第2338話 ベッドフォードの青果屋にて。(順調、順調。)
武雄が去ってからのハワース商会。
「ただいまぁ。」
「戻りました。」
モニカとモニカの旦那が店内に入ってくる。
「おぅ、おかえり。」
モニカの父親が2人に声をかける。
「2人が留守の間にキタミザト様が来たぞ。
はぁ・・・モニカ、キタミザト様から逃げるんじゃない。」
モニカの父親が呆れながら言う。
「逃げてない。
居ない時に来るだけ。」
モニカが口を尖らせながら言う。
「それでキタミザト様は?」
モニカの旦那が聞いてくる。
「現状の話をしただけだ。
黄銅を施した家具を楽しそうに見て行ってくれた。
あと壁紙のアイデアを置いていったぞ。
まったく、あの方は不意に思い付くから恐ろしい。」
モニカの父親が笑いながら言う。
「そうですね。
こっちとしてはやはり酒場やレストランで耐火板の需要がありそうですね。」
「そうか・・やはり、売れそうだな。
一緒に行った改修を専門にする親方の意見は?」
「そっちも一緒。
ただ、実績が少ないのと耐火の試験がわかり辛いという事で持ち主に説明が大変そうだと言っていたわ。
試験と言ってもどうやるか・・・どうする?」
「ふむ・・・営業は続けよう。
だが、何か試験を実施して親方連中に見せる必要があるな。
エルヴィス家に試験の場所を貸して貰えるように言っておかないといけないだろう。
まぁ火事を起こすような物だ、魔法師部隊をお借りして消火して貰わないといけないだろうしな。」
モニカの父親が言う。
「そうだね。
実施は戦争後だろうけど・・・エルヴィス家の文官方に相談してやる内容を決めた方が良いかもね。
なら、それ私がやるよ。」
「私は営業を続けようかな。」
「2人共頼むな。」
ハワース商会は着々と動いているのだった。
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ベッドフォードの青果屋の奥。
「あ!忘れてた!」
「うん?どうしました?キタミザト様。」
お茶を持って立ち上がった武雄の向かいに座り、お茶を飲んでいるベッドフォードが聞いてくる。
「さっきハワース商会に行っていたのですけど、冷蔵箱を注文するの忘れました。」
「冷蔵箱とは?」
「箱を正面から開けられるようにして中に棚を作って、上に氷を置き、下に野菜や飲み物を入れて冷やす箱の事です。
ベッドフォードさんの所でいうと野菜とか果物を入れておけば、2、3日鮮度が保てる感じです。」
「ほぉ・・・氷か。」
「ええ、魔法師が必要で常に上に氷を入れて置き、溶けた氷の水を外に出す方法を取らないといけないという、明らかに一般家庭には不向きな商品を頼もうと思ったんです。」
「キタミザト様、自分でそれを言うのですか?」
「言いますよ~、客観的に見て面倒が多い物ですからね。
でも食材を冷やせるというのは料理人にとっては良い事もあるのでね。
作る価値はあります。
その試作品を頼まないといけないなぁ・・・と、ずっと思っていたんですよ。」
「ずっと思っていて、今まで忘れていたのですか。」
「ええ。」
武雄が返事をする、
「緊急じゃないということなんでしょうな。」
「です。
帰りに寄りますかね。」
「思い出したのならすぐ行くべきでしょう。
また忘れてしまうだろうし。」
「そうします。
ベッドフォードさんの所は特に今は問題はないのですね?」
「あぁ、エルヴィス家向けもキタミザト家向けも納入は終わっているし、売り上げも良いですから。
あ、そうだ、中濃ソースですけど、南町の業者が欲しがっていましたよ。」
「南町の?」
「キタミザト様が王都に行っている間に領内に配達する量を決める会議があったんです。
各町局長と取引先の人達が見学に来て、南町はウスターソースより中濃ソースを多めにすると言ってたんだ。」
「・・・ふむ・・・揚げ物用に作ったつもりですが、何かあるのですかね?」
「さて。
ですが、ゴドウィン伯爵領とウィリアム殿下領から商隊がまず訪れる所でしょう?
だから、珍しい物を出したいんじゃないでしょうか?」
「・・・ま、楽しみに取っておきましょう。
工場の拡大は?」
「ぼちぼちと進めていますよ。
領内向けまでは今の規模で出来るでしょうが、領外にも本格的にとなったら拡大することにします。
文官方が試算していますよ。」
「・・・ベッドフォードさん、それで良いのですか?」
「仕方ないんですよ、俺が試案するよりも文官方がした方が正確なんだから。
新工場は違う所になるかも・・・この表通りでは他の商店に迷惑がかかりそうだし。」
「そうですかね?
分散させるのと、ここに集約するのとで良い所も悪い所も両方ありますけど、私的にはこっちに集約した方が良いと思います。」
「キタミザト様はそう思うのですか?」
「私はそう思うだけです。
分散して生産しても良い事はありますし、悪い事もあるでしょう。
どちらにするかはベッドフォードさんが決めれば良いです。
私はどうのとは言いません。」
「だが、キタミザト様ならここを広くすると?」
「私ならそうしますね。
この街全体を考えれば、分散した方が良いでしょうけど・・・ここの従業員が多くなれば行き帰りで表通りの店を見て買い物をするでしょうし、商隊関係での宿泊も多くなるでしょうから今作っている宿も近場にあって潤いそうです・・・この地区にとって良い事だと思います。
ま、ベッドフォードさんと文官の方で話し合ってください。」
「ふむ・・・考えてみます。」
ベッドフォードが考えながら言うのだった。
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