第2332話 262日目 寄宿舎の1年生達は。(例の村の再建計画。)
寄宿舎の食堂。
「「「んんん~・・・」」」
グレース、イーデン、カイルが頭を悩ませていた。
「夕食後は最近、この光景ね。」
エイミーが呆れながら見ている。
「皆、賞金目当てですから・・・真剣なんでしょうね。」
スミスが苦笑しながらエイミーの横に居る。
「エイミーお姉様!すぐにスミスを仲間に引き入れて!
こっちの人員はこれですよ!?
私達3人では良い案が出てきません!
スミスをこっちにください。」
グレースがエイミーに言う。
「「・・・ないんですよ・・・」」
イーデンとカイルが難しい顔をさせてながら言う。
「ははは、残念だったわね。
公募の要件にグループで出して良いと書いてあったからね。
すぐに優秀な人材を確保に走ったわ。
それにこういった提案は人数が居れば良いという物ではないわよ。
2人か3人でした方が良いのよ。
それにグレース達とスミスでは育った環境が違い過ぎて、スミスの案がそのまま通っちゃいそうでしょ?
グレースは知識はあるけど、村という物がどういう物かの経験がないし、アルダーソンとボールドは施政者としての考えがまだまだ足りない。
これはグレース達の良い訓練になるわよ。
3人で考えて提出しなさい。」
エイミーが言う。
「くっ・・・私達に知識も経験も足らない事はわかりますけど。
エイミーお姉様なら1人でも提案出来るでしょう?」
「出来るわね。
私、村づくりした事あるし。
でも、今回は私に直接聞きに来ていない時点で私がやったような事ではない事をしたいと思うのよ。
なので、施政者として村々を見ていてスミスと考えを出し合って提案をしようと思ってね。
人員の採用は早い者勝ちよ?
同じ1年だからと言って一緒にするのが当たり前と思っちゃダメよ。」
エイミーが言う。
「エイミーお姉様、スミスといっ」
「それにね、下手に経験があると常識に囚われて無難な提案しか出来ないと思うわ。
グレース達はあまり常識に囚われないで割と理想の村を書いた方が良いと思うのよ。
1年生なら詳しくはまだ学んでいないしね。
今、学んだ事を元に王都の為になる村は何なのかを提案するべきよ。」
エイミーがグレースの言葉に被せながら言う。
「ん~・・・理想の村ですか。」
「「理想の・・・」」
3人が考える。
「エイミー殿下、まだ僕達は何もしていませんが、僕も理想の村を書いた方が良いのでしょうか?」
スミスがエイミーに聞く。
「そうねぇ・・・スミス、率直に聞くけど、スミスの理想とタケオさんの発想どっちが思いもよらないと思う?」
「タケオ様ですね。
特に行動力が合わさっているのが脅威です。
思いもよらない行動をしますから。」
スミスが即答する。
「そうよね。」
「西側の国に出張に行ったらウスターソースは買いつけてくる、カレーのレシピを持って帰ってくる。
しまいには奴隷を部下にしてコラ達魔物を連れてきましたよ。
誰がこんな事を思いつきますか?
お爺さまが毎回呆れていたんですよ。」
「はぁ・・・本当、そうだよね。
スミス、自己分析で良いけど、スミスが理想の村を想像するとしてどういうのになると思う?」
エイミーが疲れた顔をさせながら頷く。
「僕の考える理想の村というのは本や学院で見聞きした事を大きくした程度でしょうね。
タケオ様はちょっと違う事を考えているので・・・あれは無理ですよ。」
「そうね・・・理想というのは自分が見聞きした以上の物を想像できないからね。
でもスミスはエルヴィス伯爵やタケオさんの意見を聞いているでしょう?
本や勉強だけではない事を体験しているのよ。
そういった体験をしていると堅実な案を出してくると思うわ。」
「確かに・・・堅実性が高い方が税収入は少なくても長く維持出来ると思います。」
「うん、そうね。
長くあり続けるというのは大切な事ね。」
「エイミー殿下はどうですか?」
「私もスミスの方ね。
村を作りました、翌年廃村しました・・・なーんて出来ないからね。
村の毎年の予想収入を計算して、村を作る費用が回収出来る年月を考えて・・・かなり堅実になるでしょうね。
ある意味、グレース達はその辺を考えないで案を出しそうだからね。
私達よりも自由な発想をすると思うのよ。
でも、そこにスミスを入れちゃうと考え方が堅実な方に偏る可能性が高いと思ってしまって。グレース達の奇抜な・・・自由な発想を阻害する恐れがあるからね。
スミスはグレース達の所には置けないわ。」
エイミーが言う。
「そうですか・・・イーデン、カイル、頑張って。」
スミスが2人に言う。
「頑張りたいが・・・なぁ。」
「堅実でない村というのも・・・」
2人が悩む。
「はぁ・・・エイミーお姉様の言葉はわかりました。
スミスの事は諦めます。
ですが、エイミーお姉様はまだ検討もしていないのですね?」
「していないわけではないけど、まだスミスと打ち合わせていないわ。」
エイミーがグレースに言う。
「なぜですか?」
「私とスミスは堅実な案をまずは作ってみようと思うのよ。
今は私が資料を集めているわ。
集まったらその資料を元にスミスと考えて、まずは堅実な村の構想を作って、そこから奇抜・・・自由な発想をしてみようと思ってね。」
「資料ですか?」
グレースが聞いてくる。
「ええ、今の王都はどんなものが周りから入って来て、出て行くのか。
一番売られている商品や半年毎に売り上げが高い商品は何か・・・とかよ。」
「エ・・・エイミーお姉様・・・それどうやって調べているんですか?」
「うん?王城の経済局や王立学院内にある資料部屋とかよ。
グレース達も資料を探してからの方がわかり易いと思うわよ。」
「なるほど!資料をまず探さないといけないのですね!
イーデン、カイル、明日から資料をまず探すわよ!」
グレースが自分達に足らない物を見つけたようだった。
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