第2335話 ローチ工房へ遊びに行こう。(クローイさんに新たな研究課題をあげます。)
ローチ工房の店先にて。
いつもより多い職人達が動き回って幌馬車の点検や組み立てをしている光景を武雄とローチが見ている。
「・・・繁盛していますね。」
「はい、おかげさまで伯爵様達からかなりの量の仕事を頂いています。
・・・期日までにはしっかりと納入します。」
「そうですか。
無理のしどころでしょうか?
倒れないようにお願いします。」
「はい、心得ています。
前回までは私達だけでしたが、今回はハワース商会からも応援に来て頂いています。
いつもより早く終わらせる事が出来る予定です。」
「モニカさんの所からですか。
協力体制が出来ているのなら安心ですね。」
「はい。
それと伯爵様の方からキタミザト様の特殊コンテナ搭載馬車の注文検討依頼が来ました。
どうされますか?」
「どれですか?」
「宿泊をする個室の方です。
今回の伯爵様用に用意したいと。」
「・・・んー・・・私はまだ見ていませんが、エルヴィス家の者が見たのですか?」
「いいえ、個室の方は手直しをしている最中ではあります。
ですが、既に納入している特殊コンテナ搭載馬車の試験小隊の方の訓練をされているのを見ていらしたようで。
初回は私やキャロル殿も居たのですが、他の日に見に行ったようです。
簡単に部屋が作れるのが好評を得たようです。
伯爵様専用のテントの設置も結構大変なのだそうです。」
「ふむ・・・エルヴィス家なら大丈夫でしょう。
納期は大丈夫なのですか?」
「はい、伺っている納期は7月27日です。
今なら間に合います。」
「要望があるなら売ってくれて構いません。
総監部か軍務局の管轄でしょうから話し合って売ってください。」
「畏まりました。
話を進めます。
それと王都へ1台・・・コンテナ搭載馬車をとの事でしたが、ベアリングはどうしますか?
輸送能力的には劣りますが、幌馬車に使っている普通の物にしますか?」
「ふむ・・・卸先は王城の総監局ならびに王家専属魔法師部隊の研究部署です。
ベアリングもコンテナ搭載馬車の一部として扱ってくれるでしょうし、私に内緒で複製はしないとは思いますけど・・・長距離の運用していませんよね?」
「はい、今回のキタミザト様の戦地への搬入が実地試験になります。
予備品も多く渡しました。
工房の意見としては、大丈夫と言いたいのですが・・・」
「まぁ、荷物は載せないで空の状態のコンテナ搭載馬車の移動ですから王都までは保ちそうですが・・・
まずは強度試験をするだろうし、足回りは後々で良いかなぁ・・・うーん・・・コンテナ搭載馬車の見積もりは用意出来ますか?」
「はい、可能です。」
「なら、ベアリングなしの通常の足回りで作るコンテナ搭載馬車の見積もりをください。
一応、キタミザト家を経由した方が良いかな?
今、キタミザト家に費用請求が来ているのは、エルヴィス家とキタミザト家用の見積もりとして扱います。
なので、今回必要なのは領内に卸した時用の見積もりをください。
そこにキタミザト家で王都までの手数料等々を乗せて、王城に伺いをします。
今の段階では領外の事は考えなくて良いですよ。
ま、どこかの段階で移管すると思いますけど。」
「わかりました。
では、見積もりが出来次第お届けします。」
「はい、お願いします。」
武雄が頷くのだった。
「キタミザト様!ご用意が出来ました!」
「よろしくお願いします!」
ダンとクローイが店の奥からやって来て武雄達に言う。
「はい、わかりました。
なら、ローチさん、行って来ます。」
「はい、よろしくお願いします。」
武雄はローチから離れ、ダンとクローイと共に店の奥に行くのだった。
・・
・
ローチ工房の会議室。
「では、打ち合わせをしましょうか。
その前に・・・もしかして聞いていると思いますけど、人工湖の竣工が遅くなりそうです。
これは慣例の戦争によるものが大ではありますけど、エルヴィス家に頼っているのでここの部分が遅れると言われてしまうとわかりましたとしか言えません。」
「「はい。」」
ダンとクローイが返事をする。
「どのくらい遅れるのかはこれから報告が来るでしょう。
で、私達は遅れるというのは不安材料ではありますが、不安に思ってもどうしようもないという現実があります。
なので、納期が延びた事で色々と検討や試験が出来ると前向きに考えようと思います。」
「「はい。」」
ダンとクローイが返事をする。
「クローイさんのクレーン建造の方はどうですか?」
「はい、エルヴィス家からの融資の件はまだ・・・資料提出はしていますが、慣例の戦争で少し審議が遅くなると言われているようです。」
「なるほど。
なら、少し手が空いていますか?」
「はい、大丈夫です。
何かありますか?」
「ええ、チェーンブロックという物を考えてくれますか?」
「ちぇーんぶろっく・・・ですか?
それはどういった物ですか?」
「簡単に言えばクレーンの構造を簡素化して200kg程度を持ち上げられるようにした工具ですね。
チェーンブロック自体を持ち運べて、天井か簡易的な櫓を建ててそこに吊るして使用したいのです。」
「持ち運び式のクレーンみたいな物ですね?」
「ええ、ゆくゆくは幌馬車の荷台に搭載出来るアームか何かを用意して荷下ろしがしやすくする事も考えられるのでね。」
武雄がクレーン搭載型トラックのような事を言いだす。
「・・・わかりました。
どなたかに聞きに行ってもよろしいですか?」
「あー・・・なら、第二研究所の研究室の鈴音に聞きに行ってください。
概要は教えておきます。
居ない間に試作まで出来るかな・・・サテラ製作所のキャロルさんにも相談して試作するなら試作して結構です。
費用は金貨20枚が上限で何とかしてと言ってくれれば良いです。」
「畏まりました。
お受けいたします。」
クローイが言うのだった。
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