第2426話 緒戦開始。(学ぶ事はある物です。)
アズパール王国 ゴドウィン伯爵領の関と魔王国 パーニ伯爵領の関間にて。
「「「うおぉぉぉ!!!」」」
「「盾構え!盾構え!!」」
「2列目!突き用意!!剣構え!」
「構え!構え!・・・・・・・突け!」
「「「おおー!!!」」」
この戦争での初戦が始まるのだった。
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魔王国 パーニ伯爵領の関にある櫓の上。
「おお、始まったな。」
「始まりましたね。」
「小競り合い、小競り合い。」
ヴァレーリ達が戦場を見ていた。
「それにしても・・・アズパール王軍は引いているな。
両国間のほぼ中央付近でする物と思っていたんだが・・・」
「はい、確かに。
これは向こうが守りに入ったということでしょうか。」
ヴァレーリとアンナローロが眺めながら呟く。
「ふむ・・・実際に盾を持つ者が多いですかね。
盾よりも前には出ていないようです、手堅いですね。
ん?・・・キタミザト殿の所の小屋ですかね・・・誰か居ますね。」
ボナが望遠鏡を見ながら言う。
「キタミザト殿か?」
「さて、それはわかりませんが・・・たぶん2人で見ているようですね。」
ボナが望遠鏡から目を離し、望遠鏡をヴァレーリに渡す。
「・・・んー・・・キタミザト殿かはわからんな。
だが、キタミザト殿にしろ部下の兵士にしろ、少数部隊の人員が居るという事は、この小競り合いには参加しないという事だな。」
ヴァレーリが望遠鏡で見ながら言う。
「で、あるならばこの小競り合いの方は両国の貴族領軍の戦いになるのですね。
小競り合いの方は位置的な所では向こうの陣に近いので心理上は優位なのでしょうけども・・・
陛下、どう見ますか?」
「そうだなぁ・・・んー・・・守っているなぁ、固そうだなぁ。
ただの剣や爪での攻撃ではあの盾は抜けなそうだな。」
アンナローロの言葉にヴァレーリが小競り合いの方に望遠鏡を向け、状況を見ながら言う。
「守りに入るというのは堅実ではありますが、自陣に近いという事は負ければ後ろの本陣に接触する恐れがあり、兵士の心理上焦りそうではありますね。」
ボナが言う。
「・・・ボナ、そうとも言えんぞ。」
ヴァレーリが望遠鏡から目を離して、ボナに望遠鏡を渡す。
「どうされました?」
「遠目だが・・・アズパール王国軍の後ろの本陣の所を見ろ。」
「はっ!・・・最前列の盾の前に小隊規模の部隊?・・・増援ですか?
アンナローロ殿。」
「はっ!失礼します!・・・・・確かに居ますね。」
ボナから望遠鏡を受け取りアンナローロも見る。
「増援か・・・だが、所詮、数小隊同士の少数での戦いだ。
増援を送るぐらいなら最初から一緒に戦わせた方が勝機があると思うな。」
「確かに、中隊規模なら初戦後に増援を送る事を考えておいた方が良いとは思いますが、小隊規模でするのは些か意味をなさないかもしれませんね。
では、あの部隊は?」
ヴァレーリの呟きにボナが聞いてくる。
「・・・アンナローロ、第1軍指揮官補佐として考えた場合、あの部隊は何だと思う?」
「はっ!・・・考察するならば、現状ではあの部隊は増援ではなく、交代要員の可能性があります。」
アンナローロが望遠鏡を降ろして言う。
「ふむ、理由を言え。」
「はっ!あのアズパール王国側に居る部隊は戦闘後に集結したと考えられます。
その目的としては、パーニ伯爵とファロン子爵、そして対峙している兵士達に存在を教えない事と思います。
存在がバレればすぐに兵士が追加されるからです。
相手に知られないように追加の兵士を用意する。
そして前線で対応している兵士達は盾で防御を固めている。
・・・私の結論としては、疲労した兵士や負傷した兵士をすぐに交代させるように用意された交代要員と考えます。
この作戦が上手く行った場合、魔王国の兵士達からすれば自分達の疲労は溜まりますが、対峙しているアズパール王国の兵士からは数は変わらないのに疲労が見えないという不思議な感覚に苛まれると思われます。
自陣に近い所で戦闘をさせた事も交代をスムーズに行う為と魔王国側から見え辛くする作戦の一部かと考えられます。」
アンナローロが真顔で言う。
「そうか・・・ボナ。」
「パーニ殿、ファロン殿には悪いが、良い物が見れましたな。
これが今までしていたのか、今回が初めてかは知りませんが・・・良く考えられています。
中隊規模で実施された際の対応方法を研究しても良さそうです。」
「ボナ、年末までに報告書と検討書を提出してくれ。
他の領主達にやり方を教えねばならん。」
「はっ!了解しました。」
ボナが頷く。
「・・・陛下、パーニ伯爵には?」
アンナローロが聞く。
「聞かれない限り、言わんさ。
この戦争はパーニとファロンの戦争だ。
我からは直接の情報提供や戦闘指示はせんよ。
オーガの件でも『どういう予定なんだ?』と聞くだけだ。
そこで何か質問をしてくれば答える形が良いだろう。」
ヴァレーリが言うのだった。
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