第2399話 買い物は日程を調整して。(ハワース商会、動く。)
「ちなみにエリカさんは私と研究所に行きますよ。」
「あ・・・私もあるんですか・・・」
アリスの言葉にエリカが観念した顔で呟く。
「当然です。
と言っても、ヴィクターからの説明やベルテ一家の所に行くのとタケオ様の協力工房巡りですけどね。」
「あ、それは楽しそうです。」
エリカが嬉しそうに言う。
「・・・」
エイミーが「良いなぁ~」という顔をさせている。
「コノハ、エイミーが行きたいみたいなんだけど。」
チビアルが現れて言う。
「最終日には行く予定だったけど・・・買い物日としてね。
それ以外は予定してないよ? それにエイミーとキティは研修後の帰宅途中に寄ってくればいいじゃない。
庁舎までの行きと帰りは王都守備隊が護衛に付くんでしょ?
2人とも庁舎だから場所一緒だしさ。」
チビコノハがアリスの肩に現れて言う。
「一緒に来ないの?」
「毎日は難しいし、研修が終わるのを待ってから合流だと戻ってくるのが遅い時間になっちゃうからね。
帰宅途中に行く方が早く終われるし、私達居ない方が気軽でしょ?」
「そうか。
最終日はタケオの協力工房は行くの?」
「文具屋と服屋と酒屋と雑貨屋に行く予定だよ。
エイミー達はジーナを通じて手にしている物ばかりだよ・・・あ、スニーカーはまだか。」
「スニーカー作ったの?」
「うん、スズネがね。
ハイカットとローカットがあるし、色も数種類あるの。
選べるよ。」
「ほぉ、良いかもしれませんね。」
「あ、それと私達のこのサイズの服も数種類用意して貰ってるよ。
私とかパナちゃんとかはスーツも作ってくれたし。」
「・・・チビサイズのを作ったの?」
「うん、トレンチコートやスーツ、作業服とかあるよ。
皆、同じ場所で頼んでいるし、手際が良いのよ。」
「それも楽しみですね。」
チビアルが頷く。
「とりあえず、数日は研修で疲れるだろうから・・・キティ、後で研修後に行くか打ち合わせしましょうか。」
エイミーがキティに言うのだった。
------------------------
ハワース商会。
「では、よろしくお願いいたします。」
ヴィクターとアスセナが店を出て行く。
「「「・・・」」」
モニカとモニカの父親、モニカの旦那が目で話し合う。
「・・・やるしかないだろ。」
モニカの父親が諦めたように言う。
「いや・・・そうなんだけどさ・・・私にはそういった事を言った記憶ないんだけど。
お父さんは?」
「いや・・・数名を雇ったのは言った。
そして、しっかりと、ちゃんと、絶対に、キタミザト様には動かないようにと言った。
で、これだ。」
ヴィクターから渡された紙をモニカの父親が持ち上げる。
「はぁ・・・木工加工の者と絵画かぁ。
本人確認は紹介状を持って来てくれるとの事だけど。
キタミザト様も戦地に行ってまで人材探ししなくて良いのにね。」
モニカが呆れながら言う。
「キタミザト様的にちょうど良い人材が居たって事ですね。
モニカ、お義父さん、どういう雇用にしますか?
どうも、キタミザト様は個別に特産品になりそうな物を作らせたいようですが。」
モニカの旦那が言う。
「その辺はキタミザト様が帰って来てからだろうな。
木工加工の基礎と絵画の腕前の試験をして、仮採用で3か月、問題なければ本採用だな。
給料的には種族での差はないとする。私達は職人だ、種族ではなく技術で差を付ける。
良い腕で注文が伸びるようなら特別手当だ。」
「「はい。」」
「部屋については、家族の人数もわかっているし、モニカ、明日にでも周辺で安い所を見繕っておくように。」
「近くにあったかなぁ?・・・偏見が無さそうな場所で良い所を探すわ。
で、お父さん、キタミザト様から変な依頼があったわよね?」
「あー、私も思いました。
えーっと・・・砂状の食品を成型する木枠と漆という塗料ですね。」
モニカの旦那がメモを見ながら言う。
「ふむ・・・砂状の食品の成型というのは二対一体の板を指すと思うな。
それぞれに内側に意匠が施されているのなら砂状の物を入れて押し付ければ形が出来るだろう。」
「・・・なるほど、で、何に使うの?」
「そこはわからん。
だが・・・木工加工の職人を選んだ事を踏まえると・・・・大量生産ではないが少し高めの受注生産品という感じに出来るだろう。
例えばビスケットの形が毎回同じのを作れるという感じなのではないか?
生地の状態を押し込んで形を成せば、商品としては価値があると思うが。」
「「なるほど、やる価値は十分にありそう。」」
モニカの父親の考えに2人が頷く。
「それと漆という塗料だったか・・・2人共知っているか?」
「知らないです。」
「私も知らない。
松から取れる樹液や果物の絞り汁を塗るという技法は知っているけど・・・漆というのは聞いた事が無いわ。
お父さんは?」
「同じだ。」
「説明では触れると赤く腫れたり、かゆみが出たりとカブレると言っていましたね。
お義父さん、カブレる塗料は使わないですよね?」
「職人の体調を害する物は使わないようにしている。
だが、依頼とあっては一応、国内で探してみるか。
もしかしたらどこかの村での固有な塗料としてあるかもしれないしな。
王都の知り合いに問い合わせしてみるか。」
「あー、アスカムさんの所ね。
テイラーに教えた時以来ですかね。
カトランダ帝国との輸出入業もしているから知ってるかもしれないね。」
「ああ、よし、方針は決まったな。
何とか商売に繋げるぞ。」
「「はい。」」
モニカの父親の言葉に2人が頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




