第2348話 魔王国からの依頼。1(奴隷を見つけたら保護して欲しい。)
昼食後のエルヴィス伯爵邸の客間。
エルヴィス爺さん、武雄、アリス、ヴァレーリとグローリアで会談をする事になり、ビエラ達は昼寝の為に部屋に戻って行っている。
エルヴィス家兼キタミザト家の書記はヴィクター、魔王国側の書記はアンナローロ、全員のお茶等を出すのをフレデリックがする為に客間に居る。
「いやぁ~、エルヴィス伯爵殿、やはり米はここで食べるのが一番だ。
毎回、驚きがある、ここの料理人は本当に素晴らしい。」
「キタミザト殿よりエルヴィス伯爵殿が料理のレシピを街の者達に無料公開したと聞き、感心いたしました。
種族問わず、こういった事が出来る者は少ない。
素晴らしい治政をされておられる。」
ヴァレーリとグローリアがエルヴィス爺さんを褒めていた。
「いえいえ、キタミザト子爵の方が凄いのです。
これらを発想するのですからね。」
エルヴィス爺さんが言う。
「うむ、だが、それを作れる料理人を抱えているという人を見る目と集まる人望、街に無償提供するという政策を実施する胆力・・・中々にエルヴィス伯爵も優秀だ。
対してる我らからしたら喜んで良いのやら恐れれば良いのやら。」
ヴァレーリが笑いながら言う。
「最近は少なくなったが、短命な人間種は何も出来ないと馬鹿にする者達に見せたい物だな、ヴァレーリ殿。」
グローリアがヴァレーリに言う。
「まったくだ・・・確かに短命というのは1つの欠点なのかもしれん。
だが、だからこそ努力するものなのだろう。
そこは大きな長所だな。」
「ありがとうございます。」
エルヴィス爺さんが言う。
「うむ、さて、今日来た用件なんだが・・・まずはこれを読んでくれ。」
ヴァレーリが武雄とエルヴィス爺さん、アリスの前に紙を置く。
「「「失礼します。」」」
3人が書類を見る。
「「・・・」」
武雄とエルヴィス爺さんが難しい顔をさせて見ている。
「ヴァレーリ様、これは拠点強襲と書かれておりますが?」
アリスがヴァレーリに聞いてくる。
「アリス殿、この場は非公式であり、我は遊びに来た者でしかない、我の事はダニエラで十分だ。
それと『殿』で構わない。」
ヴァレーリが言う。
「はい、失礼しました。
ダニエラ殿、この拠点強襲とはなんでしょうか?」
「読んでの通り、我が国内の奴隷商の拠点の一斉強襲計画だ。
渡したのはその概要のような物だ。
具体的にどこをどうやってとは書いていない。
だが、実施はする、これは裁可したからな。」
ヴァレーリが言う。
「ふむ・・・実施が9月5日ですか。
慣例の戦争中で・・・いつもなら終盤ですな。」
エルヴィス爺さんが紙を見ながら言う。
「ダニエラさん、これを持ってきたという事はこちら側でして欲しい事があるのですね?」
武雄がヴァレーリに言う。
「うむ、概要の通り、拠点の殲滅を行う。
1か所に付き1個中隊、200名が参加する予定にしているのだが・・・計画上、その場から逃亡者はいないと想定はしているが、抜けがあるだろうとも考えている。
でだ、強襲をする日の前後の状況下を見ると東側と南側の領主達は動かないし、パーニの所・・・そちらではゴドウィン伯爵だったな。
そこには我も居るし、部下もたくさん居る。
だが、1か所、領主不在で兵が少なくなっている地域がある。」
ヴァレーリが言う。
「ファロン子爵領ですね。」
アリスが言う。
「うむ、馬鹿正直に関間を越境する事はない・・・とは思う。
山か森を使い越境するだろう。
ちょうど、エルヴィス伯爵殿も大多数の兵士も不在だしな。
越境して行方を眩ませるのに適している。」
ヴァレーリが言う。
「国内で奴隷の輸送を発見したのなら魔王国側に送り返す事になっていますが・・・」
エルヴィス爺さんが言う。
「うむ・・・奴隷を預かっておいてくれないか?
奴隷商の方は送り返してくれて構わない。」
ヴァレーリが言う。
「それは・・・」
エルヴィス爺さんが難しい顔をさせる。
「・・・子供達を保護した後に王都の方で奴隷契約条項の改正案が可決されています。
施行しているかは・・・あとで確認しますけど、確か『奴隷商が人間換算で未成年の奴隷を連れていた場合、交渉し一時的に保護もしくは雇用をする事を認める。』だったと思います。
子供達なら保護出来ますが・・・成人している奴隷は今まで通りの対応しかできません。」
武雄がヴァレーリに言う。
「ふむ・・・どうしたものかな・・・」
ヴァレーリが腕を組んで考える。
「・・・お爺さま、関を通らないで入国している為、不法滞在ですよね?」
アリスが考えながら言う。
「うむ、そうだな。」
エルヴィス爺さんが頷く。
「お爺さまが不在の為、送還手続きが遅れているとして奴隷商も奴隷も拘留すればよろしいのでは?
少なくともお爺さまが戻ってから審査を開始するとして日数を稼げるかと思います。」
「・・・苦しい言い訳だな・・・それしかないのかもしれないな。
それに拘留する場所も食料もそんなにはないから準備はしておかないといけないな。」
エルヴィス爺さんが頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




