第2443話 戦闘終了。(エルヴィス伯爵も警戒対象にしよう。)
オーガの残る1体が倒された瞬間。
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」
エルヴィス伯爵軍 最前列の盾付近から歓声が上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「あー・・・疲れたぁ・・・」
「ああ・・・」
「終わったぁ・・・」
子供達が倒したオーガの横にへたり込む。
「よし!
子供達はアーキンとブルックが様子を見ろ!
残りは倒したオーガが生きていないか確認を実施だ!
エルヴィス家の方々が回収の準備をして直にくる。
すぐに終わらせるぞ!」
「「「はい!」」」
ベテラン達が動き出す。
「ケード!コーエン!アニータ!ミルコ!
集合!まだ戦闘の終結宣言は出てない!座るな!立て!」
ブルックが子供達を立たせようと号令をする。
「「「「はいっ!」」」」
4人が歯を食いしばって立ち上がる。
「よーし、こっちに集合!足元に注意しろ!」
アーキンが子供達に言う。
「はぁ・・・追加はなさそうですね。
さ、マイヤーさんに聞きますかね。」
武雄はそう言って試験小隊の陣地の方を向いて、両腕を広げて、頭の上でクロスし、また広げてと、大きく腕を振り始める。
パン。
コンテナの上からファイアが上に打ち出され、直上付近で破裂する。
「うん、今の所、追加の動きは無しと。」
「タケオ、終わり?」
ビエラが聞いてくる。
「ええ、終わりですね。
今、皆さんが死亡確認をしていますから。
終わったら陣地に戻って作業ですね。」
「解体だー。
アンダーセンがする?」
「ええ、試験小隊がしますよ。
私はエルヴィスさんの所に行って来ますが、ビエラはどうします?」
「あー・・・マイヤーの所行って、リーザとハツユキと話してる。」
「わかりました。
休憩していてくださいね。」
「はーい。」
ビエラが頷くのだった。
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エルヴィス伯爵領軍陣内の大きいテント。
「無事終わったの。」
エルヴィス爺さんが同席している騎士団長のハロルドに言う。
「ええ、それにしても10体と5体。
試験小隊十数名で対処し終わるのですから凄い物です。」
「ふむ、半数以上が王都守備隊じゃからの。
タケオとビエラ殿もおるんじゃ、このぐらいはするのじゃろう。」
「まぁ、キタミザト様も異常ですけどね。
結局、えーっと・・・キタミザト様が6体、ビエラ殿が5体、試験小隊が4体ですね。」
「うむ。
所要時間は・・・戦闘だけなら10分程度かの?」
「どこからが戦闘かにもよりますが・・・まぁ、直に戦闘をしたのはそのぐらいですか。」
「簡単に終わらせたが、わしらだけならもっと大変じゃったのぉ。
オーガ10体を倒すのにどれほどの時間と死傷者が出ていたことか・・・はぁ・・・まったく、タケオ達が参戦してくれて良かったの。」
「ええ、そうですね。
私達だけでなく、3貴族軍全体の負担が減っているのは確かですね。」
「うむ、タケオにはロバートの方が終わってから報告に来るように言っておくかの。
向こうの状況はどうなっておる?」
「まだ、少し時間はかかりそうではありますが、順調に削っているとの事です。
死者はないと。」
「うむ、それでよい。
タケオだからこんな結果になったが、わしらはわしらの戦い方で被害を少なくしていかなくてはな。
派手な戦闘結果はわしらにはいらんよ。」
「はい、今の言葉、両軍の騎士団に伝え、伯爵様方にも伝えます。」
騎士団長が頷くのだった。
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魔王国 パーニ伯爵領の関にある櫓の上。
ヴァレーリとアンナローロは机と椅子、お菓子を持ち出して、お気楽観戦をし出していた。
「あー・・・こっちが本来の慣例の戦争の方法なんだろうな。」
ヴァレーリがパーニ伯爵側の戦闘を遠目で見ながら呟く。
「ですが・・・ダニエラ様、囲まれていますよ?」
アンナローロが望遠鏡で見ながら言う。
「元々、相手を壊滅させないような戦力で、死傷者を出せれば良いという、使い捨てる戦力だからな。
囲まれれば終わりだろうよ。
だが、本来、オーガが10体であれば、囲まれたとしてもそれなりの被害を出せるはずだったんだがな。」
「まぁ・・・ファロン子爵殿は気の毒でしたね。
相手がキタミザト殿ですし。」
「ああ、それにエルヴィス伯爵殿もいつでも動けるように騎士団程度は動員していただろう。
だが、敢えて出さず、何かあった際に即応出来るようにしているはずだ。
まったく・・・キタミザト殿に花を持たせるというか、アズパール王国内での話題を全部キタミザト殿に渡しながらも抜け目がないようにしているんだろうな。」
「ダニエラ様はそう思いますか?」
「ああ、多かれ少なかれ貴族というのは評価を気にする。
戦場で他の領主が戦果を挙げようとしているのを見ているだけでは自身の評価が下がると思うだろう。
それにエルヴィス伯爵領軍の兵士達にとっては、他の貴族領軍が戦っているのを自分達は見ているだけという状況はみじめと思うかもしれないな。
エルヴィス伯爵は自身も部下も欲を抑え込めているという証拠だ。
ファロンとは格が違うな。」
「そうですね。
対エルヴィス伯爵領軍は手強いという認識をしないといけないという事ですね。」
「ああ、やる気になれば我らは勝てるさ。
だが、キタミザト殿が言っていた『我々は負ける、が、相応以上に犠牲を払わせる』というのは、エルヴィス伯爵領軍を見ていての発言だろうな。
困ったなぁ・・・本当に相当の被害が出そうだ。」
「我々はキタミザト殿だけを見ていましたが、対峙している領主達も手強いと他の王軍に伝えないといけませんね。」
アンナローロが頷くのだった。
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