第2419話 アリスとエリカのスライム確認。(保存食が思いつかない。)
エルヴィス伯爵邸の客間。
「・・・あれ?アリスさん、これどういう事ですか?」
エリカが隣に座っているアリスに書類を見せる。
「うん?あぁ、今日のお二人の研修内容ですね。
何か気になる事が書いてありましたか?」
「いえ・・・エイミー殿下の方はわかるんですよ。
陛下の裁可も頂いているようで、『エイミーの能力を向上させてね』という伝言もあるのはアリスさんに見せられましたけど。
キティ殿にスライム関連を教えるのですか?」
「それね。
実はフレデリック達も迷ったみたいなのよ。
でも、それ話さないと話が進まないのも事実でね。
あ、お爺さまとタケオさんには言ってあるから大丈夫ですよ。」
「どれだけタケオさん、食い込んでいるんですか。」
「結構、食い込んでいるの。
お爺さまなんて『タケオが良いと言うなら良いんじゃない?』と気楽だし、タケオ様に聞いたら『漏れたら漏れたで、それはそれで楽しい事になりますね』と・・・この状況あの2人楽しんでいるのよ。」
「ははは、危機意識が低くて何よりですね。」
「というより、どうとでもなると思っている節があるんですよね。」
エリカが呆れ、アリスが難しい顔をさせながら言う。
「それは・・・まぁ、わからなくもないと言うか・・・」
エリカが客間の一角を見ると夕霧が時雨、初雪とは違う少女と猫と手を繋いでいた。
「ん、エリカ、何ですか?」
夕霧が呟く。
「いえ、天霧殿と浦風殿はどうですか?」
「ん、大丈夫。
ウラカゼはいつでもジェシーの所に行ける。
アマギリはもう少し私と学習が必要。
あ、アリス、シグレからの報告、領内の魔物の動向は昨日と同じです。
魔物の集団化、新たな発生はしていません。」
「わかりました。
夕霧ちゃん、ありがとうございます。」
アリスが頷く。
「ん、で、エリカ、何か聞きたそうですけど?」
夕霧が顔も向けずに言う。
「夕霧殿、今、アズパール王国内のスライムの分布はどうなっていますか?」
「ん。アズパール王国のエルヴィス伯爵領、ゴドウィン伯爵領、王都周辺、カトランダ帝国側の領内のエルダームーンスライムはここに集結済みです。
調べ終わった各地にエルダースライムを2体ずつ残し、それ以外のエルダースライムもここに居ます。
スライム達は今まで通り各地に居ます。
テンプル伯爵の所とウィリプ連合国側は調べていません。
タケオが戻ってから相談します。
あと、ゴドウィン伯爵領とエルヴィス伯爵領の関のスライム達からの報告で雨等があっても崩れるような事にはなっていないと関の強化は大丈夫と言っています。」
夕霧が言う。
「そうなんですね。」
エリカが頷く。
「この国の半分強の範囲のエルダームーンスライムが集結しているという現状もあるんですよね。
まぁ、我が国のスライムは赤、緑、青、白の4つしかいないという認識なのに。
黒種があって、さらに上位種のエルダースライム、最上位種のエルダームーンスライムなんて人々は知らないんですよ。
見かけてもスライムは逃げますし、テイラーさんが言うには容器で捕まえようとしても容器ごと溶かして逃げちゃうそうなんです。
害にならないし、特に気にするような物ではないというのがスライムの印象ですね。
一応、書物でのスライムの説明では生物の死骸や野菜や雑草を食して、森の掃除役をしているというのが一般的な説明でしょうね。」
アリスが言う。
「あれ?・・・という事はスライムの事が漏れたとして、乱獲になるような事は・・・」
「その可能性自体は高いですよ。
でも、スライムの生息地は森の中とはいってもスライムは地中にも居れますし、陰に潜んで逃げまわれるんですよ。
そう易々と捕まえられないですし・・・夕霧ちゃん、ここ以外のスライムはどの種類が森に居るのですか?」
「ん、森の維持を目的に青と緑と白です。
赤と黒は居ないですね。
数としては森の大きさにもよりますが、25体ずつ居るようにしています。」
「・・・うーん・・・黒が居ないという事はタケオさんが作っているコンテナというのは、ほぼほぼ出来ないですし、高性能肥料を作るにしても緑スライムは数は少ないのですね。」
エリカが考えながら言う。
「山狩りされると生息域は狭まってしまうかもしれませんね。
その分、こちらで保護地区を大きくするのと立ち入り禁止処置を徹底させないといけないと思います。
まぁ、スライムの保護地区にリツ殿と言うレッドドラゴンの家を作る気でいる時点でスライムの安全が高まるのは確かですけども。
それに保護区内のドラゴンの棲み処には夕霧ちゃん達もそうですが、私達の避難場所を設置する事になると考えています。」
「避難場所ですか。」
「ええ、最終避難場所。
この屋敷もですけど、迎撃する武器と食料を保管しておく事にしようかと。
ただ・・・私の懸念は向こうに保管する食料ですね。
塩はまだ良いのですけど、干物も保存が効くとはいっても限度がありますから、毎月入れ替えるにしても数量は心許無い事になってしまうかと。」
「・・・となると今よりも日持ちする保存食の開発をしないといけないのですね。」
「タケオ様が帰って来るまでに何個か考えておこうと思ったのですけど、何も思いつかなくて。」
アリスが難しい顔をさせながら言うのだった。
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