第2428話 連絡します。(陛下の提案始動します。)
アズパール王国 王城の大会議室。
アズパール王、ウィリアム、全貴族会議、各局の文官幹部達、王都守備隊に第1騎士団、第2騎士団の武官幹部が勢揃いしていた。
「はぁ・・・」
中央に座るアズパール王がため息を付く。
場の雰囲気も緊張をしているようだった。
「陛下・・・皆で決めた事です。」
オルコットが言ってくる。
「そうだな。
それに・・・言い出したのは我だ。」
アズパール王が頷く。
「失礼します。
エルヴィス伯爵家のスミス殿が参りました。」
会議室の扉を開け、兵士が入って来て言う。
「・・・そうか、通してくれ。」
「はっ!
エルヴィス殿、こちらに。」
兵士が1歩退くと制服姿のスミスとメイド姿のジーナが入ってくる。
「失礼します。
陛下、お呼びと伺いました。」
「うむ、良く来たな。
・・・こちらに来てくれ。」
「はい。」
スミスがアズパール王の前に進み、ジーナは扉の所で待機する。
「・・・あー・・・前置きは良いか。
スミス・・・いや、スミス・ヘンリー・エルヴィス。
現在、魔王国とは戦争を実施しているが、戦況悪化が予想される為、最終防衛拠点の構築をする事を決めた。
心しろ。」
アズパール王が立ち上がり、スミスに言う。
「・・・」
スミスは黙って眉間に皺を寄せ、目を瞑る。
「「「・・・」」」
その場の誰も音を出さないで見守る
「・・・陛下、それほどまで戦況が厳しいのでしょうか?」
「正確に言えば、まだ戦闘の報告は来ていない。
だが、対峙戦力がいつもと違う事が判明した。
これはキタミザト子爵とゴドウィン伯爵からもたらされている、キタミザト子爵から報告される内容はエルヴィスも知っておるだろう。
ここで報告された数は、本気の侵攻が成されたのならば戦地では防ぎきれないであろう数だ。
現地で対応している4貴族には期待をするが、万が一を考えての処置を行う。」
アズパール王がスミスの質問に答える。
「・・・私の実家、エルヴィス家は時の陛下より国の東北部の守りの為に創設された貴族です。
かかる事態は常に想定しております。
私もこういう事もあると・・・戦争の報があってから考えてはおりました。」
「そうか。」
「陛下、エルヴィス伯爵領の領民が・・・いえ、魔王国に面している貴族領の領民が王都近郊へ避難を願い出た際は受け入れをお願いいたします。」
「ああ、大丈夫だ。
準備する。」
「ありがとうございます。
後方の・・・王都の守りが出来ており、領民の受け入れ準備が出来ていると知れば、戦地に居る兵士達も心置きなく・・・存分に働く物と考えます。
何卒、よろしくお願いします。」
スミスが頭を下げる。
「うむ・・・連絡は以上だ。」
「はい・・・陛下、第3皇子一家の所に寄ってもよろしいでしょうか。」
「構わない。
気を付けて寄宿舎に戻るように。」
「はい・・・失礼しました。」
スミスが少し肩を落としながら扉に行き、ジーナが扉を開けると退出する。
ジーナも一礼して退出して行く。
「・・・皆、以上だ。
裁可した計画通りに進めてくれ。」
アズパール王が正面を向いたまま言う。
「「「「「はっ!」」」」」
皆が控えめな声量だが力強く言い、席を立って各々の職場に戻っていくのだった。
・・
・
第3皇子一家の執務室。
「呼び出し対応、ご苦労様。」
「スミス、お疲れ様~。」
アルマとレイラがスミスとジーナを労っていた。
「でも、わかっていても気持ちは重たくなりますね。」
スミスがお茶を飲みながら言う。
「スミス様、良い演技でしたよ。
少し苦しそうな顔をされていましたし、退出時の少し寂しそうな背中は流石でした。
陛下と王都守備隊総長殿以外の皆様は同情をされている雰囲気でした。」
ジーナが言う。
「「それは見たかったなぁ。」」
「止めてください、恥ずかしいです。
それに演技なんてしてないですよ、僕的にはいつも通りだったんだけど、気持ちが表れてしまったんだろうね。
アルマお姉様とレイラお姉様も聞いているんですよね?」
「今日の午前中に聞いているわよ。
私達はウィリアムと一緒に陛下の執務室でね。」
「終始、雑談だったけどね。」
アルマとレイラが言う。
「これで陛下の企みが始まりますね。」
ジーナが言う。
「まぁね。
あとは王都の壁がどういう風に動くかね。
基本的には領内に侵攻されない限り、物流は止めない事が決まっているから問題ないと思うんだけど。
多少は価格等に変動があるかもね。」
アルマが言う。
「ま、私達は見守る事にしましょう。」
レイラが言うと3人が頷くのだった。
------------------------
王城内の外交局に併設された小会議室。
「以上が決まった。」
外交局長が幹部達に先ほどの会議の話をしていた。
「・・・そうですか。」
「万が一の時は魔王国側を切り捨てると・・・」
外交局の幹部が難しい顔をさせて呟く。
「あくまで準備段階だ。
軍務局の人員は走り回っているだろう。」
外交局長が言う。
「13歳の子供に・・・『お前の実家を切り捨てる用意をする』と言うのは辛いものですね。」
「言うのも辛いが・・・言われる方も辛いでしょう。」
「・・・貴族家の跡取りとはいえ、エルヴィス伯爵家のスミス殿も取り乱さず良く耐えた。
今は第3皇子一家の所で泣いているかもしれんし、慰め合っているかもしれんな。」
「アルマ殿下もレイラ殿下もご実家ですからね。」
「はぁ・・・我々は我々で出来る事をしよう。
カトランダ帝国、ウィリプ連合国の情報を再度、取りに行く。
この機に乗じて動くかも知れないからな。」
「「「はい。」」」
外交局の幹部が頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




