第2375話 移動は馬車と幌馬車で。(チーズ鍋とな。)
エルヴィス伯爵邸がある街の城門から結構離れた街道横の広場。
「はぁ・・・着替えて実感、こっちの方がまだ軽くて楽じゃの。」
レザーアーマーに着替えたエルヴィス爺さんが椅子に座ってのほほんとしていた。
「伯爵様、あと15分ほどで出立いたします。」
騎士団の者が言ってくる。
「うむ、皆の着替えは済んだかの?」
「はい、フルプレートからレザーアーマーに替えました。
なんなら胸当てだけでもと言い始める者もいましたが、流石にそれはと。」
「そうか、わしは胸当てだけで良かったかもしれぬの。
この後はコンテナ搭載馬車だしの。」
「はい、念の為に騎士団長と騎士2名も同乗させていただきます。
今、確認中です。」
「うむ、では15分後に移動じゃの。」
「はっ、よろしくお願いします。」
「んん-!さて、コンテナ搭載馬車がどんな乗り心地なのか、試すかの。」
エルヴィス爺さんが立ち上がって体をほぐすのだった。
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ゴドウィン伯爵邸がある街のとあるお店。
「よし、ここの棚のを全部買います。」
「「あー・・・やっぱりですか。」」
「「ははは・・・」」
武雄がチーズが並んでいる棚を見ながら言うとブルックとアーキン、ラウレッタとマヌエルが呆れている。
「主ー、チーズの良し悪しがわかりません。」
「私もこのかけらではわかりません。」
ミアと初雪が言ってくる。
「わからないなら、全部買って混ぜてしまえば良いのです!
ちょうど、チーズフォンデュがしたかったのでね!」
「タケオ、チーズフォンデュですか?
いつ食べたいと?そんな素振りはしていませんでしたが。」
チビパナが言ってくる。
「んー?何となくです。
不意に『チーズ食べたい』と思ったんです。
とりあえず鍋に入れて、溶かそうかと。
たまにそういう時もあります。」
「所長、ほんじゅって何ですか?」
ブルックが聞いてくる。
「チーズを白ワインを使って鍋で溶かしてパンの切れ端や小さめに切った野菜に付けて食べる料理ですね。」
「それって・・・チーズ鍋ですよね?」
ブルックが言う。
「え?チーズ鍋?・・・というのですか?」
「はい、昨日夕食を取った所のメニューにあったので、今日は皆でチーズ鍋の予定です。
ちなみにエルヴィス伯爵邸がある街では、チーズ鍋はあまり流行っていません。
扱っている店もあまりないようですよ。
所長はエルヴィス伯爵邸で食べてないのですか?」
「ないです・・・でてない。
王城でも出てないです・・・」
武雄がショックを受けながら言う。
「あー・・・エルヴィス伯爵があまり好きではないとかではないですか?」
「違うでしょう・・・ただ単に食費がかさむからでしょうね。
まぁ、そこは何とか今後改善して行けばいいか・・・ゴドウィンさんに頼んで今日はチーズ鍋にして貰おうかなぁ。」
武雄が考えながら言う。
「所長は昨日の夕食は何だったんですか?」
「ここの特産であるポクポク肉の燻製の発売前の試作品を頂きました。」
「な!所長!美味しかったですか!?」
「ブルックさん・・・いくらゴドウィン家の方々が私の事を気に入ってくれているとはいえ、私、お客様ですよ?
それも一応、貴族の。
試作とはいえ、美味しくない物を出すと思うのですか?」
「あ・・・それは・・・ないですかね。」
「むしろその状況下で美味しくない物が出てきたらどれだけ嫌われているんだろうと考えちゃいますよ。」
武雄が苦笑しながら言う。
「まぁ、そうですね。」
「ちゃんと美味しかったですよ。
ただ、贈答品として売り出すようなので、少し高めだと思いますけどね。」
「そうですかぁ・・・お高いのですかぁ。」
ブルックがガックリとする。
「その分、美味しいですよ。
元々のお肉も良いのを使っているんでしょうけど、たぶん、漬け込むタレが美味しいんでしょうね。
噛んだ時にジワッと甘めの肉汁が出てきましたし。」
武雄が考えながら言う。
「・・・所長、それ、再現出来ますか?」
「無理でしょう、そもそもポクポク肉がこの辺ではここでしか飼育されていないのですよ?
同じタレが出来たとしても素材が違えば同じ味にはなりませんよ。
大人しく販売された物を買ってください。」
「はぁーい。」
ブルックが諦めながら言う。
「まぁ・・・とりあえず、チーズは買っていきますかね。
戦場でチーズ鍋も良いでしょうし。」
「え?所長、戦地でチーズ鍋ですか?」
アーキンが少し驚きながら聞いてくる。
「え?・・・ええ、ダメなんですか?」
「いえ、ダメとは言いませんが・・・洗い物が大変で・・・す。」
アーキンはそこで初雪が居るのを思い出す。
「残ったチーズですか?
熱々のうちは難しいでしょうが、冷えれば初雪が綺麗にしてくれますよ。
初雪、鍋を綺麗に出来ますか?」
「大丈夫です。
サッと綺麗にしてみせます。」
初雪が自信満々に言う。
「なので、後片付けは気にしなくて大丈夫ですよ。
私としては薪の火力が一定に出来るかですね。
弱火でコトコト煮たいですね。」
「そこは大丈夫だと思います。」
アーキンが言うのだった。
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