第2403話 まだ会議は始まらず。(暗黙のルールがあるらしい。)
ゴドウィン伯爵軍陣内の大きいテント。
まだゴドウィン伯爵とテンプル伯爵が来ていない中でエルヴィス爺さんと武雄が武雄が持ち込んだ地図を見ながら2人を待っている。
ちなみに騎士団長達と兵士長達は現在先んじて打ち合わせを実施しており、終了してからこちらに合流し、首脳陣の打ち合わせをする事になっていた。
つまりはまず現場の認識を騎士団と兵士長とで共有化して、伯爵達の話が変な方向に行かないように配慮をしたいというのが武雄にもわかったので、兵士長達が合流するまでは貴族達4人は雑談でもして待っている事にしていた。
「・・・見るからに大変な事になっておるの。
どう説明するんじゃ?」
「王軍旗、ベッリ男爵軍旗はマイヤーさん達が知っていたとしてさらりと流そうかと。
基本は防戦を主張するしかないのは陛下にも言っています。
エルヴィスさんから変更はありますか?」
「まぁ・・・それしかないの。
わしも防戦を指示する事に変更はない。
旗の件は試験小隊の面々から了承は取っておるのかの?」
「ええ、『仕方ないですよね』と言ってくれています。
まぁ、この戦争が終わり次第、向こうに行きますので、向こうの旗の一覧でも貰って来て、エルヴィス家と王都に送る事にします。」
「うむ、そうしてくれるかの。
ふむ・・・それにしても難しいの・・・」
エルヴィス爺さんが腕を組んで難しい顔をさせる。
「そう・・・ですね。
ま、ここに至っては何もする事はありませんよ。」
「兵士長達にはこの数は言ってないと言う事じゃが。」
「はい、正面から見ているだけなので『聞いていたより多いですね』と言っていますね。
今の所、3伯爵軍共に盾を2列に配備して、正面と斜め上からの攻撃に耐えうるようにしてくれています。」
「・・・そう教えているからの。
正面から兵士の攻撃が来た場合は1列目が隣と隙間なく盾を並ばせ受け、魔法の攻撃が来た場合は斜め上から来るので、1列目は盾を構えて座り、そこに2列目の盾を被せてその下に2列目も入るとしているからの。
これが防御としての基本的な方法じゃよ。」
「そうらしいですね。
それと兵士長に聞きましたが、独特な戦い方をするみたいですね。」
「独特?・・・あぁ、攻撃と迎撃の仕方じゃの。
攻撃する方は攻撃する部隊なりを柵か盾の前に集合させる、受ける方はそれをみて適切な兵士を配置させ当たらせるという奴かの。
攻撃は集合してから20分程度経ってから行われるの。
勝敗としては攻撃側の半数程度が戦線を離脱した場合、自陣に戻って終わりじゃよ。」
「・・・これ戦争なんですよね?」
武雄が若干、呆れながら言う。
「戦争じゃよ。
敵の攻撃の兵種や部隊の練度を見極め、適切な部隊を展開するのがわしらの役目じゃ。」
「受け側の方が有利ですよね?
向こうが用意する兵士より過剰な兵士数を配置すれば良いのですから。」
「ふむ・・・魔王国との関での戦争ではの、『集めてから20分程度経ったら攻撃を開始とする』という暗黙のルールがあるだけじゃ。
となるとじゃ、例えばじゃが・・・向こうの正面に200名が集合し始めたとして、こちらが500名を対応させる為に用意するとするじゃろう?」
「はい、勝てそうですね。」
「しかし、10分後に向こうの右翼の端に200名が集合したらどうする?」
「500名で対処しましょうか。」
「その10分後に左翼で4600名が集合したらどうじゃ?」
「・・・残りは4000名しか居ませんね。」
「うむ、後々に追加があった場合に不足が考えられるからほぼ同数の兵士を用意して対応させないといけないという事じゃ。
その見極めをわしら施政者が行い、フレッドが最終決定をするという流れじゃの。」
エルヴィス爺さんが言う。
「ですが・・・その論理は基本同数の敵が対峙している時に有効です。」
「そうじゃの。
今回は・・・これじゃからの・・・」
エルヴィス爺さんが地図に目をやる。
「事情を知る者としては、両端にいる45体ずつのオーガの使い方が気になりますね。」
「ふむ・・・動く気が無いと言われても勝機があれば動く可能性は十分にあると認識しておいた方が良いじゃろうの。
オーガをどう使うかか・・・さて、どうしたものか・・・あぁーーー・・・はぁ・・・」
エルヴィス爺さんが伸びをしてからため息を吐く。
「失礼する。」
ゴドウィン伯爵がテントに入ってくる。
「親父殿、タケオ、来ていたか。」
「うむ、タケオと話しておった所じゃよ。」
「この地図は?」
「あー、それはあとで皆が集まった時に説明します。
個別に説明するのは手間でしかありませんので。」
「そうか・・・お、お茶があるな。
さて、親父殿、タケオ、打ち合わせは毎日するか?」
ゴドウィン伯爵が自ら用意されているお茶を淹れてエルヴィス爺さんの横に座る。
「・・・え?毎日するんじゃないんですか?」
武雄が驚きながら聞くのだった。
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