第2363話 ゴドウィン伯爵邸で打ち合わせ。2(今回の戦争は怪しい。)
「さて、タケオ、今回の戦争なんだが。
いつもの慣例の戦争なのか?」
ゴドウィン伯爵が聞いてくる。
ジェシーも真面目な顔で頷く。
「・・・。
失礼ながら私はいつもの戦争を知りません。
なので、わかりませんとしか言えません。」
武雄が何食わぬ顔をさせながら出されたお茶を飲む。
「ふむ、そうだったな。
タケオ、今回の戦争は宣戦布告文ではいつもの慣例の戦争なのだ。
だが、時期がいつもと違う・・・約1か月は早まっているんだ。
それにエルヴィス伯爵に報告したら『盾の新調と整備を入念にしろ』という指示と『いつもの布陣位置よりも200m程関側に後退しての陣地構築案』が来た。
こんな事は初めてだ。
エルヴィス伯爵は俺の前の辺境伯を仰せつかっていた程、実力がある。
同数を用意しての模擬戦闘をした場合、俺は未だにエルヴィス伯爵に勝てる気がせん。」
ゴドウィン伯爵が言う。
「とは言うものの・・・タケオさん、お爺さまが訓練している所見た事あるかしら?」
「私が出張続きなので毎日は見ていませんが・・・している所は見た事も訓練の予定も聞いた事ありません。」
「私もそうなのよ・・・フレッドの言葉を聞く限り、お爺さまは凄いみたいなのだけど・・・
家族としてはお爺さまは特に訓練をしていないように思うのよ。
兵士長や騎士団長が日頃しているのは知っているのだけど・・・私のお爺さま像とフレッドのお爺さま像が重ならないのよね。」
ジェシーと武雄が首を傾げる。
「親父殿は腕っぷしではないんだよ!
戦場を見通す目が秀でているんだ!」
ゴドウィン伯爵が言う。
「「ん~・・・」」
ジェシーと武雄が首を傾げたまま唸る。
「信じていないな!
親父殿は防衛をするとなれば徹底して動かない。
相手の挑発にも乗らない。
ジッと耐えるんだよ!
そして動くと決めれば、突撃を躊躇なく命令出来るんだ。」
ゴドウィン伯爵が言う。
「・・・まぁ挑発に乗らないのは凄いですけど。
動かない時に動かなく、動く時動くって普通なのでは?」
武雄が聞いて来る。
「・・・タケオ、そうは言ってもそれは頭で考えているからだ。
戦場に行けば、戦場独特の雰囲気というのもある。
飲まれやすくなるんだ。
タケオもこれから経験するだろう。」
「そこは肝に銘じて注意しましょう。
エルヴィスさんが凄いのはわかりました。
で、指示が来たから何なのですか?」
武雄が埒が明かないと思い続きの話を促す。
「うむ、ついでに陛下からジェシーのエルヴィス伯爵邸への避難要請が来た。
これも今までならされたことが無い。」
「ジェシーさんが身籠ったのが今回が初めてなのですから今まで無いがの当たり前では?」
「違う、過去の戦争でもで、だ。
他領に避難させるなんてなかった。
タケオ、何か知っていないか?」
ゴドウィン伯爵が聞いてくる。
「・・・ん~・・・対魔王国と輸出入業を始めた関係で知っている事もあります。
実際に商隊に紛れて、魔王国の王都に行って見学もしてきたりもしました。
正直に言えば、王都よりも私の方が対魔王国の情報を多く持っています。
そして、見聞きした情報を私は陛下に進言もしてはいます。
進言する程の情報を持っているのです。」
「あぁ。」
「ええ。」
ゴドウィン伯爵とジェシーが頷く。
「今、この国で魔王国の情報を一番持っているのは私と陛下でしょう。
そしてエルヴィスさんは私に相談していて、陛下もその事についてはご存じで対魔王国の情報を2人で考えて良いと言われています。
そして、ある情報を入手して検討をした結果、エルヴィスさんは陣地を後退させ、防具の準備を完璧にしろと言い、陛下はジェシーさんを実家に避難させるようにと言った。
そう言う事です。」
「「・・・」」
武雄がそう言い放ち、ゴドウィン伯爵とジェシーが難しい顔をさせる。
「と、前置きはしましたが、今の時点で言える事は少ないです。
今回の戦争ではいつもと違う事が行われる可能性が高いです。
そしてその情報は今の時点ではゴドウィンさんには言いません。」
「それは・・・俺が信用出来ないから・・・という訳ではないな。」
「信頼云々ではなく、今の情報がすべて正しいという判断をしたくないからです。
情報は所詮、情報です。
今回の私が知り得た情報を元に完璧に対応する方法を用意した場合、万が一、敵が違う行動をした場合に判断が狂う可能性があります。
対応方法を作ってしまえば、この行動は気にしなくて良いという風な感じで私達が安心してしまい、実戦で予定が変わり想定以外の、私達からしたら予期せぬ行動をされると、いつもなら被害が出ないような戦闘でも準備不足で余計な損害が出る可能性があります。
なので、事前情報を渡したくありません。
私もエルヴィスさんも適時助言はするでしょう。
なので、今の時点でお渡し出来る情報はありません。」
「そうか・・・」
ゴドウィン伯爵が武雄の言葉に頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




