第2441話 もう少し休憩です。(食欲は緊張を和らげます・・・たぶん。)
エルヴィス伯爵軍 最前列の盾から魔王国側に50m程度行った所にて。
「すぅ・・・はぁ・・・」
「ふぅ・・・」
「「・・・」」
子供達4人が鞘に収めている剣の柄を握ったり放したりして明らかに緊張をしている。
その他の大人達はと言うと。
「所長・・・すみませんが、もう一度割り振りの変更案を言って頂けますか?」
アンダーセンが額に手をやりながら武雄に聞き返してくる。
「・・・ですから、私が1体、ビエラが1体、試験小隊の2班で1体ずつの2体、アーキンさんとブルックさんで1体。」
「「ご遠慮いたします!」」
ブルックとアーキンが言う。
「結婚するならそのぐらいの障害があるのでは?」
「そんな障害があってたまりますか。
それも物理的な障害って・・・所長、私達は大人しく、子供達の補助をします!」
ブルックが言う。
「うちの娘を貰いたくば、オーガの1体でも狩って武勇を」
「うちの親はアーキンを受け入れていますが?」
「あれ?そういう定番な条件があるかと思ったのですけどね。
なんだ~、出されなかったのかぁ。」
武雄が笑いながらブルックを見る。
「ないですよ。
まぁ、そういう事を言い出す親はいるでしょうけど、流石にオーガはないですよ。
せめてゴブリンぐらいじゃないですか?」
「えー?・・・ゴブリンの方がちょろちょろ動いて面倒じゃないですか?
オーガなんて真っ直ぐ歩いてくるだけなんですからやりやすいでしょう。」
武雄が軽く考えながら言う。
「所長の個人的見解が一般とは乖離しているのはわかりました。
所長とビエラ殿が1体ずつ、試験小隊が2体なのは了解です。」
アンダーセンが言う。
「あと1体が余っているんですよね。
ブルックさんとアーキンさんに譲ろうかと思ったんですけど。
あ、夫婦の初の仕事がオーガ討伐とか。
王都守備隊同士の結婚はこのぐらいになってからとか、良い感じで王都守備隊で伝説的に話されませんかね?」
「「そんな伝説いりません。」」
ブルックとアーキンが呆れながら言う。
「んー・・・今回の5体はさっきの盾持ちと攻撃の人員を替えて対応でしょう?
子供達が攻撃だからなぁ、さっきより時間がかかりそうだし・・・」
「どうせ、ビエラ殿と所長はさっさと終わらせるんでしょうから残りの1体も引き取ってください。
当初の予定通りで良いじゃないですか。」
アンダーセンが言う。
「所長、対象が動き出したようです。」
「・・・、所長、予定通りで良いでしょうか?」
オールストンが盾の後ろからスコープで見ながら言ってくるとアンダーセンが聞いてくる。
その場の皆が真面目な顔をさせる。
「良いですよ。
予定通り、10mで転ばせます。」
「所長、疑う訳ではありませんが、シールドで転ばせるんですか?」
ベイノンが聞いてくる。
「前に6mで実践していますからね。
それの応用です。」
「はぁ・・・誰に向かってしたんですか?」
「うん?魔王国のダニエラさんにね。
見事転んでくれましたよ。」
「まぁ、今回はシールドを水平に脛辺りに配置しますからね。
どうなる事やら。」
「確か所長のシールドって特殊なんですよね。
小さいと聞いていますけど。」
「1枚当たりはね。
50cm四方のガラスのイメージで作っているんですよ。
それを重ねて左手上に置いて剣とかを受け止めている感じですね。
耐熱、耐衝撃に優れていて重宝していますが、剣が得意な人だとあまり使えないのかもしれませんがね。」
武雄が言う。
「所長も完璧じゃなかったんですね。」
「当たり前でしょう。
私は魔法師専門学院にも入れない落ちこぼれ魔法師なんですよ?」
「また、それを言う。
所長の規格外さは魔法師専門学院に入れては和が乱れますよ。
それにあそこは兵士を育成する場で英雄を育成する場ではないのでね。
所長が入れなくて当然です。」
アンダーセンが首を振る。
「まぁ、酷い言い方です。」
武雄が笑いながら答える。
「では、所長、予定通りに。」
「ええ、最低でも2体は転んでくれると思いますから・・・両サイドから各々襲撃できるように準備を。
あとの3体は・・・ビエラ、とりあえず1体は任せます。
私が1体で残りは一緒に叩きましょう。」
「はーい。」
ビエラが返事をする。
「1班、2班は左右に展開準備!
ベテラン勢は子供達の緊張を和らげろ!
ベイノン!2班の指揮を渡す!」
「了解!班員の掌握をします!」
ベイノンが簡単な挙手の礼をして答える。
「よし!
1班、我々はまた1体を任された。
ケード、コーエン、一撃離脱を心掛けろ。
まずは相手の脚を狙い移動を阻止するぞ。」
「は・・・はい!」
「了解です!」
パメラとケイが返事をする。
「任せるぞ!
総員戦闘態勢!」
アンダーセンが班員に号令をかける。
「はーい、2班も戦闘準備。
さっさと終わらせないと所長とビエラ殿が搔っ攫って行くぞ。
もし、ビエラ殿が入って来たら夕食時のカレーを少し持って行かれるかもしれんぞー。」
ベイノンがアニータとミルコに言う。
「「はぁぁっぁああ!!」」
アニータとミルコの目に闘志が宿り始める。
「よーし、ささっと終わらせるぞ。
なーに、うちらベテランが防御だ、確実に防いでやるからな。
2人は防いだ瞬間にオーガの腕を切り落としてしまえ。」
「「はい!」」
アニータとミルコが返事をする。
「はぁ・・・アニータとミルコは相変わらず食欲が凄いよなぁ。」
「ベイノン殿、それ言うとこの子達は張り切るからぁ。
まぁ、俺らが補助すればいいかぁ。」
ブルックとアーキンは心配そうに見守るのだった。
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