第2410話 289日目 ヴァレーリ到着。(はてさてどうなる事やら。)
早朝のゴドウィン伯爵領の関、第二研究所陣地内打ち合わせ室の特殊コンテナ搭載馬車の上のテントにて。
「所長、おはようございます。」
マイヤーがやって来て武雄に言う。
「はい、おはようございます。」
スコープから目を離して武雄が返事をする。
「もうすぐ朝食です。
今、用意しています。」
「わかりました。」
「それで・・・どうです?わかりましたか?」
「昨日のブレアさんの報告の通り、櫓の上に家具を入れてありますね。
それとなく物が見えます。」
「どれどれ・・・んー・・・何の家具かは微妙ですね。
机か低い棚か・・・人が動いていますか。
家具が入ったという事と開戦前日と捉えると・・・」
「今日、ダニエラさん達が来るという事でしょう。
あの動いている人員は清掃か護衛で室内確認か・・・」
「ヴァレーリ陛下ですか・・・随分とお会いしたのは昔の気がしますね。」
「最初の東町の時でしたか。
そうかぁ、魔王国にマイヤーさんは行かなかったですし、この間来た時は試験小隊の面々は会わせませんでしたからね。」
「今回も会わずに済みそうですが。」
「あのダニエラさんが1か月もジッとしているとは思えませんけどね。」
「・・・所長、怖い事言いますね。」
「戦争前にふらっと戦争の相手国にドラゴンロードと遊びに来るような方ですよ?」
「確実にこちらに来ますね。
おもてなしは出来ないでしょうけど、よろしいのでしょうか。」
「かりんとうぐらいかなぁ。
あとはプリンでも作ってあげようかな。」
「まぁ、来たら来たで考えましょう。
それよりもヴァレーリ陛下が来られた際にどんな旗が掲揚されるかが問題になりますね。」
「旗?・・・ですか?」
マイヤーの言葉に武雄が首を傾げる。
「ええ、我が国もそうですが、陛下のみが掲げる戦場での旗というのがあってですね・・・まぁ戦闘旗とでも言いますかね。
戦闘旗が掲げられると大変なんですよ。」
「そうなのですか?」
「陛下の戦闘旗の前では負けを許さずとされます。
まぁ、本気で戦うとなるので、今回、魔王国側で魔王国王の戦闘旗でも掲げようなら侵略戦争になったと考えるしかない状況下になるでしょう。」
「覚悟が必要ということですね。
ちなみにレイラさんとウィリアムさんの求婚の話に出てくる慣例の戦争では、旗はどうしたんですか?」
「確かあの時は王都守備隊旗を掲げましたよ。
陛下や皇子一家の旗を戦場で掲げたりは滅多にしません、ましてや陛下の戦闘旗をとなると歴史上でしか掲揚されたことはないでしょうけど。」
「・・・でも、今後は私達の後ろに第3皇子一家が来ますよね。
旗はどうするのですか?」
「確か、カトランダ帝国やウィリプ連合国と対している第1皇子一家や第2皇子一家を例にしてみると皇子一家の旗は出していないですよ。
他の旗を・・・例えば似ている騎士団を示す旗を作って、それを掲げるとかですね。」
「・・・旗の意味は『そこに居る』じゃないんですか?」
「普通はそうですね。
ですが、そこに『王家』という肩書が付くと違う意味に取られるのです。
そういうものだと思ってください。」
「はーい。」
武雄が返事をするのだった。
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魔王国 パーニ伯爵領の関。
最前列の盾を持っている兵士以外の者達が関の前に整列している。
「ファロン子爵殿、ベッリ男爵殿、大丈夫かな?」
パーニ伯爵がすぐ後ろに居る2人に声をかける。
「はい。」
「問題ないですよ。」
ファロン子爵とベッリ男爵が答える。
「はぁ・・・前触れは来ているのでそろそろですか。」
「おや?パーニ伯爵殿でも緊張されますか。」
ベッリ男爵が言う。
「はは、当たり前です。
それに陛下が慣例の戦争に来る事自体が初めてです。
何か間違いが起きてはいけないと、神経を使ったのですよ。」
パーニ伯爵が苦笑しながら言う。
「失礼します、陛下が到着されました。」
兵士が小走りにやって来て伯爵達に言う。
「わかった。
銅鑼を鳴らせ。」
「はっ!」
兵士が小走りに去って行くのだった。
・・
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「ヴァレーリ陛下に対し!総員!敬礼!」
「「敬礼!」」
「「「捧げ!剣!」」」
号令と共に並んでいる兵士達が最敬礼をする。
関から銀のフルプレートを着用し、脇に兜を抱えたヴァレーリを先頭に同じくフルプレートに兜を脇に抱えたアンナローロ、レザー・アーマーを来たドワーフが続き、兵士達が入ってくる。
そして跪いて最敬礼をするパーニ達の前で止まる。
「パーニ、ファロン、ベッリ、立て。」
「「「はっ!」」」
3人が立つ。
「パーニ、見ての通り、到着した。」
「はっ!ご無事で何よりです。
また、戦争の観戦、ありがたく思います。」
「うむ、パーニ、再三言うが、兵士を無駄に失う事は避けるようにな。
それと王軍5000名はこの戦争には参加はせずに観戦という立場でここに居る。
我らの戦力を期待するなよ。」
「はっ!心得ております!
相手に緊張を強いる事を主眼に置き、こちらの兵士の損失をさせないよう努めます。」
「あぁ、そうしろ。
では、1か月世話になる。」
「はっ!陛下、観戦しやすいように櫓を用意しております。
こちらになります。」
パーニがヴァレーリ達を先導して案内をするのだった。
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