第2334話 キャロルの所に視察に行こう。(ハワース商会向けの工作機械が出来たそうだ。)
キャロルのサテラ製作所。
武雄が遊びに行ったら、何やら最終試験をしていたので立ち会ってみた。
ギュィィィィィィィギァオオオオオ、ギュィィィィギァオオオオオ、ギュィィィィ
職人が木の板を次々に縦に切っていく。
「・・・」
武雄は真顔でその様子を見ている。
「ミシンの駆動部を使って円形のノコギリを回転させています。
ノコギリの方を固定し、板を奥に押すと切っていく方法を考え付きました。
難点は直線しか切れない事です。」
キャロルが言う。
「・・・」
武雄は何も言わずに頷きながらも目は切る所を凝視している。
「また切る幅については、板を切る方向に平行で棒を据え付けておき、そこに端を当てながら押す事で真っ直ぐに切れるようにしています。
この当てる棒は位置を調整出来る為、色々な幅を均一に出来るようにしています。
一番短く100mmまでこの装置で切れます。
それ以上の幅を狭くするのは別の小型の円形のノコギリが回転する物を使います。」
キャロルが言う。
「・・・キャロルさん、安全装置は?」
武雄が装置を見ながら聞く。
「はい、木材を押していく時に手が引っかからないようにするため、押す際には職人が持っているような指先を覆う鉄製のカバーを端に被せ、そちらを押します。
押す際にはカバーより先に指や手が出ないようになっています。」
「円形のノコギリの方にも安全装置を付けてください。
刃の手前に簡易的で良いので柵のようなカバーを設けて、万が一、押している際に指が押すカバーよりも先に出た場合でも柵で止められるように・・・とか。
サテラ製作所やハワース商会、ローチ工房といった、この街に居る者は『近くにケアが出来る者が居るからこの程度でも大丈夫』と言うかもしれませんが、今後の販売でそういった者が常駐しない地域に卸す事も想定出来ます。
安全策は2重、3重に検討をしてください。
長い時間をかけて育まないと物に出来ない職人の感覚は指や手で成り立ちます。
感覚という技術を守りなさい。」
「はっ!畏まりました。
説明書にもその旨を記載させます。」
キャロルが頭を下げながら言う。
「・・・それにしても製材機・・・この場合は木工用鋸機の主要部が丸鋸かぁ・・・帯鋸が来ると思っていたのですけどね・・・
あ、丸鋸の方がメンテナンスや交換がしやすいのですかね?」
武雄が装置を見ながら首を傾げながら呟く。
「オビノコ?・・・とは?」
キャロルが目つきを鋭くして聞いてくる。
「え?・・・あー・・・帯状のノコギリを帯鋸と言います。
ちなみに今回の円形は丸鋸と言うと考えています。
大きく捉えれば、皆さんが普通に木を切る際に使っているノコギリも帯鋸の1種と言えるかもしれません。」
「ふむ・・・普通のノコギリが上下に動くのですか?」
キャロルが考えながら言う。
「違いますよ。
普通のノコギリの刃の部分・・・20mmくらいの深さで長さ・・・1mくらいで終端をくっ付けてわっかにしてそれを一方方向に回しながら木材を切っていく方法です・・・えーっと・・・」
「黒板をすぐに!」
キャロルが近くに居た職人に言う。
「はい!只今!」
職人が大急ぎで黒板を持ってくる。
「はい、ありがとうございます。
えーっと・・・ここに木材を加工する座面があるでしょう?
で、ここから下に垂直に持って行って・・・下で上方向に行って・・・で上に行ってから加工する面に戻ると。
この一連の動作で回りながら切れるという訳ですよ。」
武雄が簡単に楕円の線を書きながら説明する。
「キタミザト様、その帯鋸の良い所は何でしょうか?」
「ん~・・・放熱性ですかね。
物を切るというのは熱を帯びます。
それは普通のノコギリでもそうです。
木を切るとノコギリ自体が熱くなり、切れる精度というか・・・切れ味が悪くなります。
ですが、帯鋸は切ってから再び同じ箇所で切るのに丸鋸や普通のノコギリよりも空気に触れている時間が長い為、熱くなったとしても冷やされて少し切れ味が回復します。
なので丸鋸よりも長い時間使えるという事はあるでしょうね。」
「なるほど。」
キャロルが頷く。
「丸鋸は保守性が良いですよね。
切れ味が悪くなったらすぐに交換するとか出来ます。」
「丸鋸と帯鋸で良い所があるという事ですね。」
「ええ、まぁ色々と試しながら使用用途を決めて行ければ良いですけど、今の所、丸鋸ですね。」
「はい、これに安全対策を施した物をハワース商会に卸します。
鉛筆の製造に使うという事です。」
「鉛筆の材料の切り出しが手でやるよりも早くなりそうですが・・・
キャロルさん、どのくらい早くなりますか?」
武雄が聞く。
「そうですね・・・切る工程だけで言えば、10倍は手で切るより早く出来るでしょう。
今はこれだけですが、考えている事を言えば、一枚の板から一回装置に通すだけで、鉛筆の横幅で何個も作る事が出来たら良いなと思います。」
「なるほど、丸鋸の刃を等間隔で何個か設置して・・・という感じですかね。」
「はい・・・それにしても丸鋸と帯鋸ですか・・・今後も研究を続けていきます。」
「ええ、お願いします。」
武雄がキャロルに言うのだった。
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