第2379話 276日目 出立です。(例の職人に会いに行こう。)
ゴドウィン伯爵邸の玄関。
試験小隊の面々がコンテナ搭載馬車や馬に騎乗をして待っている。
武雄がコンテナ搭載馬車の御者台に居たマイヤーとアンダーセンに近寄る。
「では、マイヤーさん、アンダーセンさん、城門で。
私は所用を片付けて向かいます。」
「了解です。」
「アーキン、お供を頼むぞ。」
「はっ!」
マイヤーとアンダーセンが言うとアーキンが答える。
「出立!」
試験小隊の馬車等が屋敷を出て行く。
武雄が手を振りながら見送る。
「では、タケオ、戦場でな。」
「タケオさん、気をつけて。
お爺さまやうちのフレッド達をよろしくお願いします。」
ゴドウィン伯爵とジェシーが見送る。
「はい。
無理をしないように見ておきますよ。
では、ゴドウィンさんは戦場で。
ジェシーさんは元気な子を産んでください。
泊めて頂きありがとうございました。」
武雄が2人に言い、挙手の敬礼をしてからアーキンと共に敷地を出て行くのだった。
・・
・
「行ったか・・・ジェシーは毎回こんな気持ちなんだな。」
「残る方を体験してみて、何か感じる事があった?」
ジェシーがゴドウィン伯爵に聞く。
「・・・いや、ないな。
俺はこれでも辺境伯で2伯爵に方針を示さねばならん立場だ。
何があっても生き残ると言ってはいけないだろう。」
「まぁ、そうね、辺境伯だものね。
寝室の外では言ってはいけないわよね。」
「・・・今から寝室行って泣き言言っていいか?」
「しょうがないわね・・・少し寝ましょうか。
意外とタケオさん達が来た事で皆も緊張しただろうしね。
次はお爺さまとテンプル伯爵だから・・・息抜きが出来る時にしましょうか。」
ジェシーがそう言ってゴドウィン伯爵と共に屋敷内に入って行くのだった。
・・
・
昨日の露天商の所に武雄とアーキンがやって来ていた。
「キタミザト様、何卒、よろしくお願いします。」
ジンゴロが頭を下げ、その後ろに家族一同が居るのだが、全員頭を下げていた。
「あー・・・まぁ、とりあえず、エルヴィス伯爵領の伯爵邸がある街に向かってください。
城門の兵士にハワース商会に行きたいと言えば、教えてくれるでしょう。
これが紹介状です。」
武雄がリュックからアーキンに書いて貰った紹介状を取り出し、ジンゴロに渡す。
「はい!頂戴いたします。
それで・・・」
ジンゴロが隣で頭を下げている者に顔を向ける。
「こちらの方も?」
武雄が聞く。
「はい!タンユと申します!
絵をかいております!」
タンユと名乗った茶色い犬耳と尻尾の小さめの男性が答える。
「はい、よろしくお願いします。
画家さんなんですか?」
「はい!風景を主に書いております!」
タンユが言う。
「なのですが、今一、絵画の売り上げがよろしくないのです。
彼は炭を使っての絵の具を使っており、濃淡の使い分けが凄いのですが・・・」
「・・・売れないのですか?」
「はぁ・・・扱ってくれる雑貨屋や美術商がおりませんで・・・」
タンユが暗い顔をさせて言う。
「ん~・・・美術品という点では壺はよく見かけますよね。
絵画もあると思うのですが。」
「そうなのでしょうけども・・・水墨画は扱ってくれませんでした・・・
商店で扱ってくれないと貴族や豪商の方々は目もくれません。
金箔もやってみたのですが・・・上手くいかず。」
タンユが言う。
「待ってください・・・金箔?」
武雄が考えながら聞く。
「は、はい!
絵を豪華にすれば扱ってくれるのではないかと思い、金を薄く延ばして紙のようにしてから描いた絵に貼ったのですが・・・絵が金に負けてしまいまして、上手く出来ませんでした。」
意気消沈しながらタンユが言う。
「螺鈿細工と対をなすのは蒔絵細工?・・・確かに、金箔技術があるのなら蒔絵が出来るかぁ・・・」
武雄が考える。
「・・・」
ジンゴロは何も言わずに武雄を見ている。
「ジンゴロさん、蒔絵出来ると思いますか?」
武雄が考えながら呟く。
「技術的には可能かと。
ですが、キタミザト様の考えの通り、漆がありません。
漆を見つけるか代替の物を探さないといけないかと思います。」
「ワニスとニカワはありますよ。」
「それは・・・漆を探すのは出来ませんか?」
「ふむ・・・ハワース商会は材木問屋です。
その情報網を使えば、もしかしたら似た性質のものがあるかもしれません。
ですが・・・漆のアレルギーがねぇ。」
「あれるぎー?・・・とは何でしょうか?」
「漆は肌がカブレるでしょう?
あれは体の拒否反応ですからね、早く言えば漆は毒なんですよ。
そんな物、扱いに慣れていないと病気になってしまう可能性がありますよ。
それに貴方達ですら重度のアレルギーに悩まされる可能性もあります。」
「それは・・・まぁ、そうですが。」
「ハワース商会には漆が無いか確認をして貰いますが、今の所は漆の代替品を探す事を重視しましょう。
似たような性質でアレルギーが無い物が理想ですが・・・とりあえず、今ある物を使って特産品が出来ないか、考えましょう。
ま、とりあえず、まずは家具屋で腕を振るって貰いたいのですけどね。」
武雄が言う。
「畏まりました。」
ジンゴロが頷く。
「タンユさん、ハワース商会は今、内装用の壁紙と言う紙を作っています。
それの意匠を当面はして貰う事になると思います。」
「畏まりました。」
タンユが頷くのだった。
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