第2355話 出立します。(武雄、追加の出張が確定する。)
試験小隊の訓練場。
「なんだか色々と買いましたね。」
ドラゴンになったグローリアに乗り込んでいるヴァレーリとアンナローロを見ながら武雄が言う。
「まぁ、この地に来たらこれぐらい買わないとな!」
ヴァレーリが笑いながら言う。
「地域経済に貢献頂きありがとうございます。」
「なーに、そのうち我が国の物も大量に買ってくれるだろうからな。
問題ない!
アンナローロ、準備は良いか?」
「はい、ダニエラ様。
先程、買い付けた物はグローリア様に乗せました。
ダニエラ様、ダウンジャケット着ますか?」
「そうだな。
空の上は寒いから着た方が良いかもしれないな。」
ヴァレーリがアンナローロからさっき購入したダウンジャケットを受け取り着る。
「流石に少し・・・かなり暑いな。
さっさと出発しよ・・・あ!そうだ。」
ヴァレーリが何か思い出したようで武雄に顔を向ける。
「なにか?」
「あー・・・アズパール王には手紙で依頼したんだがな。
キタミザト殿は慣例の戦争が終わったら魔王国に出向をしてくれ。
デムーロ国との戦争を観戦して貰いたい。
必要経費はもちろんこちらだし、依頼料はしっかりと払うぞ。」
「・・・出向って・・・うちの陛下は何と言っていたんですか?」
「好きにしろという風な事が書いてあったぞ。」
ヴァレーリがにこやかに言う。
武雄は「いや、その依頼に対して『本人の意思に任せる』という返答をして貰っているはずなんですけど?」と心の中でツッコむ。
「・・・はぁ・・・うちの陛下がそう言っていて、ダニエラさんから依頼されたら誰も拒否出来ないですね。
デムーロ国との戦争の観戦ですか。
私が行っても大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。
まぁ、出向と言っても戦闘をしてくれとかそういう事ではない、護衛については、アンナローロと少数だが精鋭を付かせる。
だが、軍での移動だからな、連れてくる人数はあまり多くない方が助かるな。」
「はぁ・・・そうですか。
私はどうやって越境すれば?
慣例の戦争後に関を越えて行くのは些か大変だと思うのですが。」
「そこも大丈夫だ。
迎えに護衛と幌馬車を行かせるからそれに乗って来てくれ。
我からも命令しておくし、王軍の兵士達も付くから関でも問題なく通れるはずだ。」
ヴァレーリが言う。
「わかりました。
用意はしてあるんですね・・・」
「当たり前だ。
貴国の王に依頼を出した時点でキタミザト殿とその随行員の安全は確保しないといけないからな。
まぁ、それでキタミザト殿に観戦に来て欲しいというのは戦争の全体を客観的に見る者を置きたいからだ。
今回の全軍出動は数では有利であるし、策も弄している。
かなり有利に進められるのは確かだ。
だが、各々の指揮官や大隊長は仕事に忙殺されるだろうからな、近場は見れても全体が見渡せる事は難しいと思う。
後々の為に全体はこうだったという報告書を書き記しておく必要がある。
そこで!だ!」
ヴァレーリが言いながら武雄を見る。
「・・・はぁ・・・そうですか。
書くのはしませんが、全体を見ながら意見を言えば良い・・・程度ですか?」
「うむ、報告書を書くのはアンナローロがする。
キタミザト殿は忌憚のない意見を言ってくれれば良い。」
「はぁ・・・わかりました。
戦争を見て、好き勝手に意見を言えば良いという楽な仕事なんですね。」
「うんうん、楽な仕事を用意したぞ。」
ヴァレーリが言う。
「よし!キタミザト殿も来てくれるようだし。
我らは帰るか。
キタミザト殿、次は戦場で。」
「はい、お気をつけて。」
「うむ、アンナローロ、出立するぞ。」
「問題ありません、陛下。」
「うん、グローリア殿、王都に戻ろう。」
「グルゥ!」
ヴァレーリとアンナローロを乗せたブラックドラゴンが飛び立つ。
そして試験小隊の訓練場の上空を一周して魔王国方面に戻って行くのだった。
「・・・主、どうしますか?」
ヴィクターが武雄に聞いてくる。
「はぁ・・・うちの陛下の『本人の意思に任せる』という返答が『好きにしろ』と捉えられてしまいましたね。
断って駄々をこねられるのも面倒ですよ。
今回の慣例の戦争の参加について、長期出張が追加ですね。
デムーロ国かぁ・・・ヴィクター、研究所に戻って、デムーロ国の事を聞かせてください。
前の魔王国に行った際に地図では見ていますが、実情はどうなのか知りたいです。」
「畏まりました。
ですが、私もそれほど実情を知っている訳ではありませんが、よろしいですか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「現時点でヴィクターより実情を知っている者は我が国には居ませんよ。
それに概要程度でもわかっていれば、現地に行った際に思いつく物があるかもしれませんしね。」
「畏まりました。
なら・・・2時間後に所長室でお願いします。
その間に思い出せるだけ思い出しておきます。
主はその間にエルヴィス伯爵様とアリス様に報告をされた方が良いと思います。」
ヴィクターが言う。
「そうですね。
はぁ・・・やっぱり行く事になったか・・・陛下に愚痴の手紙を書きますかね。」
武雄が諦めながら言うのだった。
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