第2432話 会議後の夕食までの雑談。(明日への懸念。)
第二研究所陣地内の焚き火周り。
「そうですか・・・死者なしは良かったですね。」
マイヤーが言う。
「明日は魔王国が兵士を増やしても対応出来るように倍の数を用意する事で終わりました。」
「ふむ・・・倍・・・ですか。」
武雄の言葉にマイヤーが考えながら言う。
「対峙しているのは倍の兵士数ではありますが、緒戦は同等に渡り合い、引き分けの形です。
負傷者はいるもののケアで回復済みで後遺症も見られない。
死者なしの結果は、今まで対峙戦力の劣勢から緊張していた伯爵達を安堵させています。」
武雄が言う。
「伯爵達ですら・・・となると、盾を持っている最前列の兵士達はもっとでしょうね。」
「明日は負傷者が多くなるかもしれませんね。」
マイヤーとアンダーセンが言う。
「気を緩めるなとは言えますけど・・・言って態度が改まるのなら元々緩んではいませんよ。
盾を持つ最前列や戦闘に参加しているのは、ベテラン達で前回の戦争の経験者達です。
それほど倍の数の兵士と睨み合っているというのは精神的に重荷になっていたという事でしょう。
マイヤーさん、明日はもしかしたら回復の方で手伝うかもしれません。」
「そうですね。
アンダーセン、明日はいつでも救援に行けるように軽めの訓練にして様子を見ろ。」
「了解しました。」
アンダーセンが頷く。
「所長、夕食貰ってきました。」
多めのパンを持ったブルックを先頭にアーリスとブレアが寸胴の鍋を持って焚き火にやってくる。
「ご苦労様、今日の夕食は?」
「シチューです。
大盤振る舞いでお肉多めだそうです。
今日の戦闘は結果が良かったみたいですね。
あとは・・・私とブレア殿はサラダを貰ってきますから、アーリス殿は皿とか用意しておいてください。」
ブルックとブレアが持ってきた料理を置き、再びキッチンカーの方に行ってしまう。
「戦果が良ければ料理の質が上がるのですか?」
武雄がマイヤーとアンダーセンに聞く。
「まぁ、そういう事もありますね。」
「士気を上げるのに料理は常套手段ですよ。
それに今日は開始日ですしね。」
マイヤーとアンダーセンが言う。
「それで・・・戦闘中に新人達は戦闘の見学、私とマイヤーさんも観戦。
アンダーセンさんの方でパーニ伯爵軍のオーガの確認に行って貰いましたが。」
「はい、所長がテンプル伯爵に早々に見に行くと言っていたので、皆が戦闘に注目している今が偵察をしやすいだろうとテンプル伯爵の端から大回りをして横まで行きました。
ファロン子爵軍の時と同じ距離300mまで接近してスコープでオーガの状況を確認しました。
こちらもファロン子爵軍と同じように首輪と鎖で繋がっており、暴走はないだろうと考えられます。」
アンダーセンが言ってくる。
「わかりました。
明日の朝の会議で伝達しておきます。」
武雄が頷く。
「マイヤー殿、交代と回復の戦術はどうだったのですか?
子供達には今、感想を書かせていますが。」
アンダーセンが聞いてくる。
「そうだなぁ・・・基本は8枚2列を使い、1列目で盾を隙間なく立てて、2列目が上方からの攻撃に備えて1列目の盾の上に置き斜めに構える、それを補助する兵士を配置して、向こうの攻撃を防ぎつつ、攻撃が緩んだら盾の隙間を作って突きを行い、向こうに怪我をさせるという防御の戦闘だったんだが。
たぶんだが・・・・入れ替わっている瞬間は魔王国の方からは盾であまり見えていないだろうな。
後ろからこっそりと近づいて負傷者を回収するのと交代要員を配置するからというのもあるが・・・
相対している者はわかるだろうが・・・攻撃していないと剣が飛び出してくるからな、その場で何とかするというのは出来ていなかった印象だな。
戦闘が終わってから報告を上げている可能性は大いにあるが。
今日の戦闘はぎこちなさはあったとしても十分な動きだったと思うな。」
マイヤーが考えながら言う。
「そうですか。
まずは所長の戦術が上手く行った事は何よりです。
考案した所長としてはどうでしたか?」
「訓練していないのに良く熟したと思います。
ぎこちなさや交代の際に相手にわかり辛くさせる方法等はこれから経験しながら、兵士達が考え、改善して行けば良いと思います。
まぁ、研究所一同も客観的な動きの確認と理想的な交代方法の検討をして行かないといけないですね。」
武雄が言う。
「理想的な交代方法ですか。」
「後ろから近づく為に交代要員が向かうタイミングとかですね。
あとどういう動きが良くて、どんな事が悪い結果をもたらすのか。
まぁ、試験小隊の課題が増えたようなモノですよ。」
「「そうですね。」」
武雄の言葉にマイヤーとアンダーセンが頷くのだった。
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