第2430話 一先ず安心。(アリス、宿題出来ていないの?)
「当面は知る人は少ない方が良いかもね。
知っていた所でどうにかなる戦力ではないし・・・領民にとっては知らない方が良い事でもあるだろうし。
ま、その辺のことは陛下に任せましょう。」
ジェシーがアズパール王に判断を放り投げてしまう。
「良いのですか?」
「良いも悪いも王都の文官達に教えるかどうかは陛下が考える事よ。
当面はエルヴィス家とゴドウィン家、第3皇子一家の関を持つ領主と後ろに控えてくれる皇子一家が知っていれば良いわ。
あら?丁度ここに関係者が勢揃いしているわね。」
ジェシーが言う。
「ジェシーお姉様の言う通り、知っていたとしてどうにか出来る戦力差ではないんですけどね。」
アリスが言う。
だが、心の中では「他にもタケオ様経由で知ってしまった事があるんですけどねぇ」と思っていたりする。
「で、ジェシーさんはどう思いますか?」
エリカが聞いてくる。
「んー・・・いくら魔王国から見て、あまり強くない国家であるアズパール王国ではあるけど・・・
倍の数程度で領地を切り取れるとは・・・考えて欲しくないわね。
・・・アリス、タケオさんが確か魔王国と商売をしているのよね?
感触はどうなの?」
「はぁ・・・ウスターソースとウォルトウィスキーのお陰で『もっと売ってくれ』と催促が来ています。
この間も魔王国の幹部の方が来られて『今後ともよろしく』と言ってくれています。
魔王国側からも輸出量を増やせないか、今色々と取り寄せたりしています。
商売上、敵対はしておりません。
むしろ良好な関係を築きつつあります。」
「となると・・・まぁ隙を見せれば大挙して押し寄せるんだろうけど。
お爺さまとタケオさんの防御主体で臨んで、無難に対処出来れば、無理に向こうから攻めては来なさそうね。
・・・エルヴィス家の兵士長達が考えた回復戦法が上手くいけば、今回は本格侵攻はない。
そう思わせてくれるだけの情報があるわね。」
ジェシーが言う。
「・・・それでもまずは無難に戦争を済まさないといけないんですけどね。」
アリスが言う。
「そうね。
心変わりする可能性はあるから戦場ではしっかりと対応するしかないけど。
・・・来て良かったわ、タケオさんとアリスのお陰で、今回の戦争では本格侵攻の可能性がほぼないというのがわかったからね。
向こうの屋敷で1人で戦地のこの状況を聞いてたら不安で眠れなかったわよ。」
ジェシーが笑いながら言う。
「ですが、小競り合いはあるようですので。
現地では気が気ではないでしょう。」
エリカが言う。
「そうね。
でも、まぁ、そこは現地に居る男性陣に任せましょう。
私達は戦場の状況を見ながら変わりない日常を過ごす事にした方が良いわね。
で、エイミー殿下には?」
「エイミー殿下はまだエルヴィス家ではないので、この情報は出しません。
スライムについてはバラしましたけど。」
「そう。」
「でも、エイミー殿下の隣の部屋がジーナ殿ですからね。
スライムの事は前から知っていたようですよ。」
「あー、それはしょうがないわね。」
エリカの言葉にジェシーが頷く。
「あ、そうだ。
ジェシーお姉様、ゴドウィン家に派遣するエルダームーンスライムの研修が終わっています。」
「へぇ・・・それに関しても研修があるのね。」
「はい、知識面と言語面です。
後ほど面通しをしてジェシーお姉様との相性を確認をさせて頂きます。」
「・・・うん、相性があるのね。」
「たぶん大丈夫です。
ね、エリカさん。」
アリスが言う。
「はい、大丈夫でしょう。」
「・・・緊張するわね。」
ジェシーが不安そうな顔をさせるが、アリスとエリカはにこやかに見ている。
「はぁ・・・とりあえず、ホッとしちゃったわね。
あ、そういえば、アリスに宿題出していたっけ。」
ジェシーの呟きにアリスが笑顔のまま固まる。
「・・・何よ、アリス、やってないの?」
「や、やってますよ。
ね、コノハ。」
「呼ばれちゃったんだけど・・・
も・・・黙秘権を行使します・・・」
チビコノハがアリスの肩に現れ言う。
「ペイトー、黙秘権ってこういう時に使うんだっけ?」
「コノハが使うなら、そうなのでは?」
チビペイトーがエリカの肩に現れ言う。
「あら?エリカさんも精霊が居るのね。」
「ジェシー、ペイトーは私の姉妹です。
・・・ペイトー、どこでエリカと?」
チビパンニューキスがジェシーの肩に現れ聞く。
「前回来たこの屋敷でです、パンニューキス。
護身術とケアの支援をコノハ、ウカ、ダキニ、ニオ、テトにてして貰っています。」
「一緒ですね。
パイディアーは元気ですか?」
「元気ですよ。
王城の花壇に手を入れています。
それと・・・タケオの支援の下、ピアノの試作に乗り出しています。
ゆくゆくはウィリアム領で製作する予定です。」
「なんですと?
・・・ふむ・・・ジェシー、第3皇子一家で新しい楽器が作られようとしています。」
チビパンニューキスがジェシーに言う。
「ふむ・・・パンニューキスが弾いてくれるヴァイオリンとも違うの?」
「はい、違います。
お子様の手習いならピアノの方が割と良いかもしれません。
室内に据え置き、鍵盤という物を押すと音が鳴る仕組みです。
両手で弾けるのでヴァイオリンよりも個人で奏でる曲が増えます。
また、押すだけという動作が簡単なので、誰にでも扱えるという特徴があります。」
チビパンニューキスが言う。
「あ、パンニューキス、今作ろうとしているのはスクエア・ピアノです。
グランドピアノは次の段階だと思っています。」
チビペイトーが言う。
「なるほど、安価な方をまず作るのですね。
でも、なんで既存のヴァイオリンではなくピアノに?」
「・・・エリカがヴァイオリンに不向きで。」
「はは、他に何かあればと言ったら・・・何か一大事業になってしまってね。」
チビペイトーの俯いての呟きにエリカが苦笑するのだった。
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