第2422話 望遠鏡で探してみよう。(万が一は強行します。)
魔王国 パーニ伯爵領の関にある櫓の上。
「両軍の中間辺りで何か・・・話しているようだが・・・わからんな!」
望遠鏡を見ながらヴァレーリが言う。
「まぁ、叫んでいる訳でもありませんし。」
アンナローロが言う。
「まぁ、これが慣例の戦争の始め方なんでしょう。
陛下、将棋でもしますか。
駒は並べておきますよ?」
ボナが席に座りながら言う。
「おう、すまんな、ボナ。
ちょっと待っててくれ・・・・あれ?キタミザト殿はどこに居るんだ?
自陣には居ないようだし・・・他領軍の所に居るのか?開始時に?」
「ダニエラ様、相手の他の伯爵方は?」
「ん?・・・たぶん、自陣の最前列で盾中央の所にいるのがそうだと思うんだ。
周りを数人で囲んでいるから・・・キタミザト殿も同じ風に自陣の最前列に居て、部下が横に侍っていると思うんだが・・・あれ?どこにも居ないなぁ。」
ヴァレーリが左右を望遠鏡で見ながら言う。
「・・・キタミザト殿がお隠れに?」
アンナローロが言う。
「アンナローロ、キタミザト殿が姿を消しているのは良い事ではないぞ。
何をしでかすか・・・いや、本当にわからん。
ファロンとベッリ、パーニはキタミザト殿の恐ろしさがわかっていないから警戒していないが。
アンナローロ、連れてきた中で第4軍の者は行かせたか?」
「はい、ご指示通りに朝食後すぐに出立させています。
ファロン子爵軍の右側より1個小隊を確認しに行かせています。
もちろん、敵の気配があった場合は確認せずにすぐに撤収をするように厳命し、戦闘もするなと言ってあります。」
「ああ、頼むぞ。
戦闘行為はしてはならん、我々の戦争ではないのだからな。
だが、誰が居たのかは確認しなければ、落ち着かないからな。」
ヴァレーリが言う。
「でも、ダニエラ様、良く気が付きましたね。
私も言われた後、望遠鏡で確認しましたけど、言われてみればという感じでした。」
「なんとなくだよ。」
「朝一で右の方を見たら草が倒れているように見えたとは・・・確かに気になる情報です。
どなたか潜伏していたという事でしょうか。」
「さてな、誰かはわからぬが、誰か居たとして一応跡地は見て置いて損はないだろう。
誰が居たかの証拠は残していないだろうがな。
あの場所は戦闘行為があった場合、横やりをする部隊が居やすいと思う。
事前に調べに行ったかもしれないからな。」
「なるほど、待機場所ですね。
確かに、正面からよりも横からの方が不意を突けますね。
・・・そんな事を考えるのはキタミザト殿が濃厚でしょうか。」
アンナローロが考えながら言う。
「だよなぁ。
・・・ふむ、あれは確認に行った小隊だな。
ふむふむ、確認しているな、偉いぞー、じっくり確認しろ。」
ヴァレーリが右を望遠鏡で見ながら納得している。
「で、キタミザト殿は?」
「テント内に居てくれたら良いんだが・・・他の伯爵と思われるのが見ているのに見ないとは思えないんだよなぁ。
どこかに居るんだろう。
アンナローロ、交代だ。」
ヴァレーリが望遠鏡を見終え、アンナローロに渡す。
「はぁ・・・『キタミザト殿を探せ』というのは仕事なんでしょうけど・・・探せるんでしょうか。」
アンナローロがやる前から諦めているようだった。
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エルヴィス伯爵軍左端の最前列にて。
「・・・所長、大丈夫ですか?」
「いつでも良いですよ。
パーニ伯爵と思われるゴドウィン伯爵の正面に居る人物の胸に照準しています。
ついでに後ろに居る1人にも射線が合っています。」
「あー・・・所長、やっぱり来ていますね。
昨日、偵察した場所付近に数名の・・・10名程度の兵士が居ます。」
「・・・昨日見ていたの知られたのですかね?」
「さて・・・でも地面を見ているようですよ?」
「様子見ですかね。
あとで、皆で今後の偵察時の確認をしましょう。」
武雄とマイヤー、アーリスはエルヴィス伯爵軍の最左翼の最前列の盾のすぐ後ろでしゃがみながら話をしている。
魔王国側からは姿を確認はされないよう、コソコソと行動している。
武雄は盾と盾を少し開け、小銃改3の先端を出して膝立ち撃ちの体勢で構えている。
もちろん疲れる為、3人のリュックを重ねた上に小銃改3を置いて狙っている。
マイヤーはゴドウィン伯爵のやり取りを同じく盾と盾の隙間からスコープで覗き、アーリスも隙間から戦場の左側を見ていた。
ちなみに今は武雄達が居るので盾を支えるのは突っ張り棒のみ、担当の兵士とその小隊長は武雄達の後ろで待機していた。
「・・・ふむ、予定通りゴドウィン伯爵が先頭ですぐ後ろに騎士団1名と盾持ちが2名ですか。」
「ええ、相手も4名ですね。
あれがパーニ伯爵かはわかりませんが、ゴドウィン伯爵が顔を合わせて怒っていないという事はそうなのでしょう。」
「そうですね。
万が一の際の指示はさっきの通りですね。」
「はい、ゴドウィン伯爵が危険と判断したら右後ろに飛ぶのは伝達済みです。
『左後ろに飛んだら巻き添えで死にますよ?』と言っておきました。」
「小銃改3で狙っている時点で大きく飛ばないと危ないでしょうね。」
「はは・・・ゴドウィン伯爵も全力で右後ろに飛ぶと言っていましたよ。」
武雄達はゴドウィン伯爵達のやり取りを見守るのだった。
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