第2345話 266日目 いつも突然ですね。(気軽に遊びにくる陛下とロード。)
昼前の試験小隊の訓練場。
「はぁ・・・」
「あー・・・」
「きゅー・・・」
武雄とビエラ、クゥが深いため息をついていた。
なぜ、3人がため息をついているかと言うと。
2日前にビエラが「親に呼ばれたから行ってくるねー」と成獣状態で散歩に出かけ、持って帰って来た手紙が起因だった。
「タケオ、ごみぇん。」
ビエラが申し訳なさそうに言ってくる。
「ビエラが悪いわけではありません。
まぁ・・・しょうがないんだけど・・・はぁ・・・」
と、試験小隊の訓練場の上空を1体のブラックドラゴンが旋回し、武雄達を確認して、降りてくる。
「よいしょっと。
キタミザト殿、久しいな。」
着陸したドラゴンから降りて来たメイド服姿の女性が言う。
「ダニエラさん、お久しぶりです。
私、忙しいんですけど。」
「知っているよ。
でも、来たかったんだ!すまん!」
ヴァレーリが笑顔で謝罪してくる。
「はぁ・・・この度はうちの陛下がとんだご迷惑を・・・」
ヴァレーリの後に大き目の木箱を持って降りて来たこちらもメイド服姿の女性が頭を下げる。
「アンナローロ殿・・・はぁ・・・」
「本っ当に!すみません!
それとダニエラ様が『さん』付けですから私も『さん』で結構です!」
アンナローロが思いっきり頭を下げる。
「キタミザト殿、久しぶりだな。」
人間状態になったグローリアが言ってくる。
「お久しぶりです。
グローリアさん。
・・・前回も聞きましたが、本当に『さん』付けで良いのですか?」
「構わん、1人くらい『様』や『殿』を付けない軽い感じの話し方をする者が居た方が良いものだと前回わかったからな。」
グローリアが言う。
「他の者達は『様』と『殿』、どちらで呼ばせますか?」
「『殿』でお願いする。」
「・・・では、私以外は『殿』を付けます。」
「うむ、そうしてくれ。」
グローリアが頷く。
「あ、そうだ。
ここに来る途中にレバントおば様の所に寄ったらこれを持って行ってくれと言われてな。
アンナローロ。」
「はい、こちらになります。」
アンナローロが木箱の蓋を開ける。
「・・・これは、サツマイモですね。」
武雄が言う。
「ん?サツマイモ?レバントおば様が言うには『紅甘』と言うジャガイモらしい。」
「そうですか。」
「甘いジャガイモなんだそうだが、作付けすると害獣被害が凄いらしいんだ。
対策をしていても結構、畑が荒らされるらしくてな。
・・・収穫はあまり出来ないらしい。
シモーナ殿の所にも寄って箱を降ろしてきたぞ。
レバントおば様とシモーナ殿から請求書は後日送ると言っていたし、レバントおば様はこれを入手するのに自分用のウォルトウィスキーを放出したそうだ。
その分の補填をとも言っていたな。」
ヴァレーリが言う。
「わかりました。
請求が来たら対応しますし、これの入手は私もお願いしていましたしね。
商売で送っている物との別口でしっかりと補填しておきます。
紅甘ですね、わかりました。」
武雄が頷く。
「さてと・・・ご要望の米料理ですが、用意は出来ています。」
「うむ。」
「楽しみだ。」
ヴァレーリとグローリアが頷く。
「・・・今回は趣向を変えて、エルヴィス伯爵邸と私の使う喫茶店でしか出せない料理にしました。」
「「ん?」」
「契約上、レシピは非公開となっておりますので、教える訳にはいきませんが、ほとんどの方に美味しいと言って頂けている料理になります。」
「「ほぉ。」」
2人が頷く。
「ビエラはお米を器で3杯は食べてしまうぐらいですよ。」
「タケオ、カレー、美味しいの!食べるの止まらないの!」
ビエラが抗議してくる。
「「かれー?」」
「はい、アズパールカレーと言います。
元々はこことは違う地域の一宿泊施設の食堂で出されていて、レシピは門外不出だったのですけど。
私は契約出来ましてね。
私の住んでいる所とお店では出して良いとなっています。
なので、他の方にレシピは非公開となっています。」
「ふむ・・・国名が付くほどの料理という事か・・・」
「期待してしまうな。」
2人が頷く。
「とりあえず、伯爵邸にお越しください。
昼食を先にしますか?会談を先にしますか?」
武雄が2人に聞く。
「「昼食が先!」」
2人が言う。
「わかりました。
アンナローロさんも問題ないですか?」
「はい、大丈夫です。」
アンナローロが頷く。
「では、ご案内します。
と、紅甘を持って行かないといけませんね。」
武雄が木箱を持ち上げて城門に向かい歩き出すとヴァレーリ達も後を追うのだった。
・・
・
エルヴィス伯爵邸の玄関。
「「「「いらっしゃいませ、お客様。」」」」
子供達が横に並んでヴァレーリ達を出迎える。
「うむ、大きくなったな!」
ヴァレーリが子供達の礼を見ながら言う。
「はぁ・・・数か月しか経ってないのにそこまで大きくなっていませんよ。」
武雄が呆れながら言う。
「お?まだそんなか?
だが、前よりも背筋が伸びて大きく見えるぞ!成長著しいとはこの事だな!」
ヴァレーリが楽しそうに言う。
「ヴァレーリ様、お久しぶりでございます。」
アリスがヴァレーリに綺麗な礼をする。
「アリス殿、久しぶりだ。
あー・・・我の事はわかっておるな?」
「はい、夫よりヴァレーリ陛下、ドラゴンロードのグローリア様の事は聞いております。」
「そうか・・・すまんが、今日は頼む。」
「はい。
グローリア様、お初にお目にかかります。
キタミザトの妻、アリス・ヘンリー・エルヴィスにございます。」
「うむ、アズパール王国で名が轟いていると聞いている。
私はビエラの親でドラゴンロードのグローリアという。
殿付けで頼む。」
「畏まりました、グローリア殿。」
アリスが言う。
「うむ、我が子ビエラと孫のクゥの面倒を見て頂きありがたい。」
「いえ、面倒などございません。」
アリスが言う。
「アリス、まずは昼食を取る事になりました。」
武雄が言う。
「はい、厨房も用意している最中です。
昼食後に祖父であるエルヴィス伯爵も参加し、会談するという事でよろしいでしょうか。」
アリスが武雄に言う。
「それでお願いします。
エルヴィス伯爵は?」
「本来なら一番最初にご挨拶をするのが礼儀だとはわかっておりますが、まずはゆっくりと昼食を取って頂いてから挨拶をさせて頂きたいと申しております。
ヴァレーリ陛下、グローリア殿、よろしいでしょうか?」
アリスがヴァレーリとグローリアに言う。
「うむ、あくまで非公式でこちらからの要件で伺ったまでだ。
挨拶は後ほどで良いとおっしゃられるなら、我らはそれに従おう。
我は問題ない。
グローリア殿も大丈夫だな?」
「うむ、今日はヴァレーリ陛下のお付きのような物だ。
ヴァレーリ陛下が大丈夫なら、私も大丈夫という事だ。」
「わかりました。
昼食は私も一緒に取らせていただきます。
アリスはエルヴィス伯爵と一緒に後ほど参加してください。」
「わかりました。
ヴァレーリ陛下、グローリア殿、失礼します。」
アリスが礼をして玄関を後にする。
「まずは食堂で昼食を食べましょう。」
「「うむ。」」
「はい。」
武雄達はまず食堂に向かうのだった。
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