズパール王国の魔法師は少ないはずですし、良くて・・・200か300名程度でしょう。
ある程度の範囲魔法を皆で放てば・・・可能だと思います。」
「当てるなよ?
流石にキタミザト殿がブチ切れかねん。」
「あー、昨日陛下に雑談をしに行った時に言っていた方ですね。」
「あぁ、今日のファロンの方で相対してた部隊だよ。」
「なるほど、それは危険ですね。
それに私としてもコショウの輸出先ですし、穏便に済ませましょう。
攻撃位置が50mくらい離れていれば問題ないでしょう。
それに威力というより、派手で見栄えを良くして、少し近づいて発動されるだけで士気は下がるでしょうし。」
「・・・確かに委縮させるのには良いのかもしれないが。
ちなみに我からは何も提案も意見もしないからな。
お前達領主のみで発案した風にしてくれよ。
出来れば、2、3日後が望ましいと我は思うが。」
「わかっておりますよ。
戦勝気分に浸っていて、気持ちが緩み始める時を狙うのですね?
精神的にキツイでしょうね。
まぁ、魔法師の実力を見せましょう。」
ベッリが頷くのだった。
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第二研究所陣地内の湯浴み場。
試験小隊の面々が焚き火周りで反省会をしているので、武雄はお風呂のお湯張りをした後、
打ち合わせ室の特殊コンテナ搭載馬車の上のテントの中でスコープを使って各陣地を見ている。
「~♪」
「タケオ、周囲に問題はありません。
魔物も魔王国の兵士もいないです。」
初雪が報告してくる。
「はい、ご苦労様です。
今日は慌ただしかったですね。」
「はい、それとエルヴィス伯爵領側の関とこの地で新たにスライム通路が完成しました。
ユウギリやシグレのスライムが来て報告してくれています。
改めて向こうの関に異常はありません。」
「はい、わかりました。」
「それと鷲達の休憩所もスライム達が綺麗にしているようです。」
「え?休憩所?」
「はい、関の兵士方が箱のような物を木の上に置いてくれて、毎晩、干し肉を煮だして、柔らかくした餌をくれるようです。
こちらも問題はないようです。」
「それは助かりますね。
エルヴィスさんには感謝を伝えておきましょうかね。
今日はスライム達もいっぱい吸収出来ましたね。」
「はい、皆、かなり吸収したようです。
動きが機敏になっていました。」
「なっていたの?わからなかったですけども。」
「はい、なっていました。
タケオ、今後、今日のような皆で吸収の機会はあるのでしょうか?」
「オーガが来ればね。
家畜同然の物だからこっちに持って来ましたけど、流石に兵士が来た際は亡骸をこっちに持ってこれないでしょうね。
テンプル伯爵の方のオーガは向こうで埋めてしまいましたから、こっちに欲しいと言ってもねぇ。
そんなに必要なのかと問われるとなぜ必要かを言わないといけないですし・・・
ま、当分はないと考えていてください。」
「わかりました。
タケオ、仕事ないですか?」
「ないですよ。
周囲の確認をしてくれるだけでも初雪達は仕事をしてくれていますからね。
それに今日は何回も警戒と偵察をして貰っています。
今はゆっくりとしていなさい。」
「むぅ・・・わかりました。
ビエラが暇そうにしているので、将棋でもしてきます。」
「ええ、してきなさい。
あ、それとマイヤーさんとビエラにもう少ししたら湯浴み出来るともね。」
「はい。」
初雪が立ち上がり、ビエラの方に行くのだった。
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