第2439話 無理に戦闘する必要はありません。(次の戦闘まで休憩です。)
魔王国 パーニ伯爵領の関にある櫓の上。
ヴァレーリとアンナローロは机と椅子、お菓子を持ち出して、お気楽観戦をし出していた。
「あー・・・なんだ。
言い辛いんだが・・・ファロンは大丈夫なのか?」
「先ほど報告があったやつですか。
10体で完敗なのに5体追加してどうするんでしょうかね?」
アンナローロが呆れながら言う。
「ふむ・・・ま、近くに味方が居ればあの1撃で倒すファイアは出来ないだろうという予測はわかるんだが・・・4体は普通に倒されているんだよなぁ。
相手は今の戦闘で疲れているから追加すれば勝てると思ったのかもしれないな。」
「・・・それほど、ファロン子爵殿は人間に負けるのが耐えられないという事なのでしょうけども。
パーニ伯爵殿もファロン子爵殿を説得できなかったようでファロン子爵殿側のみの追加ですか。
・・・やる意味がなさそうですね。」
「まったくだ。
アンナローロならどうする?」
「殴りつけて大人しくさせますが。」
「あ、ごめん、そっちじゃなくて。
キタミザト殿の方。」
「先ほどの10体で十分にキタミザト殿と率いている部隊の脅威はわかりました。
これ以上の戦闘は無意味です。
通常の小競り合い程度の戦闘に戻し、時が経つのをのんびりと過ごして終わりです。
そもそも今回の戦争はアズパール王国側の貴族軍の兵士をここに集結させ、経済的に浪費させるだけで陛下の要求は済んでいます。
無理に負傷者や損失が多くなりかねない戦闘をする必要はありません。」
「そうだな。
アンナローロだったらキタミザト殿に負けて悔しいか?」
「いえ、私が率いていたとして、まったくそうは思いません。
兵士に欠員が出ておらず、オーガ程度の損失ですよね。
むしろこの程度で済ませて貰っている事に感謝しますが?」
「ふむ・・・理由は?」
「キタミザト殿はデムーロ国侵攻の有効的な戦法をその場で思いつく御仁です。
今回、慣例の戦争というルールに則り対応してくれていますが、もし慣例の戦争のルールが無ければ・・・もっとこちらに大打撃を与える方法で対峙してくると思います。
それこそ、昨日の小競り合いの時に密かにファロン子爵領軍の近くに待機し、戦闘が始まってからこちらの本陣を先ほどの魔法で強襲だって出来ます。
逸脱し過ぎるとこちらに多大な被害が出る物と考えます。
なので、この程度で済ませてくれているキタミザト殿に感謝します。」
アンナローロが言う。
「そうだな。
話を変えよう、オーガ5体で向こうに有効な被害を出させるにはどうする?」
「そうですね・・・真っ直ぐ1列に並べて駆け足で突っ込ませますかね。
1体ぐらいは敵の陣地内の深い所まで行けるかもしれません。」
「なるほど・・・キタミザト殿に効果があるだろうか・・・」
「あー・・・陛下、今のなしで。
やはり一塊になって突っ込ませましょう。
先ほどのように足を止めるから撃破されるのかもしれませんからね。
足を止めずに突っ込めば何とかなると思います。」
「なるほどな。
確かに足を止めなければ行けるか。」
「ファロン子爵殿はどうするんでしょうね?」
「さてな・・・バラバラに突っ込ませて終わりじゃないか?
人間種に負けんとする気概だけでやるんだから良く考えてないだろう。」
「ですよねぇ。」
ヴァレーリの呟きにアンナローロが頷くのだった。
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エルヴィス伯爵軍 最前列の盾から魔王国側に50m程度行った所でビエラ達が車座に座り待機していた。
武雄がエルヴィス伯爵軍陣地から戻ってくる。
「「「所長、お疲れ様です。」」」
試験小隊の面々が立ち上がって挙手の敬礼をする。
「はい、お疲れ様。
あ、座ってて良いですよ。」
武雄がそう言うと皆が敬礼を止めて、その場に座る。
「えーっと・・・アンダーセンさん、簡易報告を。
座ったままで結構です。」
「はい、結果としてオーガ10体を殲滅出来ました。
戦果は所長が4体、ビエラ殿が4体、我々が2体です。」
「皆でやった結果だから個人の多い少ないは気にもなりませんが。
怪我は?」
「ありません、皆に魔法ポーションを摂らせていますし、ケアもしてあります。
部隊員は精神面での疲労はあるものの、戦闘に対して恐慌になる事はありませんでした。
良い緊張感の中で最大限の対処が出来たと考えられます。
この後の戦闘に支障はありません。」
「わかりました。
私からは今後の話です。
エルヴィス伯爵軍と話をしている時にマイヤーさんも来てくれて、エルヴィス伯爵と騎士団長、兵士長、私、マイヤーさんで打ち合わせをしました。
追加で投入されるオーガは5体を確認、現在移動中で、到達予想は10分後。
対処はこのまま第二研究所が行うと決まりました。
5体との戦闘が終わり次第、オーガの亡骸の回収をエルヴィス伯爵軍の兵士がしてくれます。
送り先は第二研究所の陣地内、腕と足を解体後体は穴に投棄し、スライムと鷲達で処理する事になります。
回収をして貰っている間に私達は受け入れ準備と投棄用の穴を作る作業をします。
大まかな段取りは以上です。
アンダーセンさんは終わったら今の通りに動くので配置をお願いします。」
武雄が事務連絡をする。
「了解しました。」
アンダーセンが頷くのだった。
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